189 ゴドのアジトへ
夕日に照らされた砂漠は、一枚の絵のように美しかった。
だけど、この砂漠にサンドワームが潜んでいるかと思うと、怖い気もする。体長が50メートル以上もあるミミズ型の魔物………虫が苦手な人には恐怖でしかないよね。倒すとしたら、まず動きを止めたい。砂を固めることってできるのかな?砂は土じゃないから、土魔法は効かないよね。水も通してしまうだろうし。そうなると、氷で固めるという方法かな。動きを封じても一瞬のことだと思うから、すぐに大きな口に氷をぶち込んで飲み込まれるのを防ぎ、脳に火の魔法か水の魔法で一撃を与えるのはどうだろう?
「………おい。なにを考えてる?」
振り向くと、ゴドがいた。
「………サンドワームの倒し方」
隠すことでもないので、正直に答える。
「はっはっは!大した奴だぜ、まったく。サンドワームとやり合おうなんて奴はまともじゃねえ。………!?いやいや、褒めてるんだぜ!?」
ゴドがわたしを「まともじゃない」なんて言うものだから、シルヴァが敵意を露わにしたのだ。慌てたゴドが「褒めている」と言い出した。
どうでもいいけれど、このままだとシルヴァがゴドを仕留めてしまいそうなので、それはやめてほしい。
シルヴァの腕に手を置き、目を合わせてから首を左右に振った。
「いまは話を聞くのが先。喧嘩したいなら、そのあとにしてね」
「ええ。話を聞いたあとで、存分に叩きのめすことにしましょう」
笑顔が怖い。
ゴドはシルヴァの言葉を本気と受け取らなかったのか、平然としている。
「とにかく、待たせたな。腹も減ってるだろう。アジトに案内するから、ついてきてくれ。話は歩きながらしよう」
「それなら、遮音の結界を張りましょう」
「ありがとう、シルヴァ」
あたりに人の気配はないけれど、なにもない平地だから声がとおる。誰に聞かれるかわからないからね。
ゴドは、王都でも街道でもなく、王都近くの村を目指しているようだった。すでに薄暗くなりつつ平原の向こうに、うっすらと灯りが見える。
「しっかし、俺が貧民街にいるときに現れるとは、おまえらは運がいいな。俺がいなかったら、とっくに王国軍に捕まってたぞ」
「助けてくれてありがとう。貧民街の人達はどうなったの?」
「それが、手下達があの場にいた連中をうまく言いくるめて、井戸がいきなり噴き出したことにしたんだが、井戸を王国軍が管理することになっちまってな。貧民街の連中は、水代を払って、水を手に入れることになりそうだ」
「貧民街の井戸なのに!?」
「あぁ。しかも、大量の水が豊富にある。井戸周辺の住民を立ち退かせて、畑でもやるかもしれねえな」
畑をやること自体はいい。あれだけの水が湧き出していれば、広い畑を維持できると思う。でも、追い出された住民はどこへ行けばいいの?王都を出て行けということ?
「井戸だけじゃねえ。おまえら、貧民街の連中に清浄魔法をかけて回っただろ?あれのせいで、おまえらの人気はうなぎ上りだが、王国軍に目を付けられたぞ。どうするつもりだ?貧民街の連中のご機嫌とりがしたきゃ、もっと密かにやれよ。目立ちすぎなんだよ」
あらら。不潔な匂いに我慢できなくてやったことが、大問題になるとは思ってもみなかったよ。
「住民は、義賊が現れたって喜んでるぞ。次はなにをやるつもりだ?思い切って、国王を倒すか?」
「そうだね」
「おいおいマジか!俺は冗談で言ったんだぞ!だいたい、こんなこと王国軍に聞かれでもしたら、その場で打ち首もんだぞ」
ゴドが呆れたように、目をぐるりと回した。
いままでわたしはクロードを守ることばかり考えていたけれど、攻めることも考えてもいいのかもしれない。長ければ、3か月でアーカート王は病気で亡くなる。でも、その3か月で、必死に生きている人達がどれほど亡くなるかわからない。日々の暮らしが精一杯の人にとって、3か月は長い。その間に、わたし達にできることがあれば、なんでもしてあげたいと思う。
そう思うのは、傲慢かもしれない。わたしが恵まれているから、そう思うのかもしれない。
「わたしは………自分の手が届く範囲の人は助けたいの」
切実に思う。見て見ぬふりはできないと。
「そうかい。そう思ってくれてありがたいよ。助けたかいがあるってもんだ」
「ゴドは、どうしてわたし達を助けてくれたの?」
「それは、あんたが貧民街の連中を助けてくれたからさ。後先考えない無謀なやり方だったが、連中は希望を見た。それが大事なんだ。奴らに必要なのは、飯でも金でもない、希望なんだからな」
「貧民街の人々は絶望しているということ?」
「あぁ。この国じゃ、貧しい者は奪われる対象でしかない。奴隷に落ちる奴も多い。生きる希望を持てずに死んでいく連中がいかに多いか………」
そういえば、ア・ッカネン国では奴隷制度が生きているんだっけ。犯罪奴隷じゃなく、貧しさから奴隷になるなんてなんてひどい。
書き溜めがなくなったので、更新速度が落ちます。週一回更新になるかな?と思ってます。




