166 一緒に寝てみる?2
思えば、馬に相乗りしてるときに寝てしまうのはべつとして、シルヴァと一緒に寝るのは初めてだね。緊張するよ。
「セシル様、お体の力を抜いてリラックスしてください。それでは眠れませんよ」
そう言われても………ドキドキするんだもん。
どうして、こんなにドキドキするんだろう?普段は、シルヴァと一緒にいると安心するのに。どうして、心臓がうるさいんだろう?
シルヴァも、ドキドキしてるのかな?
そっと手を伸ばしてシルヴァの胸に触れると、シルヴァは嬉しそうに顔をほころばせた。
わたしの手の下で、シルヴァの心臓がドキドキいっているのを感じた。なぜだか、嬉しかった。
思い切って耳をつけてみると、少し早いその鼓動が、自分の鼓動と重なって心地よかった。次第にわたしの鼓動は落ち着いてきたけれど、シルヴァの鼓動は早いままだった。
シルヴァからは、草原の匂いがする。外にいるみたい。
そう思うと、気持ちが落ち着いてきた。
シルヴァは、自分で言ったとおりじっとしてなにもしてこなかった。それで少しづつ安心して、少しづつ瞼が重くなってきた。
そのとき、部屋の扉が静かに開いて誰かが入って来た。
「ちっ。なんでシルヴァがいるんだ?しかも、どうしてそんな恰好で寝てるんだ?」
レイヴの声だった。
確かに、シルヴァの恰好ははしたないよね。
レイヴはベッドをぐるりと回ると、ベッドの反対側から入って来た。そして横になると、わたしの腰に腕を回して、自分のほうにぐいっと引き寄せた。
「そんなことをすると、セシル様が起きてしまいますよ」
もう、起きてるけどね。
「おまえなんかにくっついてるよりマシだ」
レイヴはわたしを抱き締めると、首筋にキスをした。
いつもこんなことしてたの!?
「なにするの!?」
思わず叫んでいた。
「えっ、セシル起きてたのか?」
驚いたレイヴがわたしから離れた。
「もう、ふたりとも出て行って!早く!!」
そう言うと、シルヴァとレイヴはお互いに睨みつけた。わたしのベッドから追い出されることになったことを、お互いに相手のせいだと思っているのだ。
「出て行って!」
強く言うと、シルヴァとレイヴは渋々という感じで部屋から出て行った。
せっかく眠れそうだったのに、また目が冴えちゃった。
レイヴのせいで、まだ心臓がドキドキ言っているよ。
わたしの心臓は、どうしてこんなにドキドキするんだろう?うるさいくらいだよ。
悶々としながらも、いつの間にか眠っていて、気づけば朝になっていた。
今朝は、シルヴァもレイヴもいない。ただ、ベッド脇のテーブルには、洗面器とタオルが用意されていた。
着替えて食堂へ行くと、すでにリムハム辺境伯夫妻や他の皆は食事を済ませたあとで、寂しい食卓だった。昨日なかなか寝付けなかったから、起きるのが遅くなっちゃったんだね。
「エステル、とうさまはどこに行ったの?」
「明るい時間にもう一度、魔法陣を確認するとおっしゃって、シルヴァ様と出掛けて行きました」
あぁ、それで今朝はシルヴァがいなかったんだ。
「レイヴはどうしてるの?」
「レイヴ様は、ガイム様とネス様を相手に訓練をなさっています」
「えっ、なんで??」
「ふふっ。昨夜、レイヴ様をお叱りになったのでしょう?それで、少し落ち込んでいるようですよ」
それで、なんで訓練なの?
「セシル様はなにをされますか?今日もハンターギルドへ行かれますか?」
「うん。エステルも来てくれる?」
「もちろんです!」
「僕も行く!」
ご飯に夢中になっていたはずのフィーが、元気よく言った。
というわけで、エステルとフィーを連れてハンターギルドへやって来た。
かららん
「こんにちは」
まっすぐ受付に行き、受付嬢に声をかけた。
「あら、今日はあのイケメン達を連れていないのね」
「え、シルヴァ達のこと?」
「そう。どっちがあなたの彼氏?」
「ええっ!」
「もしかして、両方あなたの彼氏なの?いいわね~」
なんでそうなるの!?シルヴァとレイヴが彼氏だなんて………そんなわけ………あるの?もしかして、周りの人から見たら、わたし達が付き合っているように見えるの?
「と、とにかく。前に聞いた、傷ついた人がいたら助けてほしいっていう話だけど、あれから進展はありました?」
「いえ、ないわ。不思議よね。目撃情報もないのよ」
ということは、わたし達がザカリーを保護した姿も見られていないってことだね。よかった。
「もう、死体が獣に食べられたんじゃないかって考えてるところよ」
そっか。ハンターギルドにそう思ってもらえたら、ア・ッカネン国の諜報部員がザカリーの行方を探っても跡を追いにくいよね?
「で、教えてくれる?どっちがあなたの彼氏なの?」
受付嬢は、受付から身を乗り出してきた。
「またその話!?どうしてシルヴァ達がわたしの彼氏だって思うの?」
「そりゃあ、見ていればわかるわよ。あれは、恋をしている目だもの」
恋をしている目って、どんな目だろう?わたしにもわかるかな?あ、わからないから、告白されるまでシルヴァの気持ちに気づかなかったんだっけ。




