201 王都へ向けて2
「それで、俺達をどうするつもりだ?その話がまだだっただろ?」
「そうですね………」
正直に言うと、深い理由なんてない。王妃がサニアとレオを狙っているから先に味方につけよう!というぐらいにしか考えていなかった。
サニアとレオが王妃の味方についたら、クロードにとって脅威になることは間違いない。こちらにはシルヴァがいるから、おそらく戦っても勝てるけれど、ア・ッカネンの地には戦いの傷跡が大きく残るかもしれない。それはだめ。傷跡は、ア・ッカネンの民に遺恨を残すことになるかもしれない。そうなると、クロードが王となったときに国を治めるのがより大変になる。内乱が起こるかもしれない。
一番いいのは、アーカート王を悪役、つまり国民の敵として認識させ、アーカート王の死後にクロードが正統な王位継承者であることを公にしつつ表舞台に立つことだ。アーカート王との戦いを大々的に行うことじゃない。
もし、アーカート王と戦うことになれば、相手はなりふり構わず向かってくると思う。生き延びるための鍵が、クロードが目の前に現れたんだもの。なんとかしてクロードを捕らえ、その体を乗っ取る儀式を行おうとするはず。
ううん。クロードの存在を認知した段階で、クロードの体を狙ってくるよ。
困ったなぁ。
早くとうさまのところへ戻って、これからどうするか相談したい。
「これはわたしのお願いですけど。おふたりには、クロードを守る盾になっていただきたいと思います」
そうだ。サニアとレオがクロードを守ってくれれば、わたしも安心できる。クロードはいずれア・ッカネン国の王になる。そのときに、元騎士団長と、最高の騎士が傍にいて守ってくれたら心強い。
それにしても。おとぎ話にある呪いってなんだろう?騎士が目覚めると、悪い王様の呪い持目覚めるって、どういうこと?
「それは、いつまでだ?」
「えっ?」
考えに集中していて、サニアの言葉を聞き逃した。
「いつまで、クロードっていう男を守らせる気だ?」
サニアは苛立つこともなく質問をしてきた。
「それは、クロードに会って決めてもらえればいいと思います。ここで期限を決めるのは早すぎるでしょう?」
「そうか?時間の節約になるぞ」
「ええっ!」
時間を節約するために、そんな大事なことをいま決めようと言うの?
そのとき、レオの笑い声が聞こえた。
「サニア、兄弟、セシルのことが気に入ったんだろ?」
「?そうだな、そうかもしれない」
顔にクエスチョンマークを浮かべながら、サニアが答えた。
えっ。いままでのやりとりの中で、どこか気に入られる要素があった?シルヴァに守ってもらっていただけだと思うのだけれど。
「あの………」
「なんだ?」
サニアに声をかけると、いままでのような警戒心むき出しの表情ではなく、優し気な表情を向けられた。
思わず、体がびくりとする。
さっきまでとのギャップがひどい。笑顔が逆に怖い。
「これからどうするか、とうさまやマーレ公爵達に相談してから決めようと思います。ア・ッカネン国の未来に関することだし、わたしが勝手に決められないので」
「そうか。まぁ、時間はあるからな。俺はかまわないぞ」
??どうして、急に物分かりがよくなったんだろう?わからない。
うん。その笑顔も、理由がわからないので怖いですよ、サニアさん。
「ところで、セシルは何歳なんだ?見たところ、15~16歳くらいだと思うけど」
レオがにこやかに話しかけてきた。
そっか。言ってなかったっけ。見た目より幼いから、びっくりされるかな。
「じつは、ヴァンパイアの魔法の影響を受けて成長してしまったんですけれど、見た目より幼いんですよ。こう見えて、11歳なんです」
「「11歳!?」」
あ、サニアとレオが、驚いて顎が外れそうなほど口を開けている。って、あれ、ほんとに骨外れてない?
「もうじき誕生日なので、もう少しで12歳ですよ」
レオが一早くショックから立ち直り、あごの骨を手の甲で叩いてぽんと嵌めた。
「いやぁ、人は見かけによらないとは言うけど、これは………ヴァンパイアのせいで成長したって言った?それって、どういうこと?詳しく教えて」
「わたしもよくわからないんですけど………」
答えようとして、シルヴァに止められた。
「セシル様、詳しい説明など不要です。麗しいお体に関する情報を、レオごときに聞かせるのは勿体ない。さきほどおっしゃった情報で十分です」
「シルヴァったら。そんなに言うほど、大層な情報じゃないでしょ。そもそも、知ったところで真似はできないんだし、教えてもいいんじゃない?」
「サニアがセシル様にただならぬ関心を抱いている以上、少しも教えていい情報などありません」
そう言い切ったシルヴァを、驚きの目で見つめた。
いま、ただならぬ関心って言った?それってどういう意味?




