表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
135/282

135 ヴァンパイアとは3

 ふと気が付いた。

 ヴァンパイアハンターはいないの?

 ルーが、わたしの疑問に答えてくれた。

「魔大陸に、ヴァンパイアハンターはいない。ヴァンパイアと他の種族との共存ができているからだ。そして、アステラ大陸にヴァンパイアハンターがいると聞いたことがない」

 わたしも、ヴァンパイアハンターがいるなんて聞いたことがない。

 そっか。ヴァンパイアを捕まえる技術を教わることはできないのかな。

「小説や舞台では、ヴァンパイアはコウモリに姿を変えたりできると描かれているけれど、実際はどうなんですか?」

「変身はできるが、コウモリとは限らない。狼になる者もいるし、獣人に化ける者もいる。オリヴィエは、あの性格に似つかわしくないがウサギだ」

 確かに。平気を人を殺す男の変身した姿がウサギだなんて、似合わないね。捕食者には、もっと狂暴な獣が似合う。


「オリヴィエも、幼い頃は優しいところがあったんだ。母上を喜ばせるためにウサギに変身することを覚えた。だが、とうとうウサギ以外には変身できなかったな」

 ということは、人によっては複数の対象に変身できるということ?おもしろそうだね。

「さて。ヴァンパイアを殺す方法だが。一番は日光だ。日よけ石なく日光に当たれば、体が焼けて消失する。跡形もなく、な」


 こわっ!


「弱いヴァンパイアなら、心臓に銀の杭を打つという方法も使える。だが、オリヴィエほどの強いヴァンパイアになると、銀の杭は効かない。殺せるのは、日光だけだ」

「つまり、ウサギに変身できる男を日光で殺せばいいのか」

 とうさまが簡単そうに言ったけれど、ことはそう簡単には運ばないと思う。

 まず、どうやって見つければいいのか………。

 おびき出せればいいんだけどな。

「さっきも言ったが、オリヴィエに似た男が目撃されている。場所は歓楽街だ」

「オリヴィエが好みそうな場所だな。娼館は?」

「ある」

「そこを調べてみてくれ。僕はこの見た目なので、立ち入ることができないんだ」

 ルーの見た目は、わたしと同じくらい。11歳くらいだものね。

「わかった。クロード、すぐにあたってくれ」

「了解」

 そう返事すると、クロードはレギーとロイを引き連れて家を出て行った。


「もし見つからなければ、おびき出すしかない」

 ルーはわたしを見ながら言った。囮になってくれと言っているのだ。 

「だめだ!」

「いけません!」

 ルーの意図に気づいたとうさまとシルヴァが、同時に声を上げた。

「僕はセシルに聞きたい。協力する気はあるかい?」

 ルーは、まっすぐ見つめてくる。

 わたしもまっすぐ答えないと。

「わたしは、これ以上、被害者を出したくない。もしオリヴィエを見つけられなかったときは、わたしが囮になる」

「そんなこと許さないぞ」

「セシル様、おやめください」

 またしても、とうさまとシルヴァが声を上げた。


「心配してくれてありがとう。わたしも、本当は怖いんだよ。だって、相手は500年以上生きているんだもの。どれほど強いか想像もつかない。大勢の子供や女性が犠牲になっていることも許せない。いま捕まえないと、これからも犠牲者は増えるんでしょう?止められるなら………わたしで力になれるなら、やりたい。それに」

 そこで言葉を切って、皆の顔を見回した。

「皆が守ってくれるでしょう?」

 にっこり微笑むと、シルヴァがやれやれというふうに首を振った。

 とうさまは怖い顔をしているし、エステルは心配そうだ。

「僕がママを守るよ。任せて!」

 フィーだけが、えっへんと胸を張って答えた。 


「そうと決まれば、服を用意しないとね。ハンターの恰好じゃ、オリヴィエが警戒して近づいて来ないかもしれないもの」

「待て、セシル。おまえが囮になるのは、オリヴィエを見つけられなかったとき、だろう?一週間で、オリヴィエを見つけてみせる。だから、それまで待て。いいな!」

 とうさまの剣幕に圧されて頷いた。

 でも、たった一週間でオリヴィエを見つけられるのかな?

「………一週間でいいのか?一か月にしなくていいのか?」

 ルーが確かめるように聞いた。

「一週間でいい。それで決着をつける」

 なにか、自信ありげなとうさま。それとも、ただの強がりかな。

「では、なにかわかったらフィーを飛ばして知らせてくれ。くれぐれも無茶をするんじゃないぞ」

 そう言い残して、とうさまはまた出掛けて行った。


 う~ん。1週間、「なにもしないで待て」とは言われなかったよね。ということは、わたし達はわたし達で動いていいわけだ。

 まず、なにをしよう?

 今日はもう時間も遅いから、出掛けることはできないか。

 そうだ!

「ルーはマジックバックを持っていますか?」

「あぁ。持っているとも。これのおかげで楽に旅ができる」

 そう言って、ルーは腰の小さなバックを見せてくれた。とうさまのより小ぶりだ。少しのお金しか入らないような、小ささだった。綺麗な刺繍が施されていて、手の込んだ造りになっている。

 普通、旅をするなら食料や衣類を入れる袋や水筒くらい持っている。それが、ルーはともかく、ロランやサシャも身軽だから、誰かマジックバックを持っていると思ったんだよね。当たりだったよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ