165 一緒に寝てみる?
エステルったら、自分だって恋をしたことないのにわたしに説教をしていたの?もう!!
「私は恋をしたことはありませんが、色々と見て来たので知ってはいますよ。伊達に長生きはしていないんです」
そう言って、エステルは偉そうに胸を反らした。形のいい、小ぶりな胸が見える。
わたしは………最近、胸が成長して、エステルと同じくらいのサイズになっていた。あまり大きいと動くときに邪魔になるから、これくらいがちょうどいいよ。
「さて。そろそろお風呂からあがりましょう。のぼせてしまいますよ」
「うん」
エステルとお風呂を楽しんだあとは、食堂で食事をして、すぐに部屋に戻った。
なんだか落ち着かない。エステルとあんな話をしたせいかもしれない。
「そういえば。セシル様はどんな男性がタイプですか?」
まだコイバナ終わってなかったぁーーーっ!
ベッドに腰かけたわたしの隣に来て、エステルはワクワクしながらわたしの顔を覗き込んできた。
「やっぱり、ニキ様みたいに物静かで、なんでもできる男性がいいですか?」
う~ん。どうだろう?とうさまは好きだけど、とうさまみたいな人と結婚したいとは思わないなぁ。
というより、まだ、結婚も恋愛も考えられない。見た目は14歳だけど、中身は11歳なんだからね!
下を向いて考えていたら、エステルに顔を掴まれてぐいっと上げられた。
「いいですか、セシル様。人間の一生なんてあっという間なんですからね!ちゃんと恋をして結婚して、お子様を産んでいただかないと、残されるわたしが寂しいじゃないですかぁっ!」
ん?エステルの様子がおかしい。それに、顔が赤い。これってもしかして………酔ってる?
「聞いてくださいよセシルさまぁ~っ!」
「ぎゃああぁぁっ!」
そう叫んで抱きついてきたエステルに、その勢いのままベッドに押し倒された。
「スー、スー………」
そして聞こえる寝息………。
これは、完全に酔っぱらってるね。いつお酒を飲んだんだろう?
コンコンコン
「はぁい」
こんな時間に誰だろう?
「失礼いたし………!?」
シルヴァだった。
わたしがエステルに押しつぶされている様子を見て、ツカツカと近くまでやって来ると、顔をしかめてわたし達を見た。そしてエステルをひょいと抱き上げると、彼女のベッドに寝かせた。
怒っているようだったのに、エステルに乱暴にしないで優しく寝かせてくれたところに、シルヴァの優しさを感じた。
「ありがとうシルヴァ」
ベッドに起き上がりながら、お礼を言った。
「これくらい、なんでもないことにございます」
シルヴァは、いつもわたしのためを考えてくれている。いまも、エステルを起こさないようにしてくれたし。悪魔なのに優しい。
わたしは、シルヴァの想いになにか返せているのかな?してもらうばっかりじゃ、悪いよね。でも、なにをしたらいいのかわからない。
「セシル様のお声が聞こえたのでやって参りましたが、まったくエステルは………教育が足りないようですね。明日から、厳しく致しましょう」
「えっ!そんなことしなくていいよ」
「そうですか?」
シルヴァは怪訝な表情をしている。わたしが本心から言っているのか、確かめようとしているのかもしれない。
「エステルはお酒を飲んじゃったみたいなの。普段なら、あんなことしないよ。そうでしょ?」
「そうですか」
シルヴァの態度は素っ気ない。なにか、ほかのものに気をとられているようだ。
「シルヴァ、なにを考えているの?」
「………私がセシル様を押し倒したかったです」
「………っ!!!!」
聞いて失敗した。こんなことなら、聞かなきゃよかったよ!
急に顔が熱くなり、恥ずかしくて堪らなくなった。
シルヴァはわたしの反応が気に入ったのか、嬉しそうに笑った。そして、ゆっくりと近づいて来る。
「セシル様をベッドの上に押し倒し、口づけをしたいですね。服は不要ですから剥ぎ取って………そのあとは………」
「も、もうやめて~っ!!」
そう叫んだときには、シルヴァは目の前に来ていた。
「可愛らしいセシル様………」
そう言いながら、わたしの手を取り、手の甲に口づけをするシルヴァ。
「くふふっ。恥ずかしながらも私を拒絶なさらないところを見ると、私を気に入っていただけているのでしょうか?」
そういえば。シルヴァのすることは恥ずかしくて堪らないけれど、だからって嫌では………ない、のかな?悪寒がするとか、吐き気がするとかもないし、触られて気持ち悪いわけでもない。むしろ………心地いい………?
まさか!だって、相手は悪魔だよ?そんなはずないよ!
「いかがなさいました?」
「………!」
気づけば、シルヴァが間近でわたしの顔を覗き込んでいた。
やっぱり恥ずかしいけれど、嫌では………ない。
これは、確かめてみたほうがいいよね。
「あのね。今夜、一緒に寝る?」
「………っ!!」
シルヴァの表情を見たとたん、体が勝手にびくんっと跳ねた。
「ごめん!いまのやっぱり………ぎゃあ!」
「嬉しゅうございます!」
さっきの言葉を訂正しようとした瞬間、シルヴァに抱き締められた。
「セシル様との初夜ですね!」
「言い方!!」
「わかっています。セシル様にはなにもいたしません」
言いながらわたしを抱き上げ、自分は靴を脱いでベッドに上がってきたシルヴァ。いつの間にか、寝巻姿になっている。黒いシルクの寝巻で、胸元がはだけていて目のやり場に困る。
「今宵は一睡もいたしません。セシル様のすべてを記憶に刻みつけます。なにせ、初夜ですから!」
「だから、言い方!」




