152 新章 ハンプス国王陛下に報告
目の前にはハンプス国王陛下、そしてハンス第一王子とカロルス第二王子がいる。
こちら側は、とうさまにわたし、シルヴァの3人だ。
本来なら、宰相やら他の職員やら公爵なんかの貴族がいてもおかしくないのだけれど、わたしの存在をできるだけ広めないようにするために、この人員なのだ。
「………セシルよ、見違えたぞ。以前も可愛らしかったが、美しくなったな」
「おっしゃるとおりです、父上!」
ハンプス国王陛下の言葉に、カロルス第二王子が激しく同意している。
さすがにハンス第一王子は大人しくしているけれど、わたしを見る目が驚きに見開かれている。
「これほどの急成長を遂げたとなると、さぞかし痛かったことだろう。もう大丈夫なのか?」
心配してくれるあたり、さすが大人だ。
「大丈夫です、ハンス王子殿下。ご心配いたがきありがとうございます」
にっこり微笑むと、ハンス第一王子ではなくカロルス第二王子が頬を赤く染めた。
カロルス第二王子がわたしを気に入っていることは知っている。どうにか、穏便に諦めてもらえないかと考えているのだけれど、この反応を見ると難しいと思う。
「それでは、シャルル・ギュスターヴとの出会いからお話しますね。初めて会ったのは…… …」
わたしが呼ばれたのは、ルーのことを話すためだ。役目を果たして、とっとと帰ろう。
傷ついたルーを路地裏で見つけたこと、ロランとサシャと合流したあと、3人を家へ連れて行ったこと、普段の生活の様子………そして、マジックバッグ作りを教えてもらったことを話した。
「マジックバッグの作り方を教わっただと!?それは、わしらにも教えてもらえ………いや、いい。魔道具の作成技術は、その国の国家技術も同じ。たやすく教えられるものではないだろう」
「しかし陛下、セシルが作ったマジックバッグを国で買い取ることは問題ないのでは?その有用性は………云々」
マジックバッグがあれば、商人は荷馬車ではなく身ひとつで商品を運ぶことができるし、軍部でも利用価値は高い。兵糧や医療品をマジックバッグに入れて運ぶことができれば、後方支援をする人員を減らせるし、進行速度も上げられる。とても価値が高いのだ。
結局、わたしがマジックバッグを作れることは秘密にすることになった。
マジックバッグの作成技術は、ヴァンパイア王国でも秘匿技術だと言っていた。それをオ・フェリス国で活用することは、ヴァンパイア王国に喧嘩を売ることになりかねないからだ。
人間の国はどこも、魔大陸の国と戦争をするだけの力はない。圧倒的に魔大陸の方が戦力が高く、危険なのだ。
今回の吸血事件では被害者が出たものの、幸運なことに死者の報告はなく、ダーヴィド達は無事にヴァンパイア王国へ帰って行った。もしダーヴィド達に死者が出ていれば、魔王の息子を死なせた責任を追及されてもおかしくなかった。けれど無事にヴァンパイア王国に帰せたということは、逆にヴァンパイア王国に恩を売ることに繋がる。
この先のことを考えれば、ヴァンパイア王国に恩を売れたことは大きな功績になるのだ。
だって、考えてもみて。ヴァンパイア王国では、魔王の息子がタンク殺しをしたとして追放されているんだよ。それが、事件の首謀者は別にいたとわかったし、事件の原因が病気ということもわかった。これから研究が進めば、また同じような病気のヴァンパイアが現れても治療ができるし、事件を早期解決することができる。それは大きなことだよね。
一通り、ルー達のことを話し終えると、時間はお昼になっていた。
「そうだ。昼食を一緒に食べて行くといい」
カロルス第二王子が満面の笑みで提案してくれたけれど、下心が大いに透けて見えるので辞退させていただいた。だって、この機会に婚約を………なんて言われたらたまらないもの。
わたしは成長して14歳くらいになった。15歳のカロルス第二王子と見た目が近くなり、地位から言っても婚約者としてふさわしくなったわけだ。わたしは絶対に嫌だけど!
カロルス第二王子は頼りないし、そもそも、結婚して城に縛り付けられるなんてまっぴらだよ。
わたしだって、いつかは結婚したいと思うけれど、それはいまじゃないし、束縛されるような関係は絶対に嫌。わたしは自由でいたいの。お互いを尊重して、尊敬しあえるような関係がいい。
まぁ、夢みたいな話だけれどね。そんなことを言っていたら、一生独身だったりして。あははっ。はぁ~。
とにかく、いまは冒険だよ!せっかくハンターになったんだから、楽しまなくちゃ。ね?
さてと。つぎは、どこに向かおう?幼かったクロードを奴隷商人から買い取り、「王家の末席」だと言い聞かせていいように利用してきたア・ッカネン国かな?
それとも、レ・スタット国に潜入してチャールズ王の悪巧みを暴く?
エ・ルヴァスティ領に行って、父様に会うのもいいなぁ。
芸術の都クレーデルへ行って、ガイムやネス達の訓練の様子を見るのもいいよね。
ふふふっ。やりたいことがいっぱいだわ!




