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209 砂漠の対決

「セシル、僕はなによりセシルが大事だからね。危ないと思ったら逃げてね!」

 フィーやとうさま達に見送られて、わたし達はマーレ公爵屋敷を出発することになった。

 屋敷の中庭に立ったシルヴァと、シルヴァに抱き上げられているわたし。そして、シルヴァの肩に掴まったレオの三人は、シルヴァ幻影魔法によって姿を変えている。そして、認識阻害の魔法を重ね掛けしている。なぜなら、王都の北の砂漠まで距離があって走っていては間に合わないから。シルヴァに飛んで運んでもらうのだ。

 街中まちなかを移動しなければ、王国軍に見つかる危険も少ないしね。

「では、行きますよ」

 シルヴァの合図と共に、体が遥か上空へと浮かび上がった。足元では、手を振っているフィーやエステルがどんどん小さくなっていく。

 地上の建物が豆粒くらいに小さくなったところで、ようやくシルヴァは王都の北に向かって移動を始めた。


 王都の北に広がる大砂漠では、なにかが蠢いているのが遠目でもわかった。あれがサンドワームなんだろう。その数は、10匹以上いる。

 あれと対決しないといけないと思うと、思わず体が震えた。

「くふふっ。怖いですか?」

「うん。怖い。だって、あの巨大な魔物が蠢いているんだもの」

 だけど、もしも、あの砂漠の王者と対話ができたら?昔のア・ッカネン人のように、笛で従えることができたら?それを考えると楽しみでワクワクする。期待で胸が膨らむ。


「ねえレオ。サンドワームを従えるってどんな感じなの?」

「あぁ、それは圧巻だよ。ア・ッカネン国では王蟲とも呼ばれていてね、その王蟲を従える興奮と言ったら、言葉では言い尽くせないよ」

「そうなの。楽しみだよ」

「サンドワームを従えるには、敬意を持つこと。それを忘れちゃいけないよ。それを、恐れを表に出さないこと。サンドワームは、恐怖を感じると相手を餌を思って食べてしまうからね」

「わかった。注意するね」

「年をとったサンドワームは、もしかしたら人間と生きていた時代を覚えているかもしれないけど。若いサンドワームは笛の存在すら知らないかもしれない。だから、笛を過信しちゃだめだよ」


 なるほど。この数百年、人間はサンドワームを操る笛を使ってこなかったんだもんね。いきなり笛の音を聞かされたって、サンドワームが人間の言うことを聞こうという気になるとは限らない。慎重に行動しないと。

「おや、見えて来ましたよ」

 シルヴァに言われて地上を見ると、10人ほどの騎士の集団がいた。ひとりがコトクの木でできた笛を持っていて、必死に吹いている。その周囲を他の騎士が取り囲み、交代で笛を吹いているようだった。やっぱり、調子はずれの音が聞こえている。


 いきなり彼らの目の前に降りて、笛の音が止まらないようにしたかった。サンドワームが混乱して、暴走しては困るからだ。

「シルヴァ。認識阻害の魔法を解いて、馬の傍へ降りて。あ、幻影魔法もいらないかな」

 騎士達から少し離れた場所に、馬が繋がれていたの。

「かしこまりました」

 シルヴァが地面に降り立つと、馬が驚いていなないた。

 その馬のいななきを聞いて、驚いた騎士達が振り向いた。

「何物だ!?」

 誰何されました。


「あっ………隊長!こいつ、貧民街に現れた小娘ですよ!あの髪の色、間違いありません!」

 あはは。わたしの髪の色は、この国じゃ目立つもんね。

「なにぃっ!?よし、おまえ達捕らえろ!おまえは、笛を吹き続けるんだ」

 隊長と呼ばれた男の指示に従って、6人がわたし達のほうに向かってきた。

 と思ったら、全員、足が止まった。


「「「「「スケルトンだあああ!!!」」」」」


 そう。シルヴァが、レオの幻影魔法も解いていたのだ。


「ぎゃああああああっ!!!」


 なにごとかと振り返った、笛を吹いていた騎士が叫んだ。

 あなたは笛を吹いていないとだめでしょう!!

 騎士の動きを見越していたのか、笛を手にしたレオが続きを吹き始めた。

 ほっと一息をつく一同。


「国宝の笛は我らの手にある。それなのに、なぜおまえ達も笛を持っているのだ!!」

 一早く立ち直った隊長が、剣を構えながら叫んだ。

 他の騎士達も、それぞれが武器を構えている。

 笛を吹いていた騎士は、再び笛を吹くべきか、剣を構えるべきか迷っている。

「笛の作り方は、レオポルト・リシャール騎士団長に教えてもらいました」


「「「「「ええええっ!?あのレオポルト・リシャール騎士団長????」」」」」


「あなた方の使命は、サンドワームに貧民街を襲わせることでしょう?わたし達は、サンドワームを鎮めるためにやってきました。どうにか、話し合いでこの場を治めることはできませんか?」

 どうにか交渉できればいいのだけれど。

「そのスケルトンのことをレオポルト・リシャール騎士団長などとうそぶく連中の言うことを、我らが信じるものか!誇り高い我らの英雄が、そのような魔物に成り果てるわけがない!」 

 う~ん。酷い言いようだね。

 でも、レオは笛を吹いていて弁解もできない。サニアも連れて来ればよかったかな?


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