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14 クラーケン売却

「悪いが、俺達はこのままア・ムリス国を発つ。悪いが、借家の片付けを頼む」

「任せてください!あ、俺はバームって言います。ギルドまで、よろしくお願いします」

 ガーラムの小型船で本島へ向かうあいだ、バームはいろいろな話をしてくれた。今は妻が妊娠3か月で、まだつわりがひどいこと。蓄えがなく、子供にかけられるお金がなく心配だったけれど、クラーケンを売ったお金で余裕ができること。突然、現れたクラーケンに驚いたこと。

 クラーケンはその食欲を満たすため、普段は外洋にいる。たまに餌となる大型の魚やカニを追ってどこかの浜へやって来ることはあるらしいけれど、群れで行動するなんて聞いたことがない。海でなにか起きているのかな。

 そうそう!バームさんの子供が男の子なら「ニキ」、女の子なら「セシル」と名前をつけたいと言ってくれた。嬉しいけれど、恥ずかしい。


 かららん


 ハンターギルドの王都支部へやって来た。港町にもハンターギルドはあるけれど、大型の魔物を処理できる設備がないの。

 時間が夕方ということもあって、ハンターギルド内は賑わっていた。仕事終わりのハンター達が、食堂スペースでジョッキ片手につまみを食べている。

 ベテラン剣士に、手ぶらの小娘、漁師、王宮の使者という組み合わせに、首を傾げている人が多い。とうさましかハンターに見えないよね。なにをしに来たのかと、観察されている。

「ここで、クラーケンを引き取ってもらえるだろうか」


「「「えええぇぇ~~~!」」」


 声を合わせるハンター達。

「クラーケンを討伐されたのですか?それはすごいです!こちらへどうぞ!」

 受付嬢がカウンターから出て、魔物の解体所へ案内してくれた。後ろからぞろぞろとハンター達がついて来る。暇なのかな。

 解体所に着くと、とうさまがマジックバックからクラーケンを出した。その大きさに、解体所の所長が嬉しそうな声を漏らした。

「こいつは見事だ!最近、海を荒らしてるネームドじゃねえか?うむ。切り口はきれいだな。どうやってとどめを刺したんだ?………なんだぁ?頭に傷があるが、見たことねえ形状の傷だな………ううむ」

 ネームドとは、名前を持たない魔物の中で名前を持つ珍しい魔物を指す言葉。ネームドは他の魔物より体が大きく、力も強い。知能が高いこともあり、倒すことが厄介な魔物とされている。討伐報酬は、通常の魔物より高く設定されている。


「…足1本は貰っておく。残りを買い取りもらいたい。いくらになる?」

「そうだな………金貨9枚だ」

「ええぇ!?そ、そんなに貰っていいんですか?」

 バームさんが感激している。自分や仲間の新しい小舟を買っても、子供にかけられるお金は十分残る。全財産が銀貨12枚だったバームさんにとって、信じられないほどの大金に違いない。

 解体所の所長がお金を払ってくれ、受け取ったバームさんは手が震えている。うーん。このまま1人にしたら、すぐ強盗に狙われてお金を奪われそう。

「あ、あの、ギルドマスターに会ってもらえますか?討伐した際のお話を聞かせていただきたいのですが………そのときに、討伐報酬をお渡ししていいですか」

「…わかった。いいだろう」


 受付嬢はとうさまの返事に、明らかにほっとした様子で溜息を吐いた。

 クラーケンは、外洋に出られる大型船も沈めてしまう海の怪物。人間にとって脅威なの。それを討伐したとなれば、どんな状況だったのか記録に残しておく必要があるよね。

 バームはハオが付き添ってくれるということで、2人して漁に使う小舟を買いに港町へ向かった。

 ハンターギルドの2階の一室に案内されたのは、とうさまとわたしの2人だけ。待っていると1人の男性がやって来た。健康そうに日に焼けて、引き締まった体の中年ハンターという感じ。年は50歳くらいだから、引退したハンターかもしれない。


「俺はア・ムリス国の王都支部ギルドのギルドマスター、ダッカムだ。あんたが、クラーケンを討伐したという剣士か。で、そっちのお嬢さんは………」

「娘のセシルです」

「俺はニキだ」

「そうか。あのクラーケンは近海の海を荒らす厄介者でな。よくやってくれた。ではさっそく、クラーケンを討伐したときの話を聞かせてもらおうか」

 メリス島の浜にクラーケンを押し寄せて来て、4匹のクラーケンが去るまでの話を簡潔にした。あまり詳細を話すと、余計な注目を集めてしまう。注意しないとね。


「ううむ。では、逃げた4匹がまた襲ってくる可能性があるな。しかし、いつ海から現れるかわからん。これは困った」

 うん?この人、とうさまに残りのクラーケンを討伐させようとしてる?でも、わたしがクラーケン達を脅したから、もう襲って来ないんだけどな。それを言ったら、わたしが魔物使いなことを話さないといけないから、ここは黙っていよう。どうやら、わたしはハンターとして見られていないようだしね。

評価ありがとうございます!


嬉しくて、びっくりしました。


今日はそのお礼を兼ねて、書き溜めがある3話をまとめて投稿します。


また、評価よろしくお願いします。

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