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130 ヴァンパイア探し

 浴室から漏れて来るぬくもりで体が温まり、とうさまがいるという安心感から、うとうとしてしまった。たぶん、30分くらい寝ていたかもしれない。

「おや、こちらにいらっしゃいましたか」

 シルヴァがやって来て、くすりと笑った。

「これでは、ニキがふやけているでしょうね」

 その言葉で、ぼんやりしていた頭が覚醒した。

 とうさまは浴室に入ったままだった!わたしが脱衣所にいるから、タオルをとることもできずに出て来れなかったのだろう。

「とうさまごめんなさい!」

「いや、いい。起きたなら、そこを出てくれ」

「はい!」

 いくら父娘とはいえ、わたしは女でとうさまは男。裸を晒すような間柄じゃない。

 慌てて脱衣所を出ると、ダイニングに向かった。お腹が空いていた。


 あとから、のぼせた様子のとうさまと、シルヴァがやって来た。

「あれ?ニキ様、珍しく長風呂だったんですね」

 エステルがにこやかに言った。

「………少々、問題があってな」

「??どこか壊れてました?」

「いや、そういうわけじゃない」

 とうさまとエステルのやりとりは、どこかコントのようで面白かった。

 思わず笑ってしまうと、とうさまにじろりと睨まれた。


「ところで、王宮ではどんな用事だったのですか?」

 ナイス!シルヴァ。わたしもそれが聞きたかった。

 とうさまが席につくと、全員が席についてとうさまの言葉を待った。

「………王都で、シルヴァがヴァンパイアだという噂が広まっているのは知っているか?」

「ハンターギルドで聞いたよ。少しでも噂を消したくて、今日はシルヴァ達と王都をあちこち回っていたの」

「そうか。成果はどうだ」

「わからないけれど、うまくいったんじゃないかな。特に女性達がシルヴァを気に入って相手してくれたよ」

 噂好きな女性達が、シルヴァはヴァンパイアではないと噂を流してくれるといいのだけれど。

「噂の発生元は、やっぱりミシェルだったの?」

「ミシェルと、その他大勢だ。空を飛ぶシルヴァを見た者が、噂を流したらしい。これは、王宮で聞いた話なんだが………」

 

 そう言って、とうさまが話してくれたところによると。ここ半年ほどの間、女性が襲われる事件が、報告されているだけでも5件発生しているらしい。襲われた女性はみな気絶しているところを発見されている。そして、首筋に牙をたてた痕。被害者の女性達は、口を揃えて「黒い影に襲われた」と話しているそうだ。王宮は慎重に調べているけれど、その話が市井に伝わると、「女性がヴァンパイアに襲われた」として爆発的に広まった。それから、夜間の女性の一人歩きが禁じられるようになったり、不審者の取り締まりが強化されたりと、治安維持に力が入れられている。

 そこへきての、シルヴァの登場だ。絵に描いたような美男子で、人を担いで空を飛んでいた姿を大勢に目撃されている。ヴァンパイアと誤解されるのに、時間がかからなかったというわけだ。

 ミシェルが実家の力を使って、商会とハンター達に噂を広めたのは事実だけど、それ以外にも噂を広めた人は大勢いたのだ。


「俺達は、事件の真相を解き明かす手伝いを依頼された」

「いや、ちょっと待ってくださいよ。ヴァンパイアがアステラ大陸にいるなんて、聞いたことないですよ。どうやって、煙みたいな存在を見つけるんです?」

 レギーがそう言って、首を傾げた。

「そこは、私がお力になれるかと」

「どうやって見つける?」

「痕跡から辿るか………もしくは、運よく出会えたら、ヴァンパイアかそうでないか見分けがつきます。微かに、血の匂いがするんです」

 なるほど。シルヴァは鼻が利くんだね。

「そうすると、今日会った中にはいなかったんだな?」

 念のため、確認するとうさま。

「ええ。いませんでした」

 見つけていたら、教えてくれていたよね。


「俺は、クロード達と街の調査をする。セシルは、シルヴァとエステルを連れてヴァンパイアを探してくれ。わかったな」

「やったぁー!仕事だ!」

 とうさまの指示に、クロード達が喜んだ。元諜報員としては、諜報活動はお手の物だし、仕事を与えられて嬉しかったのだろう。

「ねえ、僕は!?」

 名前を呼ばれなかったフィーが、すねたような声を出した。

「セシルの傍にいろ」

「わかったよ。僕がママを守るね!」

 気持ちはありがたいけれど、わたしはフィーが心配だった。だって、まだこれでも雛なんだもの。見た目はワシみたいに大きいけれど、まだまだ守られる立場にいるんだよ?無茶はしてほしくない。


 そのあと夕食を食べて、男女別々にお風呂に入って就寝となった。うちのお風呂は、5人くらいいっぺんに入れるほど大きいんだよ。

 朝になると、早々にとうさまとクロード達は朝食を済ませてでかけていった。

 わたしは、シルヴァ達と今日回る場所の相談。昨日はお店のある通りを中心に回ったから、今度は図書館や美術館のある地区にしようかと話していた。

「それより、貧民街はいかがですか?人が隠れるには、もってこいだと思います」

 そうだね。エステルの言う通り、悪いことをする人は貧民街に隠れる傾向がある。

「いえ、ヴァンパイアは綺麗好きです。あのような汚らしい場所に、隠れるはずがありません。」

 そっか。綺麗好きなんだ。それじゃあ、貧民街はないね。

「あっ、でも。ヴァンパイアって日光に当たったら死んじゃうんじゃなかった?昼間に出歩いたりできるの?」


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