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242 言い間違えた?2

 それからクロヴィスは、わたしの痙攣がおさまるまで優しく抱き締めてくれて、ベッドの上に座れるようになってから魔法で髪を乾かしてくれた。

 なんだか体がだるくて、そして眠い。わたしは体力があるほうだと思っていたんだけど、違ったのかな?

 もう、自分の部屋へ戻ろう。

 そう思ってベッドから降りようとしたけれど、足に力が入らなくて床に座り込んでしまった。あ~れ~?

 クロヴィスを見上げると、くっくと笑っていた。

 笑ってないで、手を貸してほしい。

 じっとクロヴィスを見上げていると、「そんな目で見るな。部屋に行かせてやれなくなる」と言われた。意味がわからない。わたしがどんな目で見たっていうの。


 それよりも。いまは立てないことが問題だ。自力で部屋へ戻れないからね。クロヴィスに運んでもらうしかない。

 わたしは首を傾げて、両手を広げた。

「抱っこして?」

「………!!」

 あれ?可愛くおねだり作戦は間違った?

 クロヴィスは衝撃を受けたような顔をしてわたしを見下ろしている。次第にその顔が緩んでいき、くっくと笑った。

「どこで、そんな技を覚えたんだか………」

 そう言いながら、わたしを抱き上げてくれた。


 そういえば。わたしの部屋に続く扉は、わたしには開けられなかった。そのことをクロヴィスに言うと、「魔力を流せば開く」と言われた。

 わたしがドアノブに触れて魔力を流せば、扉は静かに開いた。

 ふむふむ。扉は開いたけれど、なんで魔力を流さないといけないんだろう?

「俺が魔力の制御もできない状態のときに、おまえに会いに行かないためだ」

「えっ。そんな状態のときがあるの?」

「ないな」

 きっぱり言い切ったクロヴィスに笑ってしまった。

 じゃあ、なんで魔力を流さないと扉が開かないようにしたの。

 クロヴィスはわたしをベッドに寝かせると、おでこにキスをして、自分の部屋へ戻って行った。


 翌朝、目覚めるとわたしはひとりだった。

 うん。それが普通だよね。わかっているけど、いつも誰かが添い寝していた状況では、ひとりで起きるのは新鮮と言えなくもない。

 ベッドから降りて、乱れたバスローブを直す。そう。結局、バスローブで寝ちゃったんだよね。


 コンコンコン


 わたしが起きた気配を感じ取ったのか、応接間に続く扉がノックされた。

「どうぞ」

「失礼いたしま………まぁ、セシル様!バスローブでお休みになったんですか?」

「うん。ベッドに入ったら、眠くなっちゃって」

「そうですか。でも、寝巻はお召しになったほうがいいと思いますよ」

「うん。今度から気を付ける」

 

 ふいに、エマの視線がわたしの顔から下へ下がって行った。なぜ。

 エマは口元を手で押さえ、にっこり微笑んだ。

「ふふふっ。陛下のご機嫌がいい理由がわかりました」

「??」

「初夜を迎えられたんですね。おめでとうございます」

「ええっ!?違うからね!」

「え、でも、それはキスマークですよね?」

 指さされた自分の胸元を見ると、バスローブの隙間からキスマークが覗いて見えた。

「~~~~~~っ!!」


 エマに背を向けて、バスローブの中を確かめた。幸いというべきか、キスマークはバスローブで隠された部分にはなかった。ただし、バスローブから出ている胸元と足にキスマークがあり、恥ずかしくて堪らない。

 いくら寝ているからと言っても、油断し過ぎでしょうわたし!


 ひとり悶えている間に、エマが着替えを手伝ってくれて普段着に着替えた。シャツの襟元は高く、そこにスカーフを巻いている。髪を下ろせば、首のキスマークも、胸元のキスマークも見えない。そしてズボンを履けば、足のキスマークを見えない。完璧だ。

 クロヴィスは不満に思うかもしれないけれど、ね。これでいいの。


 案の定、食堂で会ったクロヴィスは不満そうな顔をした。

 けれど、すぐに気を取り直したらしく、笑顔を向けてくれた。

「今日は城下町のグランヴィルへ連れて行ってやる」

「ありがとう!」 

 そっか。北の地の城下町は、グランヴィルって言うんだね。

 あ~、城から出られるなんて嬉しい。

 でも。クロヴィスは、わたしが逃げないと思っているのかな?城下町だったら城より警備が薄いだろうから、わたしにも皆のところへ帰るチャンスが………って、そうか。首輪を外さないとだめなんだっけ。ちぇっ。


 皆、突然消えたわたしのことを心配してるよね?無事だって知らせる手段はないのかな?

「どうした?」

「皆、わたしがいなくなって心配してるだろうなと思って」

「あぁ。そういえば。昨日、シルヴァが謁見を求めて来たな」

「えっ?」

 衝撃の発言に、頭の中が真っ白になる。

 シルヴァは、わたしが魔王ベアテの城にいるってわかったの?どうやって??ううん、そんなことより、シルヴァがこの城にいるの?会いたい!


「嬉しそうだな?」

 あなたは不機嫌そうですね。

 クロヴィスは片肘をついて顎を支え、わたしをじろりと睨みつけてきた。

「嬉しいよ。だって、皆にわたしが無事だって伝えられるんだから」

「………その首輪をしている以上、この城からは出られないぞ」

「知ってるよ。でも、シルヴァならとうさま達にわたしの状況を正確に伝えてくれるでしょう?皆に心配をかけるのは申し訳ないから、わたしの口から説明して少しでも安心してほしいの」

「どういうことだ。帰りたくないのか?」

 もちろん、帰りたいに決まっている。でも、いまはまだクロヴィスの傍にいて、クロヴィスのことを知りたいと思う。まだわたしに危害を加えようとする人に出会ってないから、そんな呑気なことを考えているのかもしれないけれど。



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