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170 いざ、ア・ッカネン国へ

 フィーの衣類や靴などをすべて揃えたあとは、クレーデル領主館に戻ってファッションショー。そして、やっぱりというかなんというか、フィーの胸の膨らみがどうしても気になった。しかたなく、胸に晒しを巻く。男の子に胸があるのは気になるもんね。

「大丈夫?苦しくない?」

 フィーは自分の胸元を手で押さえながら、うん、と頷いた。

「それより、僕が服を着てるなんて変な感じ。でもこれで、マ………セシルといられるんだから我慢するよ」

 フィーはフンっと鼻を鳴らした。

 いままで羽毛で過ごしていたから、服を着た感じに慣れないんだね。この状態で、荷物を担いで歩くなんてできるのかな?ちゃんと行商人にふりをできるかな?あ、そうか。護衛を雇うくらいの商人だから、歩きじゃなくて荷馬車で移動するよね。

 ということは、森の魔法陣から転移した先で荷馬車や商品なんか、色々と必要な物があるね。いまのうちにとうさまが用意するのかな?わたしのマジックバッグは荷馬車3台分の容量だから、商品は詰め込めるけれど荷馬車は入らない。とうさまのマジックバッグは、どれくらいの容量なんだろう?


 あれから5日後。

 とうさまがハディットと打合せをしながら、商売と旅に必要な荷馬車3台に、荷馬車を曳く馬達、商品となる積み荷を仕入れた。荷馬車はリムハム辺境伯が学術の都クレーデルの大店の商会に言って、なんとか買い取らせてもらった。新品だと盗賊に狙われやすいし、使い古しでは壊れやすい。ちょうど具合のいい荷馬車を所有しているのが大店の商会だったのだけれど、使っている物を売るのは色々と抵抗があったようで商談が難航した。商品の仕入れに卸業者を回っていると、大量に買い取ることから卸業者からは歓迎された。クレーデル名産のワインは、特に多く買った。らしい。 

 荷物はすべてマジックバッグにしまい、ザカリーをリムハム辺境伯に任せ、わたし達は森の奥深くに隠された魔法陣の所までやって来た。馬も一緒だ。

 鳥の巣の中に隠された、魔法陣が描かれた羊皮紙を取り出して地面に置く。その羊皮紙を中心に円陣に並んで立ち、途中ではぐれることのないよう両隣の人と手を繋いだ。そして、羊皮紙と一緒に隠してあった魔石を魔法陣の中心に置いた。

 この人数だと、用意してあった魔石だけじゃ魔力が足りなくて、わたしとシルヴァの魔力を使うことになった。シルヴァが魔力コントロールを行うため、わたしの右隣に立っている。左隣はレイヴがいる。


「では、行きますよ」

「うん。お願い」

 シルヴァが羊皮紙に魔力を流すと、魔法陣が反応して光り輝いた。

 わたしも、シルヴァを通じて魔力を流した。魔力のコントロールはシルヴァがしてくれるから、安心していられる。

 そのとき、魔法陣が激しく輝き、体が浮き上がるような不思議な感覚を味わった。

 次の瞬間、見知らぬ場所に立っていた。

 そこは、打ち捨てられた作業小屋だった。屋根には大きな穴が空き、壁も傾いている。床には埃が積もっていて、最近、誰かが来たらしく足跡が残っていた。

「すぐにここを離れよう。誰か来るかもしれない」

 とうさまがそう言って、最初に小屋を出た。

 外は落葉樹の森だった。色とりどりの葉が地面に降り積もり、木々はもうわずかしか葉を付けていない。

 歩くたびに枯葉を踏む音がする。これは、静かに行動するのは無理だよ。


 そこで、森に狩りに来た風を装って移動することにした。これで、誰かに会っても誤魔化せるといいのだけれど。

 森を抜けるまでは、とうさまが先頭を歩くことになった。次にわたしとシルヴァ、そしてレイヴ。間にフィーとハディットを挟んで、後方にクロード達3人とエステル。狩りをするには大所帯だ。馬もいるので、不自然極まりない。

 森を抜けたところでとうさまが荷物を積んだ荷馬車を出し、それぞれが乗り込んだ。クロード、レギー、ロイが3台の荷馬車の御者を務めることになり、1台目の荷馬車にはとうさまとレイヴ、そしてハディットが乗り、2台目の荷馬車にわたしとシルヴァ、そしてフィー、3台目にエステルが乗ることになった。………少し揉めたけど、レイヴに「お願い」をしたら、渋々、承知してくれた。


「ここは、ヨナス山脈の麓です。もうすぐ行けば小さな村があるので、今日はそこに寄って情報収集をするでしょうね」

 手綱を操りながら、レギーがそう言った。

 まっすぐ王都を目指すこともできるけれど、急ぎ過ぎてもよくないもんね。

 お粗末な柵で囲まれたその村は、マノ村と言った。この辺りまでやって来る商人は少ないらしく、大歓迎された。荷馬車から商品を出して並べると、小さい村ながら大勢の客がやって来て商品を眺めてくれた。ただ、現金収入が少ないのか、買いたくてもお金がないと言う人がいっぱいいて。それなら物々交換でもかまわない、ととうさまが言うと、大勢の村人が自分の家へ向かって駆けて行った。

 そんな騒動の中、手に入れた情報といえば。近年、薬草を求めて来る商人が増えたことくらいだった。

 マノ村はヨナス山脈の麓に位置しているので、村人は山脈の恵で暮らしているそうだ。薬草もそのひとつで、貴重な現金収入の元になっている。

 


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