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13 クラーケン強襲2

「そうだな。俺なんてまだCランクのハンターだ。強い奴はまだまだいる」 

 うん。そうだね。実力から言うとAランクでもおかしくないけれど、目立たないように、とうさまはわざと昇給試験を受けないでCランクに留まっているの。

 ちなみに、わたしはFランク。

 ハンターのランクは最下位のFランクから上位のAランク、そして最上位のSランクとある。初心者または見習いがFランクで、一人前と認められるのはCランク以上。ハンターは10歳からなることができて、ハンター登録時に上位のランクへ上がれるスキップ申請もあるけれど、わたしはあえてスキップ申請を使わずにFランクで登録した。理由はとうさまと同じ。目立ちたくないから。


 ランクによって受けられる依頼が違い、それはすなわち収入に直結する。Fランクは採集や小動物の討伐がメインで、小遣い稼ぎ程度にしかならない。

 でも、パーティを組んでいれば、仲間のうち上位のランクに合わせた依頼を受けることができる。わたし達の場合は、とうさまに合わせてCランクまでの依頼を受けることができる。だから、特にお金に困るということはない。とうさまが若い頃に貯めたお金もあるしね。だから、約1か月という長期に渡って休暇を過ごせたの。


「ニキさん、すごかったですね!見ていましたよ。あのクラーケンを切り裂いた剣技、見事です!…ところで、セシルさんは、どうやってクラーケンの上に乗ったんですか?」

 どうやら、ハオさんはわたしがクラーケンを倒したところは見ていないらしい。良かった。目撃者は少ない方がいい。

「よくやった!あのクラーケンは、いい金になりそうだな!」

 島長が息を切らしながら、嬉しそうに叫んだ。

 たしかに、クラーケンはいいお金になる。内臓以外は捨てるところがなく、身は高級食材として売れるし、ハンターギルドにはクラーケンの討伐依頼も出ているだろう。おそらく、報奨金も貰える。


「あのクラーケンは、依頼により討伐した。つまり、あんたの物にはならないぞ」

 普通、ハンターへの依頼はハンターギルドを通して行われる。ギルドが依頼者とハンターの間に入るため手数料は取られるが、なにかあったときに両者の仲裁を行ってくれたり、ハンターに貢献度ポイントくれたりする。貢献度ポイントは、ランクを昇格するためには必要なものなの。

 でも、ギルドを通さず行われる依頼を自由依頼という。ギルドを通さない分、なにかあってもハンターを守ってくれないし、貢献度ポイントもつかない。ランク昇格を目指していないわたし達には関係ないけどね。

「こいつが依頼主だ。討伐証明と足1本くらい貰うが、残りはこいつの物だ」


「「「えええぇぇ~~~!」」」」


 島長と一緒に、他の漁師達も叫んだ。

「そんな!い、いいんですか!?」

「どうしてこいつなんだ!逃げ回ってただけだぞ?」

「さっき、自由依頼を受けたからな。こいつは全財産を払うと約束した。依頼があったから、俺達はクラーケンを倒したんだ」

 クラーケンは美味しいしね。

「俺は報酬と、ギルドから報奨金を貰えるからそれでいい。クラーケンの身は、売れば金貨5枚にはなるだろう。食うなり、売るなり好きにすればいい」


 金貨5枚と聞いて、目の色が変わる漁師達。ただし、浜にあった船はすべて瓦礫と化していて、クラーケンを運ぶことができない。がっくりと肩を落としている。

「ねえ、ギルドに運ぶなら手伝うよ。どうする?」

「え?お、お願いします!」

 わたしが声をかけると、漁師さんは嬉しそうに笑った。他の島民が、恨めしそうにしている。

「これで、新しく船を買える。皆も良かったな!」

 どうやら、クラーケンを売ったお金で船を買うらしい。他の漁師の分も。良い人だね。嫌いじゃないよ。漁師達は、明らかにほっとした顔をしている。船がないと漁ができないもんね。命は助かったけれど、食べる分の魚も取れなければ餓死してしまう。


「じゃあ、待ってるから、全財産を持って来てね」

「はい!」

 元気に返事して、自分の家に向かって走って行く漁師。海岸から近いところに漁師達の粗末な家が並んでいる。全財産と言っても、せいぜい銀貨10枚とか、そのくらいだと思う。でもいいの。

 とうさまのマジックバックは、大容量。クラーケンの頭の他、切り落とした8本の足も次々とに飲み込まれていく。

 戻って来た漁師さんが渡してくれたのは、銀貨が12枚。予想より多かった。

「妻が、へそくりも出してくれたんですが、少なくてすみません」

「気にするな。俺たちには討伐報酬がある」


 そのとき、借家に残してきた生活用品について思い出した。今更、行って片付けるのはめんどくさい。この漁師さんに、片づけを頼めないかな?

「とうさま、借家のことだけど…」

 とうさまは、たった一言でわたしの言いたいことを察してくれたらしい。わたしの頭を軽く撫でた。

「…あんた、俺達が借りている借家はわかるか?」

「あ、あぁ。島のはずれにある、ぼろ屋ですね。知ってます」

 あ、メリス島の人から見てもぼろ屋なんだ。雨風が凌げる程度の佇まいだからね~。

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