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11 メリス島へ2

「なんだぁ?やんのか?てめえがガキをほったらかしにして、王女様のご機嫌取りなんかしてるから悪いんだろ」

「…黙れ」

 あ、とうさまが怒ってる。

「うるせえ!………ひええっ。いてえ!は、離してくれ!頼む!」

 とうさまに右腕をねじり上げられ、オッサムさんが情けない声をあげた。

「なにをしとるか!島のモンに手を出すとは何事だ!さっさと手を放せ!」

 島長がジグとその取り巻きを引き連れてやって来た。

「ほら、言ったとおりだろ?セシルが戻って来たって」


 取り巻きイリータが、わたしを指さしている。

 とうさまは力を緩めると、オッサムさんの背中を蹴とばした。

 蹴とばされたオッサムさんは、すぐに島長の後ろに隠れた。逃げ足は早いな。

「まったく、これだからよそ者は………ううん?そこにおられるのは、王宮からの使者様ではないかっ」

 あ。さすがに気づいたか。王宮から使者がくれば、対応するのは島長の仕事。服装くらいは覚えてるよね。

「これは、これは使者様。よくお出でくださいました。どうぞ、我が家へお越しください」

「ありがとうございます。ニキさんとセシルさんも一緒でかまいませんか?」


「「「え?」」」


 ぽかんとしている島長達。そして、わたし達が王宮に話をつけたことに思い至ったのか、顔を青くしている。そうだよね。島長は、わたし達に家を貸してくれたとはいえ、使用料はぼったりだし、親子そろって碌なことしてないもんね。王宮なんかに報告されちゃ困るよね。まあ、島長親子にされた嫌がらせなんか、わざわざ王宮に報告したりしないよ。めんどくさい。そんなことしたら、あの王女殿下が「ニキ様になんてことをするの!!」とか言って大騒ぎするに決まっている。

「さあ、立ち話もなんですから、島長のお宅へ行きましょうか。あ、あなたも」

 ハオさんがオッサムさんに声をかけ、ぞろぞろと島長の家へ向かって歩き出した。

 ハオさんがメリス島へ来たのは、ガーラム便の運用について、王様のお言葉を伝えるためである。ガーラム便の運転手をしていたオッサムさんが呼ばれるのは当然か。


 それにしても、どうしてわたし達まで呼ばれたかと言うと。メリス島へ来るまでの間に話したからだ。島長とオッサムさんからの被害に遭ったことを。明日にもア・ムリス国を去るわたしととうさまだけど、ハオさんは「ア・ムリス国に悪い感情を持ったまま行かせたくない。島長とオッサムさんに反省と謝罪させたい」と言ってくれた。

 島長の家は、メリス島の中心にある。平屋だけど、他の家と比べると一回り大きい。大切な客が来たときに、もてなすのが島長の仕事だからだ。それに、集会所などないメリス島では、住民が集まるときは島長の家と決まっている。


「…というわけで、今後はガーラムはマリス島で管理し、メリス島には関わらせないことで決定しました。なお、これは王命ですから変更はできません」

「そんな!それでは、メリス島は他の島になめられるではないか!」

「しかたありません。オッサムさんの管理責任は、島長にありますから」

「ぐぬぬっ」

 そう言われたら言い返せない。島民になにかあったとき、その責任を取るのがメリス島の責任者たる島長なんだから。オッサムさんを殺しかねない目で睨みつけているけど、それも、まあしかたない。オッサムさんがウルンサに乱暴していたのが原因なんだから。


「そもそも、今回の騒動のきっかけを作ったのは島長のご子息とか。伺っておりますよ。服を脱ぐか、ガーラムと泳ぐよう強要したと。いくら子供とは言え、許せることではありません」

「うぐぐっ」

「それに、セシルをご子息の婚約者に仕立てようとしたとか。保護者の許可なく、未成年を婚約させることは違法ですよ。おわかりですね」

 ア・ムリス国だけじゃなく、世界のどこへ行っても、成人は15歳と決まっている。結婚できるのは成人してからなので、それ以前にできるのは婚約のみ。ただし、親や保護者、後見人の許可がいるの。未成年の子供を守るための制度だよ。


「…儂は、そんなことをしておらん。言いがかりだ」

「おかしいですね。では、セシルが嘘をついていると?」

「そうだ!儂もジグも、責められるようなことはしておらん!」

「…おわかりでないようですね。私は王宮の、王様の使いとしてここに来ています。つまりは、私を謀ることを、王様を謀るということ。事実が明るみになれば、困るのは島長ですよ?今なら、ニキさん達に謝罪するだけで済みますが、あとになってから事実と違うことがわかれば、島長は一家もろとも国外追放ということに…」


「ひっ」


 うん。それ、脅しじゃなくて、事実だよね。アリッサ王女ならやりかねない。

 がくがくと震え出した島長。

「…娘にしたことを、謝罪してもらえるだろうか」

「はいいぃぃぃぃ!」

 島長は椅子からすっと立ち上がり、その横の床に頭をこすりつけてザ・土下座をした。 

 うわあ。そこまでしなくて良かったのに。ただ、反省して謝ってくれれば………って、それより土下座の方が簡単か。一種のパフォーマンスだもんね。「国外追放」が効いたんだね。ハオさんがいてくれたおかげで、話が早く済んで良かった。

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