157 クレーデル領主館2
「しかし、どうしてこんなに早く戻って来たのだね?冬の終わりまで王都で過ごすものだと思っていたが」
「そのつもりでいたのですが………」
そうして、とうさまは吸血事件の話をして聞かせた。
王都オーシルドで起きた女性ばかりが襲われた事件のこと、本物のヴァンパイアが犯人だったこと、ヴァンピーノにも会ったこと、ルグラン商会の娘ミシェルがシルヴァをヴァンパイアと決めつけ騒ぎを起こしたこと等々。マジッグバッグの作り方を教わったことは黙っていた。あれは、ヴァンパイア王国の秘匿技術だって言ってたもんね。
「なるほど。ヴァンパイアとは珍しい者にあったな。それで騒ぎから逃れて、クレーデルへ戻って来たというわけか。ルグラン商会と言えば、王都では指折りの商家だろうに。娘の育て方を間違うとは、らしくないな」
そう言って、リムハム辺境伯は呆れ顔だった。
「それで。これからどうするつもりだね」
うん。それが問題だよね。
「………春まで、俺達もこちらにお世話になることは可能だろうか?」
「かまわんが、なぜだね?」
「クロード達の訓練が終わっていませんし、御覧の通り、セシルも以前とは違います。しばらく訓練をしたほうがいいでしょう」
「わかった。我が家に滞在している間は、しっかりと観察させてもらうことにする。かまわんね?」
「はい」
というわけで、しばらくクレーデル領主館に滞在することが決まった。
そっか。わたしも訓練するのか。久しぶりだなぁ。どんなことをするんだろう?楽しみだよ。
でも、その前に服を揃えないとね。急に成長したから、クレーデルの気候に合う服がないんだよ。
なんだか、最近、買い物ばっかりだなぁ。お小遣いがどんどんなくなっていく。これは、ハンターとして依頼をこなして稼がないと!!
そういうわけで、朝食のあとは、まずはお買い物。
フィーは飛んで行ったっきり戻って来ないので、シルヴァとレイヴ、そしてエステルを連れてクレーデルの街へやって来た。
戦闘向きの服、普段着、パジャマの他、マントや新しい靴も1足買った。いや~、これだけ買えば大満足だよ。買いすぎなくらい。
買った荷物は、ちゃんとマジックバッグにしまっている。本当に便利だよ、マジッグバッグは。
買い物をしたあとは、お金を稼ぐためハンターギルドへやって来た。
かららん
視線が一斉に集中し、元に戻らなかった。はははっ。しかたないよね。
「執事にメイドまで連れて、どこのお嬢様だよ!」
すかさず、つっこみが入る。
まったく、おっしゃる通り。わたしもそう思ったけれど、買い物へ行くというわたしに、シルヴァは執事服姿で、エステルはメイド服姿でついて来たの。ちなみに。レイヴはハンター装備だよ。
視線を無視して、依頼ボードへ向かう。討伐依頼の魔物があることを確認し、一旦、外で出て納品所へ向かった。
マジックバッグには、わたしが成長してから体に慣れるための訓練で倒した魔物達が大量に入っているの。
「こんにちは。討伐した魔物を持って来ました!」
声をかけると、がたいのいい男達が作業の手を止めて振り向いた。獣人も混じっている。
「お嬢さん、ここはでかい魔物か、大量に獲物を狩ったときに持ち込む場所だ。見たところ、なにも獲物を持っていないようだが………少量の獲物や討伐証明の部位なら、中に持ち込んでくれ」
「あ、じゃあ、ここで合ってます。いま出しますね」
どどぉぉおおおんっ!!
大量のオーク、オーガ、鳥、鹿、ホーンラビットと言った魔物と動物が山となって現れた。あまりに大量で、山が雪崩を起こしそうだ。
「「「「なんじゃこりゃ~!!!!」」」」
「こんな大量の獲物、どうやって仕留めたんだ?というか、どう処理すりゃいいんだ。徹夜しても追いつかないぞ」
「こんな大量に市場に出したら、値崩れするんじゃないか?」
「保存施設だって限度があるぞ」
ちょっとやり過ぎてしまった。
まだマジックバッグの扱いに慣れていなくて、一気に獲物が出てしまったの。
「ごめんなさい。ちょっとしまいますね。じつは、この倍の量があるんですけど、どれくらいだったら買い取ってもらえますか?」
はああぁぁぁあああ!?
「おい、ちょっと待て。そのマジックバッグ………マジックバッグだよな?………それの容量はどうなって………いや、すまん。これは聞いちゃいけないことだ」
「さっきはすまなかった。ここに出ている分は、とりあえず買い取らせてもらう。領主様のところに客がいるから、大量に買い取ってもらえるだろう」
「あ、ガイム達のこと?」
「えっ、連中を知ってるのか?………そうか!あんた、連中の関係者か!?」
「はい」
「だったら、直接、領主様に頼んで買い取ってもらったほうが金になるぞ」
そっか。そういう手があったのか。
「でも、わたしはハンターですから。ハンターギルドの皆さんに貢献するためにも、納品所に納めたいと思います」
「そうか。いい心がけだな。じゃあ、残りは4日に分けて出してくれるか?」
「はい。わかりました。じゃあ、また明日、来ますね」
「あぁ。とりあえず、これが今日の分の料金だ。正確な料金との差額は、明日払うから待ってくれ。これじゃあ、計算に時間がかかるんでな」
そう言って、親方らしき人が獲物の山を指さした。上の獲物からどんどん処理していかないと腐ってしまうし、下にどんな獲物が隠れているかわからない。これから職人達は必死で頑張ることになるんだね。




