19 憧れのドラゴン2
「あ、それはですね………」
受付嬢の説明によると、依頼主はジョン・デトラー伯爵。領地内にドラゴンが住み着き、餌を求めて家畜が襲われるようになり困っているとのこと。ドラゴンはまだ若く、群れから離れたばかりの個体に見えるらしい。1匹だけでやって来て、ときおり村を襲っては牛や羊を攫って行くそうだ。
領地軍が出て討伐すればいいのに。そう言うと、今、領地軍の準備を整えているところで、ハンターの戦い方を見て、自分達の参考にさせてもらうつもりらしい。つまり、ハンターを捨て駒にする気なのだ。
それでも、領民のためにハンターを雇う気があるのだから、そう悪い伯爵ではないのかも。
しかし、ドラゴン………使役できないかな。
わたしは魔物使いだけど、まだ使役した魔物はいない。魔物を連れていたら目立ってしまうから。でもドラゴンというのは、強さの象徴みたいで憧れるものがある。背中に乗せてもらって、空を飛ぶのもやってみたい。
問題は、ドラゴンにとうさまとわたしの力が通じるか、ということ。返り討ちに遭うのは勘弁してもらいたい。とうさまはAランク程度の実力があるけれど、ドラゴンってAランクハンターに倒せるものなの?うう~ん。
「…どうした?」
唸っているわたしを心配してか、とうさまが声をかけてきた。
「ドラゴンを使役したいの。できるかな?」
「セシルの好きにすればいい。俺がサポートする」
普段どおりのとうさまに、安心する。大丈夫、という気がしてくる。
「この依頼、受けます!」
「「「待て待て待て!」」」
「どう考えても、返り討ちに遭うだろ」
「もっと大きなパーティでもやられてるんだぞ」
「俺たちも一緒に行く」
「「「え?」」」
最後の言葉にびっくりして振り向くと、護衛依頼で一緒だったバッツ、ドーザー、グウェインががいた。
「ドラゴンは強敵だ。1人でも多くの味方がいた方がいい」
バッツの言葉に、他の2人がうんうんと頷いている。
「…たしかに、囮は多い方がいい」
「「「言い方!!」」」
皆につっこまれるとうさま。
「危ないと思ったら、逃げてくださいね」
心配そうな受付嬢に見送られて、やってきましたデトラー領。領都のハンターギルドにて、やはり心配そうな顔のギルドマスターと向かい合っている。
「おまえ達、自分達のレベルをわかってるか?Cランクと、もう1人はFランクだぞ。命を無駄に捨てるな。もう少し、自分達のレベルに合った依頼を受けろ」
「…すでに、依頼は受けている。あんたにつべこべ言われるいわれはない。さっさと、詳細を説明してくれ」
「「「だから、言い方!!」」」
なんだろ。とうさま、機嫌が悪いのかな。どちらかと言うと、楽しそうなんだけどな。
「はああぁ~」
深い溜息をつき、頭を掻きむしるギルドマスター。
心配して言ってくれているのはわかる。でも、行くと決めたの。だって、ドラゴンだよ?ハンター憧れのドラゴンだよ?一生、出会えない人だって珍しくない。せっかくの仲間にできるかもしれないチャンスを、みすみすドブに捨てるようなまねはできない。
「…いいか。無理だと思ったら、逃げろ。あいつは、もう何人ものハンターを潰している」
そうして説明してくれたところによると、すでに2組のパーティがドラゴン退治に向かい、ボロボロになって帰還している。死者も出ていた。ハンターがドラゴン退治に向かう度に、領地軍が数名やって来て、戦いぶりを観察しては手出しもせずに去って行く。ドラゴンは山からやって来ては、近くの村で家畜を襲い連れ去るらしい。家畜さえ襲われなければ、放置もできたのに。
とりあえず、ドラゴンが現れるという村へ向かった。馬車はないので徒歩だ。
1日半かけて目的のリノ村に着いたのは、日が暮れてからだった。とりあえず、村に1軒だけの宿屋へ行く。中に入ると、暗くどんよりした雰囲気だった。
「あの………」
「あ、はい、いらっしゃい」
「2人部屋2つと、1人部屋1つ空いてますか?」
グウェインは女性だから、バッツ達とは別の部屋がいいよね。
「待って。わたしはバッツ達と一緒で大丈夫。宿代がもったいないもの。4人部屋1つと、2人部屋1つ、空いているかしら?」
「はい。空いてますよ」
というわけで、それぞれ部屋に荷物を置いてから(とうさまとわたしは、部屋に置く荷物はないけれど)1階の食堂へ降りて来た。
まずは情報収集。それと食事。
「あの………皆さん。わたし達は王都から来たハンターです。ドラゴン討伐の依頼を受けて来ました。お話を聞かせてもらえますか?」
ぐるんっ
わたしの言葉に、客達が勢いよく振り向いた。
一瞬、顔を喜びに顔を輝かせたものの、すぐにまた暗い顔になる。なんだって言うの。
「たった4人じゃ、ドラゴンの遊び相手にもなれねえよ」
あれ。わたしが人数に入っていない。
「またドラゴンの餌食になるのがオチだ」
「どうせ冷やかしに来たんだろう。さっさと帰ってくれ」
あらー。ハンターに対する期待値が低い。村民からは、詳しい話が聞けなさそう。
「…食事のあとで、村長に話を聞きに行こう」
アクセス数というのを、初めて知りました。
ブックマークなしで読んでもらえると思っていなかったので、本当にびっくりです。
嬉しいです!!祝、PV1000超えです。
いっぱい書き溜めができたので、ちょこちょこ続投していきます。
よろしくお願いします。