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25 グ・ランヴィル国へ

 かららん


 お馴染みの音と共に、ドアをくぐるわたし達。もちろんバッツ、ドーザー、グウェインも一緒。とうさまは列の先にいる。レイヴネルは当然のようにわたしの隣に陣取っている。


 ハンターとギルド職員が、ギルドに誰が入って来たのか確かめるために振り向き、元に戻ら………なかった。

「おお!ドラゴン討伐に向かった連中だろう?よく戻って来たな!」

「なんか、人数増えてないか?」

「あなた達!よく無事に戻ってきたわね!さあ、ギルドマスターに報告に行くわよ!」

 受付嬢の勢いに押されるように………というか、本当にグイグイと押されながら、2階奥の部屋へ追い立てられた。


 ギルドマスターには表向きの説明をした。当然である。

「…そうか。よく無事に戻って来れたな。正直、誰も帰って来ないんじゃないかと思っていたぞ」

「見てのとおり、全員、無事だ」

「そうか。ところで、1人増えているのはどういうわけだ?」

「こいつはレイヴ(本人から、愛称で呼ぶように言われたの)。………見込みがありそうなので連れて来た。剣士だ」

 よし、うまくごまかした!


 ギルドに来るまでの間に古着屋に寄り、レイヴの服を揃えていた。もちろん、武器屋と防具屋にも寄っている。これで、見た目は立派なハンターだ。

 ギルドマスターはレイヴの体つきを見て、うんうん頷いた。

「若いのに、よく鍛えているようだな。ハンターになるのは初めてとか?スキップ申請を受けて、Dランクから始めるといい」

 ハンター登録時にだけ受けられるスキップ申請は、どんなに才能があっても最高Dランクまでと決まっている。それはそうだ。いくら強くても、魔物や盗賊相手の戦闘経験がなければ戦術の幅も違ってくるし、様々な知識があるベテランハンターには適わないことが多い。己の力に自惚れた馬鹿は、死地に近くなる。


 バッツ達とは、ギルドマスターから報酬を貰った後でわかれた。


 そして結局、レイヴは中庭での試験で、試験官をパワーとスピードで圧倒し、あっという間に勝利した。吹き飛ばされた試験官にとどめを刺そうとしたので、慌てて止めたのだ。とうさまを相手にした時のような興奮が味わえず、かなりガッカリしていた。

「人間は弱いな」

「人それぞれよ。勇者と呼ばれる人は強いらしいわ」

「あぁ。無謀にも、魔王を倒そうと企む者達か。あれはダメだ。己の実力がわかっていない馬鹿だ」


 自分の力を誇示しようと、魔大陸を目指す者がいる。それを人は勇者と呼ぶのだけど、実際は人間至上主義の考えに染まった馬鹿に過ぎない。とレイヴは言った。そもそも、アステラ大陸と魔大陸に分かれて暮らし、均衡を保っているのに、わざわざ強者がいる魔大陸に乗り込んで、その王を倒そうという者が馬鹿以外であるはずがない。力での支配を元に秩序が保たれている魔大陸で、その力の象徴たる魔王を倒せばどうなるか、子供でもわかることである。秩序を失った魔大陸は混沌とし、戦国の時代へ突入する。溢れた魔族達がアステラ大陸へ渡って来て、殺戮を繰り返すだろう。

 するとどうなるか?

 アステラ大陸も魔大陸のような、力に頼った世界に成り果てると言うのだ。もっともである。


「まぁ、考えなしに突っ走る馬鹿は、どこにでもいるからな」

「それ、自分のことを言ってるの?」

「俺は強いからな。ちゃんと考えた上で突っ走るぞ」

 己の力を過信した馬鹿が、ここにも1人いる………。 


 ところで。レイヴの装備は間に合わせの物で、安物で揃えていた。とりあえず形になることが大事だったので。でも、将来的には不安がある。安物は、壊れやすいのだ。自身が武器になるレイヴは気にしていないみたいだけど、それではダメだ。戦いの最中に剣がポロポロ折れていたら、危険だし、しょっちゅう買い換えていたら、逆に大きな出費になってしまう。

 

 武具作成で有名なのは、なんと言ってもドワーフだ。ベンダリス鉱山にドワーフの里がある。魔大陸の方が、レイヴに合った装備があるだろうけど、魔大陸に人間が行けるわけがない。ない物ねだりをしてもしょうがないので、手に入る武器の中でも最高峰の、ドワーフの里産の武器を手に入れることにした。

 防具は、まぁ………レイヴの体自体が頑丈なので、なくてもいいという結論に至った。

 ペンダリス鉱山は、グ・ランヴィル国にある。カー・ヴァイン国からは、海岸沿いに東へ進み、グ・ランヴィル国の王都を通過し西北へ進んだ山にある。

 

「…で、グ・ランヴィルへ行く護衛依頼を探しているんだな?」

「そうよ。少しでも依頼をこなした方が良いし、徒歩で行くより馬車の方が楽でしょ」

「俺が連れて行ってもいいんだぞ」

 レイヴは、レッドドラゴンになって背中に乗せてくれると言っているのだ。それは魅力的な申し出だけれど、急ぐ旅でもないので、それはまたの機会にとっておく。

「それじゃダメよ。旅を楽しめないでしょ」

「国境の町までの護衛依頼があった。とりあえずこれを受けよう」

「はーい」

 なんの問題もなく受注処理をしてもらい、商人との契約確認をして、その日は宿屋で休むことになった。

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