三題噺第3弾「砂」「カブトムシ」「伝説の大学」
カキンッ、カキンッ。
荒城に響く剣と剣のぶつかり合い。
「ここは、俺に任せて、疾く行けーー!」
剣を交える二人の騎士の一人は、誰かに逃げるように促した。
「兄さん! 兄さんをおいて行くことなんてできるわけないじゃない!」
「俺のことは構うな! ここはもう持たない。お前だけでも逃げなければ、世界はあいつらの手に落ちてしまう。だから、疾く行け!」
「悠長に後ろの小娘に話していていいのかぁ? 余裕だなぁ。アルベルト・フォン・シュタイン王子!」
アルベルトと呼ばれた金髪の騎士は、急所に剣の跡が切り刻まれた。
「くっ、貴様……なぜ俺の本名を知っている……」
「フフフフフ、アーハハハハッ、死にゆく貴様に、教える理由などあろうものか!」
「兄さん、兄さん!」
「何を……している……はやく……行け……」
「いやよっ、兄さん……私をひとりにしないで……お願いだから……もう一人は嫌なの!」
「安心するがいい姫君よ。すぐに兄の下へ送ってやるから心配はいらぬ。仲良くあの世で暮らしてくれ」
「まだよっ、まだ兄さんは負けてない! こんなやつなんかに、私の最強の騎士が負けるはずがないわ! そうよね? 兄さん」
「……………………」
「兄さん? 兄さん? 返事をしてよ! お願いだから……死なないで……」
「これだけ血を流しているんだ。もう息の根は止まる。まだ辛うじて生きているようだがな」
「そんなっ……嘘だと言ってよ! 私と約束したじゃない! 絶対に何があっても守るって……」
「……………………」
「いやーーーーーーーーーーーーーーー」
瑠璃色の眼から雫がこぼれた。
その瞬間、急に少女の身体が七色に光り輝き、目の前に一冊の本が現れた。
「なに……この本は……」
「そ、そんなバカな。ありえない。いや、むしろ僥倖。この娘の力、我のために利用するのも手だな」
「魔力を……感じる?」
「願いを言え。ありとあらゆる事象を捻じ曲げてみせよう」
「まずい、その本をこちらによこせーーーーーー」
「助けて!」
「そなたの願い叶えよう」
荒城一帯は、真っ白な光に包まれ、その後の三人の行方は遥か彼方に消え失せた。
「う……うん……」
目がさめると、周りの風景は見たことのない景色に変わっていて、どこかの森の中にいるようだった。
木々が脈々と生え、カブトムシが何匹も木の蜜を吸い、蜩の音も聴こえてくる。
「ここはどこなのかしら? はっ、兄さん? 兄さんもあの騎士もいない」
鬱蒼とした森の中に一人、ぽつんと飛ばされたアンジュ・フォン・クライン。
とりあえず、道になっているような砂利道を進み続ける。
やがて、広けた場所にたどり着き、街らしきものが見えた。
そこは、伝説の大学がある有名な街とは知らず、数奇な運命により入学することを、今はまだ知るよしもない。
もしかしたら、この先の展開を書くかも?
完結してないですしね。
だとしたら、短編小説ではなく、連載小説として書くべきなのかもしれないですね。
まぁ客観的に見ると、面白いと思うような出来じゃないから、きっとボツ作品ですね。