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193 ラドバウト王とおとぎ話

 ラドバウト王がシルヴァを召喚したとき、ラドバウト王は血まみれの王妃レイエニを掻き抱いて泣いていたらしい。玉座にふんぞり返り、大笑いをしていた王兄カリクステは、シルヴァを見て死の恐怖におののき必死に命乞いをした。そこへ飛び込んできたのが、サニー・アローズとレオポルト・リシャール。すぐにことの重大さに気づき、サニー・アローズは自らの命をかけてラドバウト王を止めようとした。つまり、ラドバウト王を殺めることで、ラドバウト王がシルヴァに命令するのを止めようとしたのだ。けれど、それを王に忠実な騎士団長レオポルト・リシャールが止めた。ふたりが揉めているうちに、ラドバウト王は命令を下した。「この王都を灰燼に帰すのだ。カリクステの血は絶やさねばならん。生き残りがいないよう、念入りにやるのだ」。それは、ラドバウト王の死も意味する。「レイニエ、これが、おまえを守れなかった俺の罪滅ぼしだ。たとえこの魂が地獄の業火で焼かれることになろうとも、やり遂げねばならん」。シルヴァは、ラドバウト王の命令を忠実に守った。王都は黒焔に焼かれ、逃げ出す者も容赦なく飲み込み、すべてが灰燼に帰すまで燃え続けた。

 数百、数千の命を飲み込み、かつてのア・ッカネン国の王都は壊滅した。数多の命を生贄に、新たな命が生まれていてもおかしくない。シルヴァはそう締めくくった。


 もし、シルヴァの言う通りなら、新たに生まれた命はどれほど業の深い存在だろうか。戦争でもなく、天災でもなく、たったひとりの死によってもたらされた多くの者の死。その命と吸い取って、どんな化け物が生まれたというのか………想像するだけで恐ろしい。

「どうして、サニー・アローズとレオポルト・リシャールが眠れる騎士と呼ばれているのかな?」

 わたしがそう言うと、プロフェとゴドがおとぎ話を教えてくれた。


 *   *   * 


 むかしむかし、ア・ッカネン王国には悪い王様がいました。王様は自分勝手で、とてもわがままでした。

 ある日、王様は言いました。

「宝物を隠した。見つけた者は、砂漠を支配する大いなる力を手に入れるだろう」

 王様は、王家の宝をどこかに隠してしまったのです。


 またある日、王様は言いました。

「宝物を隠した。見つけた者は、人々を守る大いなる力を手に入れるだろう」

 王様は、また王家の宝をどこかに隠してしまいました。


 そしてある日、王様は言いました。

「私の一番の宝物を隠した。見つけた者は、すべてを手に入れるだろう」

 人々は、宝を求めて各地へ散って行きました。ところが、宝を見つけた者はひとりもおりません。


 王様は最後の宝を隠してしまうと言いました。

「宝は、相応しい者を待っている。資格がない者には、見つけることはできないだろう。しかし、宝を見つけなければ、この国は滅ぶだろう」

 人々は焦りました。国が滅んでは困ります。


 そこで、ある騎士が王様を倒すために立ち上がります。

 騎士は王様に言いました。

「宝のありかを教えてください。ア・ッカネン王国には、宝が必要です。もし教えてくれなければ、私は王様を倒すことになるでしょう」


 王様は答えました。

「宝のありかは教えられない。そしてもしも、おまえに私を倒すことができたら、おまえには呪いをやろう」

 騎士は言います。

「私ひとりが呪いで苦しむくらい、どうってことはない。さあ、我が剣に倒れるがいい」


 そうして王様は、騎士の剣の前に倒れました。しかし、王様の呪いによって、騎士も倒れてしまいました。

 繁栄を極めていた都は、王様の呪いに飲み込まれ滅んでしまいました。

 滅んだ都の下では、騎士が眠っています。

 もし眠れる騎士が起きることがあれば、王様の呪いも目覚めて災いを起こすでしょう。

 決して、眠れる騎士を起こしてはいけません。


 *   *   *


「これが、ア・ッカネン国に伝わるおとぎ話じゃ」

 なるほどね。ひとつ目の宝は、たぶんサンドワームを操る笛でしょ。ふたつ目は、宝剣かな。みっつ目とよっつ目が、なんだかわからないなぁ。

「このおとぎ話で出て来る王様が、王都を灰燼に帰したラドバウト王だと言われている」

「………ということは、呪いっていうのは、シルヴァのことかな?」

「たぶんな。呪いが都を滅ぼしたってのは、言い換えれば、悪魔が都を滅ぼしたってことだからな」


 このおとぎ話は、眠れる騎士が起きると、王様の呪いも目覚めると言っている。つまり、黒焔の悪魔シルヴァが再び現れるということだ。眠れる騎士には、シルヴァを召喚する力があるということかな?それだけの力を、眠れる騎士に授けたということ?

 忠義のために、ラドバウト王を倒そうとしたサニー・アローズとレオポルト・リシャール。ふたりが与えられたのは、死と力。だとすると、不死者となっている可能性がある。

 

 アンデット。生ける屍。

 たとえばゾンビ。腐った死体が歩き回るのは、見ていて気持ちいいものじゃない。

 ほかにはデュラハン。首無しの騎士の姿で、コシュター・バワー(静寂の馬車)に引かれた馬車に乗っている。

 それから、スケルトンかな。人間のように動く骸骨のこと。



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