表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
199/282

199 レジスタンス村

「プロフェさん、ゴドさんはどこに?」

「あぁ、息子なら、貧民街の見回りに出掛けております。そうですな、夕方には戻るでしょうか」

「そっか。ゴドさんにも、ふたりを紹介したかったんだけれど、いないなら仕方ないね。あ、プロフェさん立ってください」

 いまだサニー・アローズとレオポルト・リシャールに平伏しているプロフェさんに、声をかけて立ってもらった。

「それにしても。お二方がいる以上、このままこちらにお世話になることはできません。人目につき過ぎます。すぐにでも、ニキ達と合流すべきでしょう」

「さっきみたいに、認識阻害の魔法をかけるの?」

「そうですね。外見を変える魔法を使うのもいいかもしれません」

 外見を変える!?なにそれ、おもしろそう!

「くふふっ。興味がおありですか?魔法で姿形を変えてしまう方法と、幻影を重ねて、見る者に別人に思わせるという方法があります。実際に変えてしまうと元に戻すには技術が必要ですし、今は幻影で十分でしょう。たとえば………瞳や髪の色を変えるだけでも印象は変わりますよ。こんなふうに」


 そう言ってシルヴァがパチンと指を鳴らすと、黒髪に黒い瞳だったシルヴァが、地味な茶色の髪に茶色の瞳に変わった。イケメンなことに変わりはないけれど、前より柔和な雰囲気がある。

「ついでに、服装も変えましょうか」

 シルヴァの服が、執事のような服装からア・ッカネン国の庶民的なシャツとズボンに変わった。

 悪魔にとって衣服は体の一部のようなもの。自在に変えることができるの。便利だよね。

 ただし、髪や目の色、服を変えたくらいではシルヴァの人目を引く容姿は陰らない。相変わらず、憎いくらいのイケメンだ。


「まだ、不満そうですね。それでは、これではどうですか?」

 そう言うと、シルヴァの美しい顔が平凡な顔に変わった。

「えっ。どうやったの?幻影なの?」

「そうですよ。セシル様にも幻影魔法をかけました。御覧ください」

 確実に、ポケットに入るサイズではない。シルヴァはどこからか姿見を取り出すと、わたしの前に静かに置いた。


 姿見を覗き込むと、そこにはア・ッカネン国らしい黒髪黒い瞳に、よく日焼けした小麦色の肌の少女が立っていた。わたしの肌は、どれほど日差しにさらされても日焼けをしたことがない。初めて見る色だった。すごく新鮮!

 わたしの背後にはでこぼこコンビがいて、わたしと同じように鏡を覗き込んでいた。背が高く、がっしりした体つきに精悍な顔つきの30歳くらいの男性と、その男性に比べてやや小柄ながらも、鍛えられた体に驚いた表情が可愛らしい青年だ。ふたりとも、魅力的な体をしている。どうしてそんなことがわかるかと言うと、ふたりとも裸なのだ。

 慌てて両手で目を覆うのと、シルヴァが姿見をしまうのと同時だった。


「セシル様、お見苦しいものをお見せしてもうしわけありません」

 シルヴァの申し訳なさそうな声が聞こえてくる。

「なんでだよ!こんないい男、なかなかいないぞ!」

「いや、兄弟。相手はまだ子供だぞ。わきまえろよ」

 なるほど。声からすると、さっき見た裸の男ふたりは、サニー・アローズとレオポルト・リシャールに違いない。 

 考えてみれば、サニー・アローズとレオポルト・リシャールは裸なんだよね。スケルトンだし。何百年も地中で眠っていたんだから、服なんて土に還っちゃってるよね。


「おまえ達は、むこうを向いていてください」

「なんでだよ~!」

「いいから、後ろ向けって!」

 シルヴァと、ぶつぶつ言うレオポルト・リシャールの声が聞こえてきた。サニー・アローズは素直に後ろを向いてくれたみたいだよ。


「セシル様、もう大丈夫ですよ。私を見てください」

「ほんとうに?」

 恐る恐る目を開けると、そこには平凡な顔立ちながら、見ているとドキドキしてくる長身の男性がいた。両手でわたしの顔を挟み、よそ見をしないようにがっしり掴まえている。

「あのふたりに合う服は持っていらっしゃいますか?」

「うん。ちょっと待ってね」

 マジックバックには、色んな状況に備えて多くの物が詰め込まれている。

 シルヴァがわたしの顔をがっちり掴んでいるので、顔を動かすことができず、手探りで服を探した。おかげで、服を見つけるのに時間がかかってしまった。


 ア・ッカネン国の衣服はゆったりしていて、多少、体のサイズが違っても紐で調節できるようになっている。おかげで、大柄なレオポルト・リシャールも服を着ることができた。

 サニー・アローズとレオポルト・リシャールが服を着たあと、安心してサンダルを手渡した。

 準備ができたところで、プロフェさんにお別れを言って家を出た。

 それにしても、シルヴァの幻影魔法ってどうなってるんだろう?サニー・アローズも、レオポルト・リシャールも、本当はスケルトンなのに、まるで本物の肉体を持った人間のように見える。骸骨が服を着ているのとは違うの。不思議だわ。


「セシル様、お話は終わったんですか?」

「これから、どうされますか?」

 青白い顔をしたレギーとロイが話しかけてきた。

 まだ具合が悪いらしく、俯き加減だ。ふと顔を上げて、わたし達の顔を見たとたん固まった。

「「誰だ!?」」

「あ、ごめんね。わたしだよ、セシル。こっちがシルヴァで、向こうがサニー・アローズとレオポルト・リシャール。シルヴァが幻影魔法をかけてくれたの」

「なるほど………たしかに、お声はセシル様のものですね。服装も、先ほどと同じです」

 そう。わたしは外見を変えただけで、服は着替えていない。なぜなら、町娘の服を他に持っていないから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ