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138 オリヴィエとの出会い

「今日は、マジックバッグを作ろうか」

「うん。お願いします」

 嬉しい申し出に、自然と顔がほころぶ。

 へへへっ。どんなマジックバックにしようかな?素敵なマジックバッグがいいなぁ。って、マジックバッグに変えるバッグがなかったよ!

「ルー。いまからバッグを買って来ていいですか?すぐに戻りますから」

「あー、そうか。元となるバッグがなかったか。寝て待っているから、僕のことは気にせず、気に入る物を手に入れて来るといい」

「ありがとう」 

 ルーは優しいなぁ。

 急いで部屋に戻り、財布をポケットにつっこんだ。1階に戻って来ると、玄関にシルヴァとエステルが待機していた。


「お供致します」

「私もご一緒させてください」

 ふたり揃って申し出てくれたけれど、買い物にふたりを連れまわすのは気が引ける。

「バッグを買って来るだけだから、わたしひとりで大丈夫だよ。ふたりは家で待っていて」

「しかし………」

「色んなお店を回るつもりだから、そんなにふたりを連れまわすのは申し訳ない気がするの。それに、ルー達はお客様なのに、ルー達だけに留守番させるのも悪いでしょう?」

 ルーはさっきの言葉通り寝て過ごすんだろうけど、ロランとサシャはヴァンピーノだもの。護衛だし、きっと起きて待っていると思う。他人の家でゆっくり休めるはずもないし、勝手がわからないから食事もとれないだろう。そんな状態でほおっておくわけにはいかない。


「フィーを連れて行くから、心配しなくていいよ」

 わたしがそう言うと、エステルが頷いた。

「わかりました!シルヴァ様とお待ちしています」

「いや、私は………」

「納得してくれてありがとう。しっかりルー達のおもてなしをお願いね」

 エステルの言葉を否定しようとしたシルヴァの言葉を遮り、シルヴァの手を握って握手した。

「シルヴァだったら、安心して任せられるよ」

 そう言うと、シルヴァがまんざらでもないような表情をした。

 シルヴァは頼られるのが嬉しいんだね。

 そうして、わたしはフィーを連れてひとりで家を出た。


 王都オーシルドは芸術の都と言われるだけあって、美しい物で溢れている。手の込んだ美しい刺繍に、繊細な宝石細工、丁寧になめされた革製品、織物だってなめらかで質がいい。色形に、装飾、質感、耐久性………と、考えれば考えるほど、どれが理想のバックかわからなくなっていく。

 どれも素晴らしいんだけど、これだ!っていうのがないんだよねぇ。

 10軒目のお店を出て、11軒目の店を探して当たりをきょろきょろ見回した。

 斜め向かいに革製品を扱っているお店があり、そこに入ることにする。

 お店に入ると、革特有の匂いが漂っていた。そして、ついに見つけた!小ぶりで、変に主張せず、手に馴染む触り心地。気取った飾りはなく、妙な着色もない。なんの変哲もない手のひらサイズのバッグで、ベルト通しがついている。これなら、腰につけるのになんの問題もない。

 理想の物を見つけて、浮かれていたんだと思う。手元ばかり見ていて、前を向いていなかった。 


 どんっ


 誰かにぶつかってしまった。

 顔を上げると、金色の髪に緑の瞳をした美しい男性がいた。質の良い毛皮のついたコートを着ている。

「すみません!」

 勢いよく頭を下げると、綺麗に磨かれたブーツが目に入った。

 頭のてっぺんから足の先まで磨きこまれたような人だった。どこかの貴族かもしれない。

「いや、いいよ。気にしないで。僕もよそ見をしていたのが悪かったんだ」

 そう言って笑った顔は、とても優しそうだった。

 でも、どう言ったらいいのか………その笑顔の下に、狂気が隠れているような気がした。本能が、目を見てはいけないと囁いている。そしてふいに、革の匂いに混じって、嗅ぎなれた匂いがした。本当にわずかだったから、うっかりしていたら気づかなかったと思う。それくらい、わずかな匂い。わたしは狩りに慣れているから知っている。これは、血の匂いだ。


 まずい!いまはフィーしか連れていないのに!

 この紳士は、オリヴィエだ!

 本能が警告を鳴らしている。逃げろ、と。

 でも理性が、逃げても捕まるだけだと告げている。

 冷静に考えなきゃ。そしてなんとか、このことをとうさまやシルヴァ達に知らせなくちゃ。そうしないと、わたしも、このお店にいる他の客も無事ではすまない。

 オリヴィエがフィーに目を止めて、耳元に囁きかけてきた。

「………その鳥は、ツァラですね。どうやって手懐けたんですか?」

「孵化の際に、立ち会うことができたんです。そうしたら懐いてくれました」

「そうですか。あなたは運が良いと見える。偶然に感謝しないといけませんね」

 その言葉はまるで、オリヴィエとわたしの出会いを指しているように感じる。狩人が、獲物を見つけて喜んでいるような………そんな感じだ。

 わたしに有利な点もある。それは、わたしがオリヴィエの正体を知っているということを、オリヴィエは知らないということだ。

 どこかに日よけの石を身に着けているはず。それを破壊すれば、わたしにもオリヴィエを倒すチャンスが生まれる。




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