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20 憧れのドラゴン3

 そして、やって来ました村長の家。人が集まるためか、他の家より大きな造りになっている。居間のテーブルは、10人が座っても余裕がありそうなほどゆったりとしている。今は6人だから、かなりゆとりがある。

 村長は白髪に白い髭を蓄えたおじいさんだった。大抵、村長はこれくらいの年齢の人がなるよね。若い村長は、まだ見たことがない。


「…やめておけ。命は無駄にするな」

 首を横に振りながら、村長は言った。馬鹿にしているわけではなく、心配してくれているようだ。

「依頼を受けたからには、多少のことは覚悟の上だ。それに、このままではドラゴンに家畜をすべて奪われて、この村が困窮するのは目に見えている。村の代表として、それでいいのか」

「いいわけあるか!だが、おまえさんはともかく、若い連中が命を落とすのを黙って見ておれん。それは村の連中も同じじゃ。いくら村のためとはいえ、他人が村のために死にに行くことをよしとする者は、この村にはおらんよ」

 そんな優しいことを言ってくれるなんて、いい村なんだね。


「でも………」

「でももへったくれもない!黙って帰ってくれ」

「…しかたない。行くぞ」

 とうさまに促されて、ぞろぞろと外に出るわたし達。日も暮れているし、他に行くところもないので宿屋へやって来た。とうさまとわたしの部屋は2人部屋で狭いから、4人部屋の方ね。


「…で、どうするよ。ここまで来て、なにもせず帰るって手はないぞ」

 バッツの言葉に、頷くドーザーとグウェイン。

「当然だ。ドラゴンは捕獲する」


「「「え?」」」


 捕獲と聞いて、ぽかんとした表情をする3人。

 それもそうだ。討伐でさえ難しいのに、生きたまま捕獲するのは難易度が高すぎる。それに、万が一、勝負に勝つことができても、言うことを聞かせられるとは限らない。捕らえた後で暴れられ、人間側が殺される可能性だってある。


「あのね、わたしは魔物使いなの。だから、弱らせることができれば、ドラゴンを使役できるかもしれないの」


「「「えええぇぇ~~~!」」」


「マジか!それじゃ、初めからドラゴンを捕まえる気で依頼を受けたのか?」

「うん」

「魔物使いって、本当にいたんだな」

「うん」

「でも、どうして魔物を連れていないの?」

「それは、魔物を連れていたら目立つから。わたし達、あまり注目されるのが好きじゃないんです」


「…それに。魔族と間違われると困りますから」


「「「あああ………」」」


 同情的な声が響く。

 この世界には、人族が暮らすアステア大陸と、魔族が暮らす魔大陸がある。魔族は絵本の中だけの存在ではない。実際に存在する脅威なのだ。ただし生存圏がわかれていて、通常は魔族が人族のテリトリーへやって来ることはない。と言っても、すべての魔族が同じ考えではない。興味からか、因縁からか、商売か、なにか用事があったのか、海を渡ってやってくる魔族はいる。一般に知られていないだけで。

 なぜ知られていないのか。それは、上位魔族は人化の術が使えるので、人間と見分けがつかないから。問題を起こすわけでもなければ、鑑定魔法など使われない。正体がバレなければ、堂々と人間に紛れて暮らすことができる。

 この話は秘密でもなんでもなく、「悪い子は、魔族が攫いに来る」という脅し文句で子供に言うことを聞かせるために、子供が小さい頃から親が話して聞かせる話である。公然の秘密というやつである。

 魔族は魔物を従える、と言われている。力がすべての弱肉強食の世界では、もっともな考え方だ。

 つまり、魔物を従える=魔族と見られるということだ。魔物を従える人族もいるというのに。山岳に住む狩猟民族とか。


 第一、魔物使いと言っても、すべての魔物を使役できるわけじゃない。会話ができて、コミュニケーションがとれるというだけだ。友好的な関係になれなければ、従えることはできない。あとは、力を示すこと。魔物は強い者に惹かれる。相手より強ければ、言うことを聞かせられるの。メリス島に現れたクラーケンの群れみたいにね。


 問題は、情報が不足していることだ。ドラゴンがこの村を襲っていることは聞いているけれど、どの程度の頻度で来るのか、どの方角から来るかもわからない。村人の協力も得られない。となれば………


「…領主の館へ行くか」

「そうだね」


 ハンターが戦う様子を眺めるという領地軍なら、わたし達が囮になると言うなら、協力してくれるだろう。その領地軍を指揮するのは、もちろん領主であるデトラー伯爵。


「何度もドラゴンとの戦いを見てる領地軍なら、ドラゴンが襲って来る場所の検討がつくだろうしな。他に手もないし、いいんじゃないか」

「そうね。今までハンターを利用してきたんだもの。今度は、逆に利用してやりましょうよ」

「おう」


 話がまとまったところで1階に降りて、食事をとった。まぁ、量も味も普通の食事だった。


 一夜あけて、デトラー伯爵がいる領主の館へ向かった。アポはとっていないけれど、しかたない。

 ドアをノックすると、執事が現れた。

「なんの御用でしょうか」 

 言い方が冷たい。

「王都から来たハンターだ。ドラゴン討伐に関することで、デトラー伯爵にお会いしたい。取り次いでもらえるだろうか」

「…少々お待ちください。旦那様に確認して参ります」

 ドアは静かに閉められた。

ううむ。

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