表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
129/282

129 ヴァンパイアの疑い3

 クロード達はハンターギルドで訓練があるので、わたしとシルヴァ、エステル、そしてフィーの3人と1匹で街の中をうろつくことになった。

 貴族向けの高級商店街から、平民向けの一般商店街を散策し、市場を巡った。そのあいだ中、シルヴァは人々の注目を集めていた。チラチラと探るような視線、堂々と見つめてくる視線、コソコソと疑うような視線と、様々な視線が見つめて来た。

 いったい、どこまで噂が広がっているんだろう?

 多くの視線は、シルヴァが日差しを避けることなく堂々として、にこやかにしている姿を見てほっとしているようだった。

「あれ見て。あんな素敵な人がヴァンパイアなわけがないわ。それに、牙もないし、目だって赤くないもの。絶対に人間よ」

 ひそひそと囁く声が聞こえて来た。

 シルヴァを見て、好意的な意見を言っている人がいれば、シルヴァは立ち止まって愛想を振りまいた。


「こんにちは、お嬢さん方。私になにか御用ですか?」

 シルヴァが話しかけると、大抵の女性は顔を赤くしたり、甲高い悲鳴を上げたりした。シルヴァは容姿端麗で、声もいいからね。 

「あ、あの!お名前を聞いてもいいですか?」

 その一言で、騒がしかった周囲の音が止んだ。皆、聞き耳を立てているのだ。

「もちろんです。私はシルヴァと申します」

「きゃー、素敵なお名前!」

「あなた方も素敵ですよ」 

 お世辞もさらりと言えてしまうんだね。

 相手の女性達は、頬を赤くしたり、きゃーきゃー言い合ったり楽しそうだ。


「ところで、その恰好………シルヴァ様はハンターなのですか?」

「ええ。そうですよ。こちらのセシル様に誘われましてね、いまはEランクの魔法剣士として働いております」

 えっ、わたしが誘ったんだっけ?そう………だっけ?う~ん、誘ったとも言えなくはない、のかな?

「なにか依頼がありましたら、お気軽にハンターギルドまでお越しください」

「それって………!デートの誘いでもいいんですか?きゃっ、言っちゃった!」

「くふふっ。時間が合えば、ね」

 ハンターには個人やチームを指名した指名依頼というものがある。彼女がシルヴァを使命して、たとえば護衛依頼をしたとすると、実質デートだとしても、その依頼を受けることができる。というか、指名依頼を受けないというのはハンターとしての評価にも繋がるので、よほどのことがないかぎり断ることはしないほうがいい。

 つまり、彼女達が指名依頼をしてきたら、シルヴァはそれを受けないといけない。ということ。


 個人で護衛を雇うには高いけれど、複数の女性がお金を出し合うなら、ひとりの持ち分は少なくていい。

 彼女達は、本気でシルヴァを雇う相談を始めてしまった。

「護衛の相場っていくらかしら?」

「他の方はいいわ。シルヴァ様だけ雇うにはどうしたらいいのかしら?」

「ふふふっ。1日中一緒にいられるなんて楽しみだわ」

 ハンターの使い方としては間違っているけれど、依頼があれば受ける。それもハンターとしての仕事だ。

 それに、シルヴァならひとりにしても大丈夫。うまくやってくれるだろう。


「ねえシルヴァ。日も暮れて来たし、そろそろ帰ろうよ」

 シルヴァがヴァンパイアではないことの宣伝も、もう十分だと思う。

「かしこまりました、セシル様」

「セシル様、お疲れでしょう?今日の夕食は手の込んだ物にしましょうか?」

 エステルがにこやかに話しかけて来た。

 わたしが2人にかしずかれている様子を見て、周囲がざわめく。見た目はハンターだけれど、どこかのお嬢様なのか?と。

「あの装備、よくわからないけどお金かかってそうよね」

「あんな綺麗な鎧見たことないわ」

「剣だって、あれ高級品よ」

「「「シルヴァ様がお仕えする、どこかのお嬢様なのかしら?」」」 

 

 う~ん。たしかに、わたしはジェイミー・オルランディ伯爵の娘だから、伯爵令嬢になるけれど。これは大っぴらにできない事実だし、お嬢様扱いは居心地が悪い。

 シルヴァもエステルも、クロード達までわたしに仕えようとするけれど、わたしは誰かにかしずかれるほど立派な人間じゃないもの。かしずかれるたびに、くすぐったいような、申し訳ないような、落ち着かない気持ちになる。

「セシル様、参りましょう」

「あっ、うん」

 シルヴァがわたしの背中に手を当てて、そっと押した。

 わたしはそのまま歩き出し、一歩下がった場所をシルヴァとエステルがついて来た。

 家に帰るとすでにクロード達が帰っていて、夕食の準備をしていた。

「あっ、私もやりますね」

 気づいたエステルが、すぐに台所に入って行った。


「ねえロイ、とうさまを知らない?」

「はい、知ってます。ニキ様なら、お風呂に入ってますよ」

「そっか。ありがとう!」

 とうさま、帰ってるんだ。良かった。 

 挨拶をしようとお風呂へ行くと、浴室から水の音が聞こえた。

「とうさまいる?」

「あぁ。どうかしたか」

「昨日から会っていなかったから………挨拶しておこうと思って」

「そうか」

 低く満足そうに笑う声が聞こえた。 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ