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プレゼント。

 歪み淀んだ瘴気が溜まり、疫病や魔物を発生される場所は魔境として恐れられ、結界にて封じられる。

 しかし、何故か魔境は温かい季節に活性化する。結界が破れ、取り返しのつかないことになる前に魔物を減らし、瘴気を霧散させねばならないが、幸いにして当社、咲零(えみお)神社に生まれる獅子達は怨霊怪異の討伐に長けている。周囲との協力体制も万全で、各神社ごとの特性を駆使し、敵の勢力を弱体化させ、潤沢な救援物資を送ってくれる。

 此処より西にある魔境、過負(かふ)盆地は大きく湧き出す魔物も数が多いが、今年も何とかなりそうだ。

 夏の猛暑も未だ健在であるが、日暮れには涼しい風も吹くようになってきた。役場の人と共に留守番ばかりの子獅子達も、体調を崩すこと無く走り回っている。


 だが、身体は元気でも心も同じとは限らない。最近、子獅子の巳壱(みいち)はどうも元気がない。

 今日も子供部屋を覗けば、何も入っていない自分のダンボールを前に肩を落としていた。一体、何があったのか。

 留守を預かってくれる役員さん達からの報告書にも、参道の方を眺めながらウロウロ歩き回ってみたり、溜息を付いたりしていると、心配する記載があった。

 反面、ずっとご機嫌なのが天祥(てんしょう)だ。

 報告書によれば、黄色い毛糸で作られたひよこを意味もなく箱から出したり、仕舞ったりしているらしい。郵便屋の加賀見が偶に連れてくる、娘のきいちゃんから貰ったひよこが余程気に入ったようだ。

 自分は勇猛な獅子だから、動かない人形など喜ばないなどと偉そうに抜かしていたが、子供部屋に居る間は片時も手元から離さず、触ろうとする兄弟たちを近寄らせない。

 今日もふわふわのひよこを前にむふふふと笑い、尻尾を揺らしている天祥を、巳壱は嫌そうに横目で睨み、しょぼしょぼと子供部屋から出てきた。

 様子を見ていた自分に気がつくと少し顔をあげたが、結局、何も言わずに横を通り抜け、社務所を出ていこうとする。



 今日も時間になったら魔物退治に出掛けねばならず、子獅子の相手は殆ど出来ない。だからこそ、気になることは今のうちに解決せねばなるまい。


「巳壱、どうした。何かあったか?」


 声を掛けてみれば、ゆっくりと子獅子は立ち止まる。


『なんもない。』


 だが言葉と違い、尻尾は力なく垂れ下がり、耳と耳の間も覇気無く広がっている。これで何もないはずはないだろう。

 久しぶりに抱き上げて膝の上に載せ、ブラシを掛けてやる。


「巳壱、何かあるなら、じいちゃんに相談しろ。

 でないとじいちゃん、心配で討伐に行けないだろ。」

『なんにもないよ。大丈夫。』


 話そうとしないので暫く待つことにして、黙ってブラシを掛け続ける。何度も何度も頭から丁寧に毛並を整えてやれば、気持ちが良いのかゴロゴロと喉を鳴らし始めた。

 時間がないと後回しになりがちだが、やはりブラッシングは大事だ。風呂には毎日入っているし、留守番役のお姉さんが対応してくれているとは言え、常に全員梳かしてやれるとは限らない。何より子獅子は日々全力で暴れまわる。巳壱の毛は大分ザラザラしていた。子獅子特有の柔らかい毛並が台無しだ。



 何度もブラシで撫でてやるうちにリラックスしてきたのか、巳壱はみゃーうと溜息をつくように鳴いた。


『ねえ、じいちゃん。きいたん、次、何時来るかなあ?』

「ん、どうだろうな。加賀見も忙しいしな。」


 巳壱はきいちゃんが大好きだ。来るたびに懸命に面倒をみようとし、くっついて回っては自分の妹なのだと嬉しそうに尻尾を揺らしている。

 しかし、父親の郵便屋は気紛れで、毎回、きいちゃんを連れてくるとも限らない。

 その上、夏場忙しい自分達に気を使っているのか、本人が忙しいのか、純粋に仕事がないのか、よく分からないのだが、昨今はあまり顔を出さない。

 少し前に来たばかりであるから、また暫くは来ないのではなかろうか。

 巳壱もそれは分かっているらしく、寂しそうにギュルギュルと潰れた声で鳴く。


『来ないよね。こないだ来たばっかりだもん。

 また、暫く来ないよね。』


 自分で言って悲しくなったのか、尻尾がくたりと垂れてしまった。


「なんだ、寂しいのか?」


 先日は久しぶりの訪問だった上、きいちゃんが喋れるようになっているのに皆、夢中になった。獅子達総出で騒いでしまい、巳壱は端に追いやられて、殆ど遊べなかった。

 その時は大人の兄獅子まで可愛い妹に夢中になっているのが誇らしいと、鼻息荒く尻尾を振り回していたのだが、今になって反動が来たのだろうか。



 聞けば巳壱は頭をあげて、抗議するようにみゃうみゃうと鳴いた。


『そりゃ、寂しいけど、きいたんが沢山来れないのは、何時もだもん。

 加賀見の兄ちゃんも忙しいの、分かってるもん。仕方がないもん。

 でもさぁ……』


 一旦言葉を区切り、みゃぐみゃぐと口ごもる。


「でも?」

『ミイチ、きいたんが来る度、一生懸命お世話してるんだけどな。

 だけど、きいたんはミイチの事、覚えてくれてないのかなあ?

 ミイチは絶対、きいたんのこと忘れないんだけど。』

「どうしたんだ、急に?」


 悲しげに耳をピタリと頭につけるのに、少し驚く。


 元々、きいちゃんは幼いので、獅子たちをどれだけ個別に認識し、名前を覚えているか怪しい。それでも巳壱のことは比較的覚えているようで、来るたびに指さしてはみいちゃ、みいちゃと呼ぶし、仮に忘れられたとしても仕方がない歳だ。

 今は分からなくとも、そのうち分かるようになる。

 それまで気長に待たねばならないと、巳壱も納得していたのに今更どうしたのだろう。

 理由を尋ねるが、再び子獅子は不貞腐れるように口を固く結んだ。


『どうも、しないもん。』

「どうもしなくないだろう。ちゃんと話してみろ。」

『だって、わがままだもん。』

「我が儘でも良いから。

 じいちゃん、怒ったり笑ったりしないから、説明してくれよ。」


 子供じゃないと意地を張っていると言うべきか、大人になろうと努力しているとするべきか。話そうとしないのを優しく撫でて、なんとか口を開かせる。



『あのね、テンちゃんはね、ひよこ貰えていいなって。

 きいたん、なんでミイチには何もくれないんだろうって、思ったの。』


 ミューと巳壱は小さいな声で鳴いた。


『きいたんはさ、ちっちゃいから誰が一番とか、思ってないよね。

 でも、テンちゃんにひよこ作ってくれたのに、なんでミイチには作ってくんないのかなあ?

 ミイチのほうがテンちゃんより、きいたんと仲良しだと思うんだけど。』


 どうやら天祥がプレゼントを貰ったことで、自分より大事にされているように感じてしまったらしい。

 だが、若干勘違いもしているようだ。そこは正してやらねばなるまい。


「あれは天祥がひよこが来ないって、あんまりしょんぼりするから、他所の子に上げるつもりだったのを譲ってくれたんだ。」

『そうなの?!』

 

 天祥はずっと前からひよこを欲しがっていた。

 しかし、きいちゃんにひよこにはお母さんが必要と教えられ、うちの神社にお母さんは居ないので駄目だと理解し、大層凹んだ。

 あまりに気落ちしているのを見かね、偶然持っていたのをくれただけで、天祥の為に態々作ったわけではないと教えてやれば、巳壱はミャッと短く叫んだ。


『だってテンちゃん、凄い自慢してたよ!

 きいたんがテンちゃんに作ったのをくれたんだって。』


 嘘ではないが、言葉の使い方で受けるニュアンスが大分違う。我が国の言語は難しい。


「確かに、あのひよこはきいちゃんが作ったそうだが、天祥が貰えたのは偶々だ。」

『じゃあ、ムイちゃんのクワガタとおんなじ?

 そこに居たから貰えただけって、ムイちゃん言ってたよ。』


 そう言えば、あの日一緒に居た末っ子の無比刀(むひと)も、何だか黒いものを貰っていた。天祥のように騒がないので、すっかり忘れていた。


「どちらかと言えば、無比刀の方がきいちゃんの判断で貰ってたかもな。

 でも、それだって持ってたからくれただけだろう。」


 天祥がひよこを貰えたのは、加賀見が譲るように勧めたからだ。無比刀にはきいちゃんが自ら手持ちを渡したが、ただの流れだろう。

 どちらにしても深い意味はないと教えれば、安心したように巳壱は尻尾をゆらゆら揺らした。



『良かったよ。

 きいたん、テンちゃんは覚えているのに、ミイチは忘れちゃったかと思った。』


 悩み事が消えて嬉しくなったのか、膝の上からぽんと飛び降り、ブルブルと身体を振るう。


『ミイチさ、テンちゃんに負けちゃったかと思った。

 でも、他の子のをテンちゃんが貰っただけなんだ。なぁんだ。』


 スキップするようにぴょんぴょん部屋の中を跳ね回り始めたかと思えば、傍と気がついたようにピタリと止まる。


『でも、その他所の子は、ひよこ作ってもらえたんだね。良いなあ。

 ミイチには、作ってくれないのかなあ。』


 途端にしょんぼりしてミュウミュウ鳴き出すのに、つい苦笑してしまう。

 操る思念波はしっかりしてきたが、やはり、まだ小さい子供だ。喜んだり、がっかりしたり、表情がコロコロ変わる。


「元々、その子にあげようと思って作ったのか、上手に出来たからあげようと思ったのか、じいちゃんは知らないなあ。

 でも、頼めば巳壱にも作ってくれるんじゃないか?」

『だけど、ちっちゃい子におねだりなんて、恥ずかしいよ。ミイチはお兄ちゃんだもん。』


 今度来た時に頼んでみたらどうかと勧めれば、耳を横に垂らし、前足で床を引っ掻いて躊躇する。

 こんなに気にしていながら、見栄を張るのに益々おかしくなってしまう。

 只、あまり笑えば傷つけてしまうので、何とか抑えて相づちを打つ。


「そうだな。年上は小さい子から貰うより、上げる方が普通だしな。」

『そうだよね!』


 一般的な常識に、我が意を得たりと巳壱は高らかにガウと吠えた。尻尾を振り回し、前足でとんとこ床を叩く。



『ミイチはお兄ちゃんだもん。きいたんに、プレゼントするよ。

 ミイチがきいたんに、プレゼントするよ。

 何が良いかなあ? やっぱり、セミの抜け殻かなあ?』

「巳壱、きいちゃんはセミの抜け殻は喜ばないと思うぞ。」


 貰うより、あげる方が年上らしいとやる気になったのは良いが、出てきた危険牌にストップを掛ける。

 きいちゃんは意外と喜ぶような気がするが、代理で保管し、管理するであろう父親が嫌がるだろう。あれに迷惑を掛けるのは宜しくない。


『そっか、やっぱりセミは駄目なんだ。ムツ兄ちゃんも、そういえば駄目って言っていたよ。』


 子獅子は素直に納得し、子首を傾げて尻尾を揺らした。


『じゃあ、もしかして、蛇の抜け殻も駄目?』

「うん。やめておいたほうが良いな。」


 むしろ、駄目の度合いが上昇した気がする。


 珍しいのに、何故駄目なのだろうかと巳壱は不思議そうだが、仮にも幼いとは言え、女の子にあげるものではなかろう。却下すれば困った様子でミュウミュウ鳴かれる。



『じゃあ、何が良いかなあ? じいちゃん、何が良いと思う?

 きいたん、何を喜ぶかなあ?』

「そうだな。」


 きっと良い案を出してくれると期待を込めた目で見つめられ、考える。

 今まで自分が子獅子達に貰ったもので、何が一番嬉しかっただろうか。嬉しいと言えば、何を貰っても嬉しかったような気がするが、少なくとも雉と毬栗は、かかる時間など色々問題が多いので駄目だ。

 それに相手は幼い女の子。自分を基準にしないほうが良いだろう。

 もっと、そういうものに詳しく、相談できる人がいればと悩んで思いつく。


「そうだ、星宮さんと元町さんに相談しなさい。

 女の子のことだから、女の人に聞いたほうが良いだろう。」


 夏の間、留守を預かってくれる役員のお姉さん達ならば、きいちゃんが喜びそうな良い案を出してくれるかもしれない。

 そう提案すれば、巳壱も嬉しそうに尻尾をくねらせた。


『うん! 今日、お姉ちゃん達に、聞いてみる!』

「じいちゃんからも、お願いしておくな。」

『じいちゃ、ありがとう!』


 一応、巳壱の我が儘になるので、自分からも無理のない範囲での協力をお願いしておこう。

 大喜びで身体を擦り寄せてくる子獅子の頭を撫でてやり、安心したなら外で遊んで来るよう促す。

 すっかり気を良くした巳壱はぴょんぴょん跳ねながら、境内へ出ていった。

 子獅子に用意できるものなど高が知れており、どんぐり辺りに収まる気もするが、巳壱が準備したものであれば、なんでもきいちゃんは喜んでくれるだろう。


 その日のうちに頼めば、役員のお姉さん達は快く引き受けてくれた。

 以来、報告書に巳壱がプレゼント探しを頑張っている旨が、時折記載されるようになり、十数日後、「ミイちゃんが、素敵なプレゼントをGETしました!」との報告があった。公民館で預かっているので、ちょうどいい時に来て欲しいらしい。

 社務所に置かず公民館で預かるとは、何を用意したのだろうか。

 聞いても巳壱は『じいちゃんも驚かせたいから、内緒!』と答えない。お姉さんも、他の子獅子たちも口止めされているのか、笑うばかりで教えてくれない。

 只、きいちゃんが喜ぶことは間違いないらしい。

 何方にしろ、加賀見が来なければ渡せないので訪問を待つうちに、巳壱は着々とプレゼントを増やしているようだった。



 そして月が変わり、郵便屋が手紙を持ってやってきた。

 状況を伝えると直ぐにきいちゃんを連れてきてくれたので、揃って公民館へ向かう。

 一緒に付いてきた子獅子達は何度も往復しているのか慣れたもので、先立って走っていったり、戻ってきたりと忙しない。


「一体、何を用意しているのやら。さっぱり分からないんだ。」

「それはそれで、宮司として管理不行き届きのような気もするな。」


 サプライズの醍醐味を介さない加賀見が可愛くないことを言う。何にしても今日、見てみれば分かることだ。

 子獅子達の案内に付いて行き、到着した公民館の中に入ろうとすれば、裏手に回れと吠えられた。建物の中に仕舞ったのではないようだ。


「巳壱、一体何を用意したんだ?」


 いい加減、教えてくれと言えば、子獅子は尻尾を振り回した。


『ミイチが用意できる、一番のものだよ!』

「よかったねえ。たのしみだねえ。」


 何処まで分かっているのか、加賀見に抱えられたきいちゃんも、にこにこ笑う。

 プレゼントが貰えることよりも、仲良しの子獅子がご機嫌であることに気を良くしているようだ。



「公民館の裏って何があったっけ?」

「公園に続いているんだが、確か最近、なんか作ったって聞いたな。

 ビオ……ビオトートとか何とか。」

「池か。池だな。なんだよビオトープって。何で池じゃ駄目なんだ。」

「知らん。」


 加賀見と雑談しながら、裏手に回れば真新しい池と大きめの看板がみえてきた。

 白地の看板にはピンク色の文字に子獅子のイラスト。


『みいちゃんのビオトープ』


 何か、巳壱が全面に押し出されている。ハートマークまでつけられてる。

 役員のお姉さん達が書いたのであろうが、これは一体どういうことか。僅かな困惑と共に近寄る。

 先に着いた子獅子達が思い思いに池を覗いている中、巳壱は手前で尻尾を揺らし、きいちゃんが来るのを待っていた。加賀見が抱えた娘を降ろし、きいちゃんは早速ちょこちょこ歩いていく。


『みて、きいたん! お魚、いっぱい居るでしょ!』

「ちゅごいね! いっぱいだね!」


 巳壱に案内されるようにして、池を覗いたきいちゃんは目を輝かせた。


「くろいのも、おっきいのも、たくさんだね!」

『凄いでしょ!

 これ全部、ミイチが捕まえたんだよ!』


 胸を張る弟の周りで、兄獅子達もみゃうみゃうと鳴く。


『ミイちゃん、頑張ったんだよ。』

『ボクらも少しだけ手伝ったけど、ミイちゃんみたいには捕まえられなかったよ。』

『ミイちゃんは凄い上手に魚を捕まえるんだよ。』


 川へ遊びに連れていって貰う度に探して、集めたらしい。

 子獅子達が遊びに行く川辺は人気も多く、魚はあまり見付からない中で、これだけ集めるとは大したものだ。

 口々に褒められて、巳壱は照れくさそうにみゃあと鳴き、きいちゃんも子獅子の頭を撫でる。



「ちゅごいね! みいちゃ、おりこうだねえ!」

『ミイチね、きいたんにあげようと思って頑張ったんだ。

 だからこのお魚、全部きいたんのだよ。全部、きいたんにあげるよ。』

「きいたんに、くれんの!?」


 思った以上にきいちゃんは喜んでくれた。

 目を見開き、大声で叫んで父親を呼ぶ。


「おとうたん! みいちゃ、きいたんにくれるって!!」

「ああ、よかったなあ。」


 思わず耳を塞ぎたくような大音量。あの小さい身体の何処からこんなに大きな声が出てくるのだろうか。

 大興奮の娘に加賀見が目を細めて答え、きいちゃんは巳壱にもう一度聞いた。


「みいちゃ、おさかな、ぜんぶくれんの?」

『うん。全部、きいたんにあげる。全部、きいたんが食べていいよ。』

「ありがちょう!」


 小さい人は大はしゃぎし、子獅子も嬉しそうに尻尾を揺らしているが、今、何か聞こえた気がする。

 聞き間違えであろうか。



「おさかな、ぜんぶ、きいたんの。」


 鼻息荒く池を覗くきいちゃんに、巳壱はみゃうと前足で魚を指した。


『うん。あいつなんか、美味しいと思うよ。

 あとね、向こうに鯉も居るの。大きいから、きっと食べごたえあると思う。』

「きいたん、そんなにたべられないよー」


 見に行こうと子獅子と小さい人は連れ立って、池の奥に向かっていった。仲良く並んでちみちみと走っていく姿は、大層可愛らしい。

 置いていかれた父親も池を覗く。


「これ、全部、きいこのか。凄いな。」


 隣に並んで覗いてみれば、鮒やボラなど結構種類が多い。

 兄獅子達も言っていたが、小まめに探しては捕まえたのだろう。


「あれはどじょうか? 魚だけじゃないんだな。」

「ザリガニも居るなあ。巳壱の奴、頑張ったんだな。」


 静かに子獅子の努力を褒めながら、加賀見は斜め上を見やった。そのまま少し悩むように首を傾げ、難しい顔で聞いてくる。


「なあ、これ、食べたことにしてリリースしちゃ駄目か?」

「その気持ちは大変よく分かる。」


 鮎や山女魚など、川で取れるものにも美味しい種類は居るが。

 巳壱にはいい加減、魚の全てが食べるものではないと教えなければならんだろう。


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