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223 処分

「とうさま疲れているみたいだね。そんなに大変だったの?」

 いつもは無表情なとうさまに疲労の色が見える。それが驚きだった。

「………いや、多少疲れただけだ。少し休ませてもらう」

 そう行って、とうさまはテントに向かって行った。

「シルヴァ、王宮の様子はどうだったの?とうさまがあんなこと言うくらい大変だったの?」

「ええ、まぁ。大変と、言えなくもないですね。アーカート王と王妃、そして黒魔術師はすぐに見つけ処分したのですが、次から次へと騎士やら兵士が向かって来ましてね。ニキができるだけ殺さないように、と言うものですから、手加減するのに苦労いたしました」

「処分て?殺してないの?」

 シルヴァの言い方が引っかかった。


「ニキの提案です。私なら、殺さずとも、死に等しい罰を与えられるのではないと言われましてね。箱に詰めました」

「箱に詰めたの?」

 箱に詰めたくらいじゃ、箱を壊せばすぐに出てくれる気がするけれど、そんな簡単な罰をシルヴァが与えるとは思えない。他になにかあるはず。

「その箱って………」

「セシル様、それ以上聞いてはだめです!」

 ユリアナ令嬢と話していたはずのクロードが、必死な形相で割り込んできた。


「あれは、聞くに耐えられるものじゃありません!あんなおぞましいもの………。シルヴァ様、セシル様に嫌われたくなければ絶対に話してはいけません!」

「そうですか。では、話しません」

 シルヴァが素直にクロードの言うことを聞くなんて………。つまり、わたしに嫌われるようなことをしたってことかな。なんだろう。気になるけど、クロードがここまで必死になるということは、よくないことだよね。うん。聞かないほうがいい気がしてきた。


「ところでセシル様。今夜は一緒に寝てもよろしいでしょうか?」

「えっ!?」

 シルヴァったら、いきなりなにを言ってるの?いつも勝手にやって来て、勝手に一緒に寝ているくせに。そんな、改めて言われたら………うわぁ、なんだか恥ずかしいことのような気がしてきた。顔が熱い。

「あら、セシル様。大丈夫ですか?熱があるのでは?」

 ユリアナ令嬢が心配して声をかけてくれた。

 それがまた、恥ずかしかった。


 そんな様子のわたしを見て、シルヴァは嬉しそうに微笑んだ。

 そしてシルヴァは身をかがめ、わたしの耳元でささやいた。

「今夜、参ります」

 耳に吹きかけられたシルヴァの息が暖かく、さらにはくすぐったくて、なんだか堪らなくなった。

 しゃがみ込んで、耳をごしごしとこする。それでも、耳元にシルヴァの声が残っているような気がしていたたまれなくなった。もうっ、なんなの!?

「とうさまの様子を見て来る!」

 逃げるようにその場を後にした。 


 とうさまのテントに入ると、とうさまはうっすらと目を開けてわたしを見た。わたしが動揺しているのを察してくれて、腕を広げて手招きしてくれた。

 その腕の中にすっぽり収まると、言いようのない安心感が広がる。

 息を吐き出すと、満足そうなため息になった。

「………っ!!」 

 とうさまがわたしの頭を撫でてくれて、昨日は寝不足だったこともあり、わたしは気持ちよく眠りに落ちていった。


 わたしが眠っていたのは3時間くらいだった。まだお昼までは時間がある。

 今後のことを話し合うため、全員が集まった。

「まず、アーカート王と王妃だが、殺していない。だが、回復魔法など効かない状態で、この先の回復も見込めない処罰を与えた。クロードへの転生の術が使えないよう、黒魔術師も同じ状態にある」

 とうさまがそう言った。

 具体的にどんな処罰をしたのか?そう聞く人はひとりもいなかった。聞かない方がいいと、事前にクロードから言われていたのかもしれない。


「今頃、王宮は混乱しているだろう」

「そうでしょうな。上層部が大慌てで対策を考えているでしょう」

「向かって来た者は、一通り相手をしてきました。逃げた者は、放置しています。お偉い連中は、命が惜しかったのでしょう。部下や使用人を盾に、必死に逃げて行きましたよ」

「あぁ………想像がつくよ」

「今頃は、状況把握に務めているだろう。かなり暴れたから、建物の一部が壊れてもいる」

「また来ると言ってきましたから、怯えているでしょうね」

「今度は堂々と正面から行って、民衆の目があるところで次期国王として姿を現すべきではないかね」

 話題の中心は、クロードがどのように人々の前に登場するべきか、どのように王として認めさせるか、という話に移って行った。


 おそらく、フィーがツァラの姿でクロードに同行すれば、人々はクロードを崇めるだろう。でも、それじゃいけないと思うの。ア・ッカネン国に留まるつもりのないフィーの力を借りて崇められても、フィーがいなくなればクロードの統治に疑問を思う者が現れるのを止められない。

 王と王妃を事実上失い、混乱の極みにある王宮。いまの王宮の頂点にいるのは宰相だ。その宰相が、クロードを王だと認めれば、今後の統治がスムーズに進むはずなんだけど。どうかな?




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