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16 護衛依頼

「俺が言うまでもなかったな!依頼を受け付けてもらえないんじゃ、なぁ?」

「その依頼票には、Fランクはダメとは書いていませんよね?それに、年齢制限もないし。依頼を受け付けるのがあなたの仕事じゃないんですか」

「…わかりました。そこまで言うなら、依頼主に会ってみてください。どうせ断られますよ」

 依頼者のところへ行くと、気の良さそうなおじさんがいた。お腹がでっぷりと出ている、いかにも商人という感じ。


「初めまして、Fランクハンターのセシルです」

「Cランクのニキだ」

「おや、これはずいぶんとお若い方が来ましたな」

 わたしを見て驚いているけれど、馬鹿にした様子はない。これなら大丈夫かな。

「護衛依頼を受けさせてください」

「護衛依頼ですか?王都までの?確率は低くても、盗賊が出る可能性がありますよ。あなたに戦えますか?」

 まあ、そう思うのも無理はないよね。わたしは、まだ10歳だもの。

「わたしは魔法が使えます。旅のあいだも、戦闘も、お役に立てます」


 商人のおじさんは、わたしの目をじっと見つめて、うん、と頷いた。

「わかりました。あなたは正直な人のようだ。信じることにします。これでも私は商人です。信用できる相手かどうか、人を見る目はあると思っていますよ」

「ありがとうございます!」


 商隊は、馬車5台、御者5人、商人2人の小規模商隊だった。そして集合場所には、護衛として男女3人のパーティがいた。剣士、弓士、魔術師だ。

「俺はバッツ」

「ドーザーだ」

「グウェインよ」

「…俺はニキだ」

「セシルです」

 ぺこりと頭を下げると、グウェインが「可愛いわぁ」と言って頭を撫でて来た。

「俺たちの方が人数が多い。俺が指揮をとってもいいか?」

 経験から言うと、とうさまが1番上だけれど。

「…それでかまわない」

 そんなことにこだわらないのが、とうさまだよね。


 相談の上、1番馬車にバッツ達3人、5番馬車にとうさま、わたしは3番馬車に商人達と一緒に乗ることになった。どう考えても、わたしは戦力として見られていない。自分が周りからどう見えるかわかっているので、特に文句を言うことなく受け入れた。

 今のわたしは、旅装束を着ている。戦闘するのに、サンダルはないよね。あれは、ア・ムリス国だけの恰好だよ。革の部分鎧に、長袖のシャツ、膝上のスカート、ショートブーツ。腰には刃渡り40㎝の短剣。ごく一般的な旅人の恰好だよ。


 ニルスから王都までは、片道10日の旅程。それが往復の契約だ。整備された道は穏やかで、魔物も定期的に討伐されているので平和だった。

 わたしは御者席に座り、外をぼんやりと眺めていた。

「お嬢ちゃんもハンターなんだよね?どうしてハンターになったんだい?」

 御者に話しかけられて、笑いかけた。

「ハンターになったのは10歳になってからですけど、それまで戦闘訓練を十分してきたから、ハンターになるのは自然なことで、他の仕事は考えたこともありませんでした」

「へえ。そりゃすごい。お嬢ちゃんは剣士かい?それとも魔術師?」

「あ、魔物使いです」

「え?」


 魔法があたりまえのアステラ大陸でも、魔物使いは珍しい。というか、あまり知られていないだけで、魔物使いの力を持っている人はいる。動物の調教師とか。動物の声が聞けて、コミュニケーションがとれるのは大きい。動物の声が聞ければ、調子悪いところを直接聞けるから、適切な世話ができるんだよね。

 御者さんが驚いたのは、たぶん、わたしがお供を誰も連れていないからだと思う。わたしの見た目からは、とても強そうには見えないから、どうして戦力になる魔物を連れていないか疑問に思ったんじゃないかな。

「わたしはまだ初心者だから、お供は連れていないんですよ」

 本当は、世話が面倒だから連れていないんだけどね。魔物がいると目立つし。

「あ、ああ、そうか。ハンターになったばかりだったね」

「はい」


 日が暮れたので、商隊は野営をすることになった。馬車を街道の端に寄せ、それぞれが手際よく野営準備を進めていく。とうさまがテントを出して設営し、近くの森から拾って来た薪でかまどを作る。そして、それまで自分達の作業に徹していた人達も、とうさまが食材としてクラーケンの足を出したときには驚いて寄って来た。

「そいつはクラーケンか?すげえな」

「あなたが倒したんですか?」

 うん。ハンターがクラーケン(高級素材)を買わないよね。

「ニキさん、強いんですね」

 グウェインが憧れの目をとうさまに向けている。


 とうさまはモテる。とても。不愛想でも、顔はいいし、体もほどよく引き締まって逞しい。背は高く、お腹の奥に響く低音ボイス。そして強く、基本的にはジェントルマンで、女性を優先してくれる。コブつきでも、お付き合いしたいという女性がいるの。

 わたしがスープを作っているあいだに、とうさまは手際よくクラーケンの炒め物を作り、商隊の皆にふるい始めた。

 マジックバックがなければ、大量の食材は運べない。普通、旅のあいだは、携帯食で済ませるものなの。堅パンに、干し肉に、塩スープ。それが暖かい食事に代わり、さらに美味しいとなれば、大歓迎される。

 バッツ達も寄って来て、一緒に食事をした。

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