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17 盗賊団

 9日まで、なにごともなく無事に済んだ。そして今、目の前には盗賊団がいる。人数は8人。錆びついた剣を握っている者もいて、とても強そうには見えない。ただし護衛の人数より勝っているからか、にやけた笑みを浮かべている。

 盗賊団と対峙しているのは、わたし達護衛の5人だけ。御者と商人は馬車の中に隠れている。


「荷物はすべて置いていけ。おまえ達の装備もだ!」

「断る!おまえらを倒して、商隊を守る。セシル、おまえは馬車に隠れていろ」

 バッツは、わたしを足手まといだと考えているに違いない。でも………。

「嫌です。わたしも戦います」

「なっ、死ぬぞ!」

 わたしの見た目から侮られるのは仕方ないけれど、あまり馬鹿にされるのは好きじゃない。

「はっはっは!気の強いガキだな。心を折るのが楽しみだ」

「…行きます!」

 身体強化の魔法をかけ、盗賊団の頭に向かって駆けだした。かしらが反応するより早く、短剣を抜いて両足に切りつける。


 ばきっごきっ


 うん。折れたね。

 膝をついたかしらの顔に、すかさずパンチをお見舞いすると、後ろに体ごと吹っ飛んだ。鼻が潰れ、顔が血まみれになっている。

 

「「「ぎゃああ~~~!!」」」


 盗賊達が叫んでいるけど、気にしない。

「次は誰?」


「「「参りました~!」」」

 次の相手を求めて盗賊達を見回すと、全員が武器を投げ捨てて両手を上げている。もう、歯ごたえがないなぁ。まあ、死ぬより犯罪奴隷の方がいいか。


「お、おま、エルフかドワーフなのか………?」

「違うよ。わたしはただの人間」

 成長の遅いエルフやドワーフなら、わたしと同じ見た目でも大人っていうことがあるからね。勘違いしてもしかたない。とりあえずこれで、侮られることはなくなるかな。


 とうさまがマジックバックからロープを取り出し、次々と盗賊達を縛って行く。そのあいだに、グウェインが盗賊の頭に回復魔法をかけている。王都へ連れて行くためには、本人に歩いてもらわないといけないからね。荷馬車は商品でいっぱいで、盗賊を乗せるスペースなんてない。

 でも、力が弱いのか、なかなか治らない。

「…セシル、手伝ってやれ」

「はい」


 盗賊のかしらのそばへ行くと、彼はびくりと体を震わせた。

「反抗しなければ、なにもしませんよ」

 回復魔法をかけると、かしらの体が光に包まれた。一瞬で血が止まり、あさっての方向を向いていた足が正しい位置に戻った。

「こんなすごい回復魔法は初めて見るわ。だから、手加減なしで攻撃できたのね」

「え?ちゃんと死なないよう手加減しましたよ。死んだら、ギルドに引き渡すときに報奨金が減るじゃないですか」

「え?」

「え?」

「えええぇぇ~~~!」


 結局その後、王都までなにごともなく着いた。そうそう、盗賊なんて出ないよね。盗賊や魔物に遭遇ばかりしていたら、商人も商売にならない。それでは交易が中断するので、正規軍が討伐に出てくることになる。

 盗賊達をギルドで引き渡し、報奨金を受け取った。

 護衛依頼はまだ途中なので、まだ依頼完了確認書にサインは貰わないし、報酬も貰わない。そもそも、商人からの報酬はニルスギルドに預けてあるので、ニルスへ戻らないと受け取れない。


「じゃあ、2日後にここに集合してください。それまでは自由行動で」


 商隊はニルスから積んできた海産物やア・ムリス国の工芸品などを売り、王都の商品を仕入れてニルスに戻ることになる。それなりに時間がかかる。


「…じゃあ、王都の観光でもするか」

「うん!わーい。とうさまとデートだ」

 

 前にカー・ヴァイン国へ来たときは、王都へ寄らずにニルスへ行ったから、この国の王都へは初めて来た。なにか、見るものがあるだろう。


 まずは、ギルドの王都支部へ向かう。


 かららん


 いつもの音と、いつもの視線。

 依頼ボードへ行って、じっと眺める。特に、良い依頼はない。明日1日でできるのは、通常依頼の採取と魔物討伐くらい。

「ないね~」

「…そうだな。行くか」

「待って、採取と討伐依頼を受けよう。それで食材のストックを増やそうよ」


 1か月近くもメリス島にいたので、ずいぶん食材を消費している。これから旅を続けるのに、食材は必要だ。そして買うより狩った方がいい。肉は特に、新鮮な物が手に入る。


 ギルド職員に勧められたのは、F~Eランクのハンター向けの森。馬鹿にしてる。でも、どの森へ行くかはわたし達の自由だ。中型の魔物がいるD~Cランク向けの森に向かった。


 ひゅん


 どひゅ


 ばしっ


 鳥や小動物、ホーンラビットを、水魔法を使って撃ち抜いていく。頭を狙っておけば、一発で倒せるし、毛皮を綺麗な状態で残せる。


 がきぃ


 ざしゅ


 ばんっ


 オークなどの大型の魔物は、剣で切りつけていく。

 わたしは身長が低く、オークは首に剣が届かないので、足を切って膝をついたところをとどめを刺すようにしている。

 とうさまは、オーク程度なら剣を一閃すれば倒せる。

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