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オーケン石。(後編)

 縁側に座っていたきいちゃんは、よっこいしょと立ち上がると庭まで降り、瑞宮の側までよちよち歩み寄って、大の字にひっくり返って不貞腐れる子獅子を上から押しつぶすように抱きしめた。


「みみたは、たぷたぷでいいんだよ。

 おやつ、いっぱいたべるのが、いいんだよ。」

『やっぱり、きいたんもボクのこと、タプタプって言う……』


 しがみついてくる小さい人にされるがままになりながら、瑞宮がボヤく。



「しかし、何で太ったかね?

 霊獣は普通、太らんもんだし、瑞宮はよく運動してるのにな。」


 もう、取り繕うのは面倒になったのか、太ったと言い切りながら、加賀見は首をかしげた。


「じいさん、なんか心当たりねえの?」

「敢えて言うなら無比刀(むひと)と同じで、おやつのせいじゃないかと思うんだが。」


 末っ子獅子の無比刀は現在、ポメラニアンかペルシャ猫のように鬣どころか全身長毛のフワフワになっている。加賀見に連れられて出かけた旅行先で、ある日突然伸びてきたらしい。

 他に原因が見当たらないからと消去法であるが、霊気が吸収できない代わりに主食にしていた魔石の影響ではないかと考えている。

 只、気になるのは、同じ様に魔石を食べていた他の子には、全く変化がなかったことだ。


「主食ではなくとも、魔石は歴代の獅子が兵糧として使用しているが、仮に食べすぎたからって見た目が変わることなんか、今までなかったんだけどな。」


 単純に食べ物の影響とするには前例もない。

 よく分からないと首を傾げれば、郵便屋も同意見らしく首肯される。


「霊気の取りすぎって言ったって、神域から吸収する分が一時的に減るだけのことだし、鉱石の部分も、要らなければ巳壱の砂みたいに排出しちゃうだけだろうし。

 無比刀も確かに毛はフワフワになったけど、霊力の流れ方も、毛を除いた中身も何も変わってないしな。」


 旅行中、無比刀はずっと『暖かくしたい』と考えていたそうで、身体が気持ちに反応することもあるかと思ったが、瑞宮が太りたいと願っていたはずがない。

 目立った悪影響がないので落ち着いていられるが、不思議なこともあるものだ。

 目下の瑞宮は抱きつくだけに留まらず、全身で伸しかかってきたきいちゃんに潰され、ミュギューと悲鳴を上げている。

 子獅子にボディプレスを咬ます小さい娘を、父親が回収し自分の膝に乗せた。



「ま、不思議と言えば、瑞宮は最初からカリカリ大好きだったのが不思議だけど。

 元々、くれるなら食べるって程度で、自ら欲しがるようなもんじゃないだろ。」


 此処数年、彼が訪れる機会が増えたのに併せておやつを貰う機会が増え、今でこそ“いいもの”として認識されてるが、神域にいれば基本的に腹は減らない。

 自然回復では足らないほど激しく運動した後や、先の飴ほど美味しければまだしも、そこまで執着しないのが普通だ。

 それなのに、瑞宮は魔石を見れば食べたがり、貰えない時は代わりに手水舎に行き、霊水を飲む。

 子獅子の中で一番動き回るので、その分、霊気も必要だからとしても、変わっていると言えば変わっている。


『だって、ボクいっぱい運動するもん。

 それに食べるのは大事なことだもん。』


 当の瑞宮は素知らぬ顔をして、小さい人に潰された毛並みを舐めて直している。何も悪いことはしていないと言いたげだが、そういう問題でもない。


「さて、どうしてなんだろうなあ?」


 うちの霊獣は皆、御神体の分身として産まれる。だが、共通するのは雄獅子であることと、毛並みが白か青の何方かなことぐらいで、性格は勿論、顔も、体つきも異なる。

 邪鬼怨霊の討伐に特化するが故に偏らず、個々の性質を持ち寄って、互いの能力を活かそうとしているのではとは、加賀見の見解であるが、当たらずとも遠くあるまい。

 ひいてはこれが瑞宮の特徴なのだろう。沢山食べることでエネルギーを貯蓄し、長期の活動を可能にとするには燃費も悪いし、変わった特性が有ったものだ。


「……ま、個体差だろ。」


 他の追随を許さぬ移動魔法を駆使し、世界を股にかける博識な郵便屋もわからないのか、箸にも棒にもかからない感想を述べた。

 その割に考えこむような顔をして、明後日の方向を見ていると思ったら、妙なことを言い出す。



「これが普通の動物なら、寄生虫を疑うところなのかもしれないけども。」

「え、そうなのか?」

「やたらと食欲がある割に太らず、なんか、変なものを食べたがるようになるらしいぞ。」


 以前、本で読んだと軽い口調で言う加賀見からすれば、深い意図はなかったのだろう。

 しかし、陸晶が顔をしかめてフシャッと鳴いた。


『え、瑞宮、寄生虫がいるの?』

『ミミ兄、お腹に虫がいるの?』

『いないよ!

 兄ちゃん、変なこと言わないでよ!!』


 逸信も大袈裟にのけぞり、瑞宮が毛を逆立てて怒る。


「いや、俺は普通の動物だったらって言ったじゃん。

 それに瑞宮は順調に太ってるし、違うだろ。」


 子獅子にガウガウ吠えられて、濡れ衣だと郵便屋は主張したが、誤解は早々解けそうにない。

 陸晶がブルブルと身体を振るう。


『タプタプなだけじゃなくて、お腹に寄生虫までいるなんて。

 どうせなら、要らないお肉を食べてもらえばいいのに。』

『兄ちゃんはいないって言ってるでしょ!

 勝手に決めないでよ!』


 いやだーと弟たちから白眼を向けられた瑞宮は、再び怒りに任せてむきゃーと地面を転げまわった。

 暴れる子獅子を指差して、きいちゃんが父親にしがみつく。


「こわい! みみた、おこったらこわい!」

「落ち着け、瑞宮。陸晶も煽るな。

 って言うか、何、他人事の顔してんだ。」


 半べその小さい人を宥めながら、加賀見は陸晶を叱った。


「寄生虫っていうのはな、集団感染するんだぞ。」

『集団感染?』


 大体の意味を察したのか、眠そうな顔で耳をぴったり頭につけた子獅子を、郵便屋はふんと鼻先で笑う。


「そうだよ。口からとか、他の動物から移ってきたとか、虫に刺されてとか経路は色々あるらしいけどな。

 お前らみたいに定まった範囲で密接して生活して、伝染らないはずがない。

 つまり、ミミ太に寄生虫がいるなら、お前らにもきっといるってことだ。

 けど、此処の獅子は霊気だけで動く付喪神型。

 無機物に取り付く寄生虫なんて、まず居ないし安易に騒ぐんじゃ……って、逸信!

 いないって言ってるだろ! なんて顔してるんだ、人の話を聞け!」


 振り返れば、叱られていた陸晶より側で聞いていた逸信のほうが精神的ダメージを受けていた。

 その場で引っくりかねない形相で座り込み、完全に引いてしまっている。


『虫が……ボクのお腹に、虫がいたら……嫌われちゃうかなあ……』

『逸信、加賀見の兄ちゃんはいないって言ってるんだから、落ち着きなよ。

 それに集団だから、皆同じだよ。イッちゃんだけ嫌われたりしないから。』


 心、此処にあらずと顔面蒼白でブツブツ呟く逸信を、陸晶が前足で叩いて落ち着かせる。


『兄ちゃんが、変なこと言うから! 

 また、謂れのない誹りを受けた!』

「ごめんね。」


 フシャ、フシャとくしゃみをするように、何度も顔をしかめて怒る瑞宮に、棒読みで加賀見が謝った。

 全く、面倒なと反省の欠片もないことを呟き、青く光る瞳で怒る子獅子を眺める。



「実際、寄生虫なんていないし、表面上に霊気が溜まっている感じはするが、特に変なところはないんだけどなあ。

 ちょっと、詳しく診てみるか。」


 おいでおいでと手招きするも、瑞宮はそっぽを向く。


『いいよ、もう! 兄ちゃんなんか、嫌いだよ!』

「まあ、そう言うなって。」

『ふんだ! 加賀見の兄ちゃんなんか、ふんだ!』


 余程腹に据え兼ねたのか、カッカッと牙を向いてみせた瑞宮だが、それでも再度の手招きに立ち上った。怒っているんだぞと態度で示しながら、のしのし郵便屋に歩み寄り、ふんと鼻息荒く言う。


『診るんだったら、さっさと診てよ!

 そんで、ボクは元気だし、虫もいなければ太ってもいないって証言して!』

「元気だし、虫はいないって言ったけど、それ以外は一寸。」

「みみた、おなかに、むしむし、いないのかい?」


 ハイハイと怒る子獅子を受け流す父親の膝の上で、きいちゃんが側にやってきた瑞宮に声を掛けた。


「むしむし、いないなら、おやつたべれる?」

『……食べるよ! くれるんだったら、早くちょうだい!』


 小さい人に怒っても仕方がなく、それこそおやつでも食べないとやりきれなかったのか、瑞宮はたしたしと前足で地面を叩いて催促した。

 早速、きいちゃんは加賀見の服を引っ張る。



「おとうたん、かりかり。」

「ああ、それより飴をやる約束だったな。ちょっと待ってろ。」


 元々それが発端であり、今度こそあげたいと強請る娘に父親は頷いた。

 小さい人を膝から降ろし、改めてかばんを探ろうとするも考え直したように手を止め、縁側へ指で絵を描くように魔法陣を作成する。

 独特の模様と文字を刻まれた円陣は蒼い光を放ち、程なく2つの瓶が現れた。

 加賀見は片方の蓋を開け、小さい人の手に中身を握らせる。


「ほら、まずリクとイツの分な。」

「あい。」


 両手に一つずつ飴を受け取って、きいちゃんはまず陸晶達へ差し出した。飴を貰い、幸せそうに尻尾を揺らす子獅子をみて、嬉しそうに笑う。

 満足げに小さい人が戻ってくると、次に加賀見は取り寄せた瓶を2つとも渡した。


「次はじいちゃんに渡してくれ。イツの分と皆の分な。

 後で配ってもらおう。」

「あい。」


 どちらも大体10㎝強、ジャムの小瓶程度とは言え、自分の手より大きいものを2つも同時に運ぶのは幼児に荷が重い仕事に思えたが、きいちゃんは両手でしっかり抱え、落としもせずに持ってきた。


「じいじ、あい、どうぞ。」

「ああ、ありがとう。」


 受け取った瓶は少し大きさが違った。小さい方が逸信のだろうと判断して戸棚にしまい、皆に配る分は袂に入れる。

 大きい瓶の中身は小粒だが、量が有った。これなら子獅子だけでなく大人の兄獅子たちにも、行き渡るだろう。



 最後は瑞宮ときいちゃんは縁側を降りてから飴を受け取り、不貞腐れている子獅子の口元に容赦なく手ごと押し付けた。


「みみた、あめちゃん。」

『もう! 顔に押し付けないでよ!』


 グリグリやられたのは嫌だったようだが、スンスンと飴の匂いを嗅いだ瑞宮は、途端に相好を崩した。

 あっさり機嫌を直したようで、嬉しそうにきいちゃんの手から飴を舌ですくい取る。


『美味しい! これ、本当に美味しいね!』


 にゃあーと甘えるように一声鳴いて、手のひらを何度も舐めるのに、小さい人も満足げにムフーと頷いた。

 きいちゃんはそのまま加賀見の元へ戻ろうとしたが、怪訝な顔をした父親に脇へ追いやられる。


「どうした?」

「いや、ちょっと待ってくれ。」


 どうも様子がおかしいようで、喜色満面で喉を鳴らしながら何度も口の周りを舐める瑞宮を、加賀見は不審なものでも見るように眺めた。そしてゆっくりと腰を浮かして手を伸ばす。


「ミミ太、お前、なんか首周りで霊気が絡まってるぞ。」

「んにゃ?」


 飴の後味に夢中になっている瑞宮の頭を押しのけるようにして、首の後に指を差し込み、引っ掛けるようにして何かを引き抜く。

 瑞宮の身体が一瞬、淡い光を放ったように思えた。



 目を凝らすも特段変化はなく、いつもと同じ子獅子が喉を鳴らしているばかり。

 見間違いであったかと息を吐き出す。

 ……いや、瑞宮の様子が……!?



 ぼふっと音がして瑞宮の毛が一気に伸びた。弟のフワフワ無比刀もかくやと思える見事な長毛。

 まるで真っ白い綿飴のようだ。


「キョ、キョヒーッ!!」


 きいちゃんが奇妙な悲鳴を上げ、陸晶と逸信も飛び上がる。


『瑞宮が!!』

『ミミ兄がもふもふに進化したーっ!』

「いや、進化は世代を経りながら変化することだから、これは違う。」

『えっ? 何? 何があったの!?』


 パニックを起こす逸信達に淡々と加賀見が突っ込み、一人だけ状況がわかっていない瑞宮がキョロキョロと辺りを見回す。

 きいちゃんが大声で叫んだ。


「ふかふかだよ! みみた、ふかふかになったよ!」

『えっ? 本当だ! ボクの毛、フカフカになってる!』


 驚く兄獅子を、今度こそ忌避の感情を込めて見つめ、陸晶と逸信はジリジリと後に下がった。突然の変化に困惑を通り越し、恐怖を感じてしまったらしい。

 あれは本当に自分たちが知っている瑞宮なのか。

 不信の目を向ける弟たちに少しも気が付かず、瑞宮は興奮して尻尾を振り回した。


『凄い! ボクの毛、ムイちゃんみたいになった!

 兄ちゃん、あの飴、フカフカになる効果があったの?』

「いや、そんなものはない。」


 思わぬ事態に呆れた様子で、加賀見が首を横に振る。

 いくら面白くとも、意図せぬ異常事態を引き起こしてしまったことに心中複雑なようだが、その点、きいちゃんは無邪気に大喜びした。


「ふかふかだねえ! もふもふの、ふかふかだねえ。」

『へへっ、格好いい?』


 バフバフと抱きついてくる小さい人に、瑞宮は誇らしげに尻尾をピンと立てた。

 きいちゃんが平気なら大丈夫と思ったのか、逸信と陸晶も用心深く頭を下げながら縁側から降りて、二人の周りをぐるぐる回って観察を始める。

 スピッツのようになってしまった兄獅子へ、鼻にしわを寄せて、胡散臭げな視線を向ける彼らの気持ちはよくわかる。



「説明を求めてもよろしいか?」


 何かやったらしい郵便屋に問えば、珍しく自信がなさそうに答えられた。


「確かに表面を覆う霊力が厚いなとは思ってたんだが。

 飴で活性化しているのに流れが若干悪い場所があったから、治したらこうなった。」


 本来、全身に行き渡るはずの霊力が、一部滞っていたらしい。

 通常見逃される程度の詰まりを正した結果、改めてバランス良く循環し、毛が伸びたようだ。


「……つまり、霊力が滞っていたせいで太り、直したら毛が伸びたと。

 うん、理屈はわかったが、理解できん。」

「そう言われましても。まあ、霊獣だから。

 霊獣って時折、こういう現象を引き起こすもんだから。」

「なるほど。しかし、それで納得して良いものか。」

「良い悪いより、せざるを得ないっていうか……精霊系なら見た目が変わるのもよくある話なんだが、霊獣、しかも付喪神系か……無比刀の時から、もっと調べておくべきだったろうか……

 でも、あいつも瑞宮も毛が伸びた以外は、殆ど何も変わってないぞ。」


 淡々と話し合っても、現実が事実としてあるだけで、何も解決しなければ変化もない。

 移動探索特化型の探索の部分で身体の状況も診断できるが、医者でも学者でもないから、詳細まではわからないと加賀見は首を横に振った。



『よし! ボク、テンちゃんたちにも見せてくる!』


 霊獣の管理も仕事な宮司の心情など知らず、瑞宮はぴょんぴょん跳ねまわってから、本殿へ駆け出した。


『あ、待ってよ!』


 条件反射的に逸信が後を追い、仕方なさげに陸晶も走り出す。

 取り残されたきいちゃんが、むふーと幼いながら感慨深げに言う。


「おとうたん、みみた、もふもふになったね!」

「ああ、なったなあ。」

「なんで、もふもふになったの?」

「うーん、」


 無邪気な小さい人の疑問に正しく答える術がないのは、今、話していた通り。

 眉尻を下げて、加賀見はバリバリ頭を掻いた。


「お父さんもじいちゃんも知らなかったけど、ここの霊獣はおやつを沢山食べると、時々、モフモフになることがあるらしい。」


 取り敢えずの説明にふんふんと頷いて、きいちゃんは張り切った様子で言った。


「きいたん、もっとたくさん、カリカリあげるよ。

 そしたら、みいちゃも、さんじも、ふかふかになるよ。」

「いや、きいちゃん、それはちょっと、じいちゃんが困るんだが。」


 見た目が可愛い以外に良いことがあるのならまだしも、積極的に引き起こしたい現象ではない。今は問題なくても、後で状況が変わるかも知れないからだ。

 おやつをあげることまで禁止にしようとは思わないが、どの道、食べ過ぎは良くない気もする。

 しかし、きいちゃんには制止したい心情などは伝わらず、目をぱちくりさせるばかり。


「むっちゃんは、ふかふかにならないのかい?」

「さあ……?」


 変化するのは子獅子だけで大人の獅子は駄目なのかと、小さい人のズレた疑問にも、返せる答えはない。



「ま、本当におやつが原因だとしても、子獅子達に食わせていたのは、特段珍しいものじゃない。

 ミミ太も元気だし、ムイも毛が伸びて暫く経つけど変わりないから、心配しなくていいだろ。」


 楽観的な見解を述べながら加賀見は肩をすくめた。

 瑞宮に至っては僅かであっても霊力の滞りを直したので、より元気になる可能性すらあるようだ。

 だが、本当に油断していて大丈夫なのか。


「しかし、なんで急にこんなことになったんだか。」


 たかが毛が伸びただけとは言っても前例がない。何より、勇猛果敢な獅子として、あんな可愛らしくて良いものであろうか。

 納得いかずに何度も首を傾げれば、心配性だと鼻先で笑われた。


「今まで条件を満たす機会がなかったから発覚しなかっただけで、元々の性質なのかも知れないし、変化した以上は受け入れるより他ないだろ。」


 二度あることは三度あるかもしれず、悪影響も起こっていないのに狼狽えるのは、返って浅はかだとも叱られる。

 確かに気にしたところで出来ること言えば、今後の経過を観察するぐらい。腹をくくるしかないが、感情はそう簡単に切り替えられない。


「そうだろうけど、なんか落ち着かないんだよな。」

「年寄は変化に弱いからな。」

「口を慎め。慎重派と言え。」


 軽口を交えながら、どんと構えろと郵便屋は強い口調で言った。


「予め、そういうもんだと思っていれば、慌てずに済む。

 取り敢えず、あのフワフワはオーケン石の姿と名付けよう。」

「名称どうこうの問題じゃない気がするんだが。」


 オケナイト、またの名をラビットテール。ケセランパサランみたいな鉱石。

 うちの獅子の身体は元々砂だから丁度良いのかも知れないが、やはり、どうにもしっくりこない。

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