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205 マーレ公爵屋敷2

 幻影魔法を解くと、フィーがわたしに抱きついてきた。

「さっきのママも可愛かったけど、やっぱりこの姿がいいよ」

「ありがとう。フィーは、どうしてわたしだってわかったの?」

「えっへん!僕は、ツァラだよ。幻影魔法くらい、見破れるんだよ」

 なるほど。フィーには、わたしの本当の姿が見えていたんだね。


 コンコン


 ノックの音が響いて顔をドアに向けると、マーレ公爵が先頭に立ち、クロードやユリアナ令嬢達がぞろぞろと室内に入って来た。もちろん、とうさまもいる。

 とうさまに抱きつこうとしたけれど、フィーにがっしり抱きつかれていて、とうさまのところまで行けそうにない。仕方なく、にっこり微笑みかけるだけにした。それに気づいたとうさまが、そっと頷いた。嬉しくなって手を振ると、苦笑されてしまった。

「セシル、なにか行動する時は、もう少し考えてからにしなさい」

 いま、手を振っていることではなく、貧民街の井戸を掘り起こしたことを言っているのだとわかった。

 あれは、わたしも反省している。もう少し、じわじわと水が出て来るように調整すれば、井戸を王国軍に取られずに済んだかもしれないから。


「セシルどの、後ろの男性を紹介してもらえるかね」

 サニアとレオを紹介するのを忘れていたよ。

「あ、はい。マーレ公爵。こちらがサニー・アローズで、そちらがレオポルト・リシャール。おとぎ話に出て来る眠れる騎士です」

「まさか!実在したのか?しかし、その名前………伝説に出て来るラドバウト王の騎士と同じ名前のようだが、まさか………?」

 さすが、大貴族のマーレ公爵。歴史の勉強もしっかりしているんだね。

 それにしても。王都を滅ぼしたラドバウト王の話は、今世にも伝わっているんだね。

「呼び名は、サニアとレオです。いまは御覧のとおり青年の姿ですけど、本性はスケルトンです。ユリアナ令嬢が驚かれないよう、幻影魔法をかけています」


「………私なら大丈夫です。どうぞ、幻影魔法を解いてください」

 そうユリアナ令嬢が言った。言ったけれど、やはり怖いのか、肩が小さく震えている。

 クロードはそっとユリアナ令嬢の肩を抱き寄せ、反対の手で彼女の手を握った。

 クロードったら、いつの間にそんなことをする仲になったの?もうすっかり、恋人同士になっている。

 ユリアナ令嬢はちらりとクロードに視線をやり、そしてクロードの視線に勇気づけられたのか、すっと背筋を伸ばした。彼女は、そうして凛としているのが本当によく似合う。


 シルヴァに目で合図をすると、シルヴァは指をパチンと鳴らした。本当はそんなことしなくても魔法を解くことはできるけれど、これは一種のパフォーマンスだ。いきなり目の前の青年達が骨だけの姿というスケルトンになってもとうさま達は平気だろうけど、マーレ公爵やユリアナ令嬢は心の準備が必要だと思ったから。

「………!!」

「………っ!!」

 2体のスケルトンが現れると、マーレ公爵とユリアナ令嬢が息を飲む音が聞こえた。

 ただ、スケルトンは腐肉がついたゾンビみたいに臭くはないし、服を着ているので見えている骨の部分も少ない。初めて見たとしても、精神的ダメージは少ないと思う。


「どうもはじめまして。私はレオポルト・リシャール、栄えあるラドバウト王の騎士団長です」

 あれ。レオったら、話し方がいつもと違う。マーレ公爵に気を使ったのかな。

 それにしても。骨しかないのに声が出るってどういう仕組みになってるんだろう?話すためには、声帯が必要なんじゃなかったの?

「俺はレオみたいに愛想がよくないんで、単刀直入に言わせてもらう」

 サニアがそう切り出した。そして、全員の視線を集めたところで話の続きを話し出した。

「俺は、おまえを王とは認めない」

「えっ!」

 驚いて、思わず声が出ていた。

 なんとなく、サニアは協力してくれる気がしていたから残念だ。


 サニアを見ると、ちらりとわたしを見て笑った。その優し気な笑顔にびっくりしていると、サニアは視線をクロードに固定した。

「ここへ来る途中に、おまえを王にしたいという話は聞いた。アーカート王やその王妃のやり方は気に食わないが、俺達があんたらに協力する義理はない。だから、証明してみろ。自分が王になるに相応しい器であると。それができれば、協力してやる」

「わかった。証明すればいいんだな」

 クロードったら、そんな安請け合いしちゃって。どうやって王の器に相応しいと証明するつもり?


 う~ん。王の器と言っても、色々あるよね?良い人柄で国民に慕われるとか、武芸に優れていて、魔物退治を率先して行ってくれるとか………いやいや、魔物退治くらい、騎士団に任せられないとだめだよね。騎士団を信用してないと見做される。やっぱり、王様ならでんっと構えて、うまく人を使える人でないと。

 ア・ッカネン国の王族やその周辺は腐っているけれど、優秀な人材はいる。マーレ公爵だったり、セルドリッジ侯爵だったり。政治のことは、ふたりがいればうまくまとめてくれるだろう。


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