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122 王宮訪問

「ツァラと言えば、ア・ッカネン国の国鳥ですよ!国旗にも描かれてるんです!」

「ア・ッカネン国の国民だったら、赤ん坊だって知ってますよ!」

「10メートルにもなる巨大な鳥ですよね!?」

 クロード達の興奮はなかなか収まらなかった。前から後ろからとフィーを眺めて、拝んだり、触ろうとしてフィーにつつかれたり。とにかく大騒ぎだった。

 そっか。ア・ッカネン国の国鳥なんだ。知らなかった。わたしも勉強不足だね。

 わたしが卵を見つけて育てたことを話している間、3人は目を白黒させていた。

「そんな話、初めて聞きました。じつは、学者でもツァラの生体はよくわかっていなくて。謎が多い鳥なんです」

「ア・ッカネン国のアーカート王の耳に入ったら、力づくで奪われかねませんよ。これは、秘密にしなければなりませんね」

「餌はなにを食べるのかな?」


 そうだね。フィーは今までわたしの魔力を吸収してきたけど、これからは色々食べるよね。

「フィーは、なにを食べたい?」

「ママと同じご飯が食べたい!」


 しゃべったああぁぁぁ!!!


 クロード達、驚愕。顎が外れたんじゃないかと思うほど、口が開いている。

「もうっ、そんなに驚くこと?」 

「いやいやいや!驚きますよ!普通、鳥はしゃべりません。さっき、レギーが秘密にするように言ったのを覚えてます?絶対、人前でしゃべらせないようにお願いしますよ!」

「う、うん。わかった」

 クロードの剣幕に押されて、フィーまで「うんうん」と頷いている。可愛いな。


「陛下がお待ちだ。そろそろ行くぞ」

 とうさまに言われて、はっ!とした顔になるクロード達。

「そうだよ。オ・フェリス国の王宮から使者が来たんだ。「戻ったらすぐに王宮へ来るように」って言ってました」

「わかった。おまえ達は、レイヴを看ていてくれ」

「………わかりました。また留守番ですか」

 どうやら、王宮へ行けると期待していたらしい。残念そうだ。


 王宮は、王都オーシルドの中心にある。華やかなオーシルドの中心にあって、贅を尽くした造りをしている。王都中の名だたる芸術家の作品が飾られていて、芸術の都の名に恥じない立派な建物だ。

 その王宮の一室にて、わたし達は国王陛下を向かい合っていた。

 室内には国王陛下と、わたし達4人、そしてフィーだけだ。護衛の騎士は部屋の外で警護している。

「ニキよ。帰ったのなら、なぜ連絡をよこさないのだ」

 国王陛下はご立腹だ。

「旅の土産話など、聞きたいことがいっぱいあるのだぞ」

「そうですか」

 とうさまはドライだ。


「まずそこの、見るからに怪しい男女!おまえ達、何者だ!?」

 国王陛下は、シルヴァとエステルを指さした。

 うん。怪しいよね。わたしもそう思うよ。だってシルヴァは執事服だし、エステルはメイド服なんだから。なぜか、2人ともその恰好でついて来たのだ。頼んでも、ハンターの恰好にはなってくれなかった。

「私は、セシル様にお仕えする執事のシルヴァにございます」

「私もセシル様にお仕えしております。メイドのエステルです」

 ジト目でとうさまを見つめる国王陛下。

「………修行の旅に行ったんじゃなかったのか。執事にメイドだと?どこぞのお嬢様でもあるまいに。ハンター風情に、身の回りの世話をさせる者が必要か?」

 ごもっとも。


「陛下。シルヴァは悪魔、エステルは氷雪の魔狼と呼ばれるフェンリルです」


 ぶふぉっ! 

 

 とうさまがシルヴァとエステルの正体を明かすと、国王陛下は飲んでいたお茶を噴き出した。

「な、なんだと!?」

「そして………」

「まだあるのか!?」

「セシルはエ・ルヴァスティ領主、ジェイミー・オルランディ伯爵の娘です」

「ううっ!心臓が痛いぞ!」

「大丈夫です。ただのストレスです」

 とうさまは、あくまでもドライだ。


「しかし、そうなると。ニキよ、おぬしはジェイミー・オルランディ伯爵の兄ということになるのではないか?」

「そうですね」

「ううむっ。ただのハンター風情と思っていたが、こうなると、あまり侮れぬな」

「我々の扱いは、これまでと同様でかまいません」

「しかし………これは、国の勢力図が変わるほどのできごとだぞ。悪魔にフェンリルだぞ?それが、エ・ルヴァスティ領主の娘のしもべということは、レ・スタット国の勢力になるのか………??」

「あ、それから、これはツァラのフィーです」

 いかにも、ついでに、という感じでとうさまが言った。


「なにぃーーーー!!?」

 国王陛下が大声を上げたので、さすがに外の騎士達が駆けこんで来た。

「いや、なんでもない。ちょっと驚いただけだ。おまえ達は下がっていなさい」

 国王陛下にこう言われれば、騎士達は下がるしかない。

 にこにこ笑顔を浮かべるシルヴァとエステルを不審そうな目で見つめてから退出していった。

「ツァラと言えば、ア・ッカネン国の国鳥ではないか。なぜここにいる?」

「はい。卵から還したら懐かれました」

「そんなことがあるのか?いや、ちょっと待て。ここ数年、シシュティン山の山頂で吹雪が吹き荒れていたな。学者共が異常気象だと騒いでいたが。あれはもしや………」

「フィーの影響です」 

「おぬし、よくもわしに黙っていたな!」

 国王陛下、激昂。


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