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202 王都へ向けて3

 サニアを見ると、なんと微笑まれた!

 なに!?なにが起きているの?さっきまで態度も悪く、わたし達を警戒していたサニアはどこへいったの?しかも、どことなく照れているように見える。どこに、照れる要素があったの?

「サニアは能力の高い女性が好きだからな。セシルのことも、シルヴァに守られているだけのお嬢様じゃないとわかって気に入ったんだろ?なぁ、サニア」

「やめろよ!そんなんじゃないって!」

 サニアが噛みつかんばかりの勢いで、レオに掴みかかった。

 レオは、はははっと笑って身をひるがえすと、サニアの手から逃れた。

 

 その様子を、シルヴァが冷気を放ちながら見つめていた。言葉の揶揄ではなく、本当に冷気を放っていたの。シルヴァの足元から、冷気が流れてきてあたりの空気を冷やした。オ・フェリス国の冷えた空気とは違う、心の芯から冷えるような冷気に思わずぶるりと身震いすると、シルヴァが慌てて冷気を引っ込めた。

「申し訳ございません!セシル様」

 そう言って、シルヴァは自分のマントを脱いでわたしにかけてくれようとした。

 それを、首を振って断った。北国のオ・フェリス国育ちのわたしだから、冷気には慣れている。それに、寒かったわけじゃない。ただ、シルヴァの冷たい怒りを感じて、本能的に恐怖を感じたんだと思う。シルヴァはわたしには穏やかだけれど、上級悪魔なんだと思い知られた感じがした。

 シルヴァが申し訳なさそうな顔をして俯いた。

 それを見て、マントを断って悪かったな、と思った。


 いまさら、マントを貸してほしいとは言いづらい。それに、寒くはないから、マントは必要ない。

 そうだ。

 わたしはマントより、人のぬくもりを欲していると気づいた。まぁ、シルヴァは人じゃなくて悪魔だけれど。この際、それはどうでもいい。手を繋いでもらえたら、落ち着くかもしれない。

「シルヴァ、手を繋いで?」

 俯いたシルヴァの顔を覗き込むようにして言うと、シルヴァは嬉しそうにくふふっと笑った。

「もちろんです、セシル様」

 嬉しそうに顔をほころばせると、わたしの手をとって指を絡めた。あれ?これ、恋人繋ぎって言うんじゃなかった?なんだか恥ずかしいよ。でも、シルヴァが嬉しそうだからいっか。

 

 そして、嬉しそうなシルヴァとは対照的に、不満そうなサニア。鋭い目つきでシルヴァを睨んでいる。

 あまりに不機嫌で、話をする余裕も感じられない。なにがそんなに気に入らないのか………それとも、なにをそんなに気に入っているの?と言うべきか………迷う。

 まぁ、聞いたところで、碌でもない答えが返ってきそうなのでやめておく。

 このまま話ができないのは困るので、仕方なくサニアに手を差し伸べた。

「サニアも、手を繋いで」

「喜んで!」

 というわけで、左手をシルヴァ、右手をサニアを繋いで歩くことになったわたし。正直に言って、歩きずらい。なにしろ、両手が恋人繋ぎで、両者が視線で牽制し合っているから。


「セシル、俺達のことで知りたいことがあれば聞いてくれ。何でも答えるぞ」

 さっきの、わたしの自己紹介の代わりだとサニアは言った。

「ありがとう。ええと………名前はサニア(サニー・アローズ)、ラドバウト王に仕えた騎士でしょ。それから、王妃レイニエの弟」

「そうだ。アローズ伯爵家の長男だ」

「俺はラドバウト王の騎士団長、リシャール侯爵だ」

 ふたりは、誇らしげに答えた。

 いまも、アローズ家やリシャール家は残っているのかな?


 そういえば。ふたりは、おとぎ話に出て来る宝や呪いのことを知っているのかな?よし、聞いてみよう。

「あの、ア・ッカネン国にはあるおとぎ話があるんですけど。ふたりはおとぎ話に出て来る宝や呪いのことを知りませんか?」

 そう言って、プロフェに聞いたおとぎ話を話して聞かせた。

 おとぎ話の中で、王様が隠した宝は4つ。砂漠を支配する力と、人々を守る力、すべてを手に入れるという宝、そして資格がなければ見つけることはできず、その宝がなければ国が滅ぶというもの。そして、王様を倒した騎士と都を飲み込んだ、王様の呪いがある。

 眠れる騎士が存在した以上、宝や呪いの話も実在する可能性がある。ということは、クロードがア・ッカネン国を統治する上で、宝や呪いは重要になってくる。


「砂漠を支配する力ってのは、たぶんあれだな」

「そうだな、兄弟。サンドワームを操る笛だろう」

 サンドワームを操る笛?前に、シルヴァが言っていた笛のこと?

「人々を守る力ってのも、サンドワームのことじゃないか?昔は、平気で地面の上に姿を現していたサンドワームが、空から見たときには一匹も見当たらなかったしな」

「そうそう。昔は、馬車代わりに使ったもんだ」

 ええっ!サンドワームを馬車代わりに!?あんな狂暴そうな魔物を、どうやって使役するの?って、サンドワームを操る笛だよね、やっぱり。

「3つ目の宝は、王位のことじゃないか?」

「そうかな?」

 なるほど。すべてを手に入れる、ということは、王様になるということかもしれないね。

「4つ目は、どう考えたって水だろう。ア・ッカネン国では水が貴重だし、生き物は水がなければ生きていけない」

 すごい!当たってる気がする。


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