表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
169/282

169 フィー、人型になる

 どう考えても、ア・ッカネン国ではクロードとフィーは目立ちすぎる。クロードは顔を隠せばいいとしても、フィーはそうはいかないよね。なんとか、変装する方法はないのかな?別の鳥に偽装することができればいいのだけれど………。認識阻害の魔法でなんとかなるかな?

「ママ、どうしたの?」

「フィーは目立つから、どうしたら一緒に行けるかな?って考えてたの」

「ふ~ん。どうしたら目立たなくなるの?」

 どうしたらって………そうだね。いまの姿が鳥だから目立つんだよね。人の姿ならいいのに。でも、そんなことできないよね。

「フィーが人間だったら、いまより目立たないよ」

 そう言ったのは、もちろん冗談。フィーは鳥なんだから、人化の術が使えるとは思っていない。

「わかった。人間になる!」

「「「「えっ!?」」」」

 フィーはそう宣言すると、床に降りてう~ん!!といきみ始めた。少しするとその体から魔力が溢れ出て、その体を包み込んだ。魔力の渦が大きく膨らみ、パッと弾けた。そこにいたのは、全裸の少年?だった。年の頃は、14~15歳。小さな整った顔に、つり上がった茶色の目をしていて、長い髪は茶色や黒、白が混じっている。その姿は、少年とも少女とも言えない、両方の特徴を備えていた。

 慌ててマジックバッグからマントを出し、フィーの肩にかけた。


「ママ!僕、人間になれたよ!」

 フィーが抱きついてきて、思ったより強い力で抱き締めてくる。

「ねっ、ねっ、すごい?偉い?」

「うん。偉いよフィー」

 フィーの頭を撫でると、嬉しそうに顔を摺り寄せて来た。 

 でも、なんで全裸なんだろう?普段、裸で過ごしてるからかな?でも、それをいうならレイヴやエステルだって、人化の術を使っていないときは裸なんだけどな。

 フィーに話を聞いたところ、服は作れるけど、まず見ないといけないということだった。そして気になった身体的特徴だけれど………怪鳥ツァラは単体生殖をするんだって。伴侶が必要ないの。だから男女両方の性を持った、両性具有の姿になったんだね。てっきり男の子だと思い込んでいたけれど、違ったということだ。

 そして、胸があるなら少女の恰好がいいだろう、ということで、わたしの服を貸すことになった。ちょうど、背丈も同じくらいだしね。

 この背丈も、フィーの場合は自由に変えられるんだって。10歳くらいの子供の姿から、大人の姿まで自由自在らしい。今回は、わたしに合わせて14歳くらいの姿になったんだって。


 わたしの服はフィーの肩幅に合わなくて、ゆったりしたワンピースしか着られなかった。男の子の性もあるから、身長は同じくらいだけれど肩幅はわたしより広くて、手足はわたしより大きかった。そして両方の性を持っているけれど、フィーが意識したのか、体はどちらかというと男性的。やっぱり、男の子の服がよさそう。

 とうさまに借りたシャツをフィーに着せている間も、フィーはニコニコと楽しそうだった。

「ママにこんなに世話を焼いてもらうの初めてだよ。こんなことなら、もっと早く人間になっていればよかった」

「あ、その呼び方だけれど。ママじゃなくてセシルって呼んでくれる?ママって呼ばれると、回りの人に変に思われちゃうから」

「わかったよ。セシル!」

 そう言って、フィーはわたしの首に腕を回して抱きついてきた。


「さて。フィーの問題が解決したことだし、次は、いつア・ッカネン国へ渡るか、だな」

「ハディット、クレーデルでの仕事は済んだのか?」

 クロードが聞くと、ハディットは平伏したまま答えようとした。

「それは………」

「その態度はやめてくれ。ア・ッカネン国へ行けば、ハディットが商団のリーダーということになるんだから」

 そうだよね。敬語はともかく、仲間にこんな腰の低いリーダーはいない。不自然すぎる。直してもらわないと。

「滅相もない!私がリーダーだなんて………!」

「いや、ハディットがリーダーだ。そしてクロード、レギー、ロイ、フィーはハディットの部下ということに。残りが護衛に雇われたハンターだ」

 とうさまがそう言った。

 うん。それが、一番自然な形だよね。


 ただ、ハディットがこの状況に慣れるまで少し時間がかかりそう。

 というわけで、出発するまでの間、ハディットもリムハム辺境伯夫妻の客人としてこのクレーデル領主館で過ごすことになった。

 クロード達3人は商人として学ばないといけないこともあるから、ハディットのことを任せた。

 とうさまも、ハディットと打合せがしたいと言ったので、館に残ることになった。

 残りのメンバーは、わたしと一緒にフィーの服を買いに出掛けることになった。

 フィーは平気な顔をしていたけれど、シャツ1枚で出掛けるわけに行かないので、館の使用人からズボンと靴を借りた。大きいけれど、ないよりマシだ。

 フィーはシルヴァ達のように衣類を魔法で作れないから、頭のてっぺんから足の先まで、全身揃える必要がある。しかも見習い商人という設定だから、綺麗な服ではなく、古着屋で揃えることにした。せっかく素材がいいのに着飾らせることができなくて残念。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ