旅は道連れ編 山賊にご用心
シェリルも動けるようになったが、思いのほかシェリルの動きは良く、リハビリが本当に必要なのか怪しい。
考えてみれば最後は彼女の聖気光が治したのだから、本当はリハビリなど必要ないのかもしれない。
だとすれば、そろそろ旅を始め無ければ....
....と、その朝、そんなことを考えながら着替えをしていた。
そこへ、いきなりシェリルが飛び込んできた。
「えっ、どうかしたの?」と声を出すと、「すまない着替え中だったのか」と言っているが、目は私の胸のあたりに釘付けになっている。
「それは、なんだ、変わった形の胸当てだな。。。」と興味津々でブラを見ていた。
あんまり、ジロジロ見るので、「作ってあげましょうか?」というと、首を上下するのだった。
「それより、なんか用事があったんじゃないの?」と聞くと、「そうだ、あれはなんだ……」と聞いてくる。
見るとお嬢様用に作っていたブーツだった。
「あればブーツと言って履物よ」、「このような履物は見たことがない」というシェリル……
「そういえば、シェリルも履物が必要ね、作ってあげますよ」
とりあえず、シェリルの胸のサイズと足のサイズや足型を取ってブラと靴を作る。
昼食の後、シェリルに試着してもらう。
「おお、これは胸がやさしく収まりしっかり保持される、それになんか背筋も伸びるぞ、、」とか言いながら喜んでいた。
そのまま外に出ようとしたので、それは下着だからと言って、上の服を着せた。
その様子を見ていたお嬢様も作って欲しそうだったが、お嬢様には、まだ早いので目をそらした。。
シェリルは靴を履くとぱたぱたと走り回り始めた。
リハビリ中だったよな。。。とか思ったが、本人はご満悦のようだ。
「軽いし痛くもない履いているのを忘れるようだ」と私の作った靴を褒めてくれた。
その後、シェリルは踊り始めた。
「これは戦神楽という、私には聖気光が使えるが故に魔法が使えない。」
「魔法が使える友は、身体強化や防御魔法で強くなった。」
「だから私は強くなるため、戦神楽を舞う」
シェリルの舞と動きに合わせ聖気光が残光として残り、まるで蛍が空を舞っているようだった。
本当に不思議な娘である、攻撃魔法が出来なかった私としては、なんか分かる気がする。
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その夜、お嬢様に「お嬢様、そろそろ旅に出ましょうか?」と聞いてみた。
お嬢様は不思議な言葉使いになって……
「時は満ち、結ばれた縁は旅に出ることで、次の縁へ繋がっていくだろう。」
その後「時は来ましたね、行きましょう。」と答えた。
なんか難しいことを言っているようだったが、旅に出るのは賛成なんだと分かった。
次にシェリルに聞いてみる。
「リハビリは思ったよりも早く終わりそうなので、そろそろ、この場所を離れようと思います」
「シェリルを家まで送って行こうと思ってはいましたが、知っての通り私たちは狙われています」
「それで、近くでシェリルが分かるところまで送って行こうと思います。」
シェリルはなぜか、神妙な顔をして、「そうだな、私には果たさなければ成らない責任がある、そのためにも国に戻らなければならない」
シェリルと保管庫に有った地図を見ながら考える。
「近場であればシーバイルス国だな、あそこには知り合いがいる、ここからなら3日ほどじゃな」
「それと、ここから1日ほど行ったところにシャルナス村がある、ここなら伝令の『飛行精霊人形』が使えるだろうから国に連絡してみようと思うが……」
シェリルは急に声が小さくなって、「その........実は……、頼みがあるのじゃが……、少し金子を貸してほしいのじゃが........」
「持っている範囲なら、いくらでもお貸ししますよ」と答えると、シェリルは「かたじけない」と武士のような口調で礼を言った。
「善は急げ、明日旅に出よう」と大声で叫んだ。
そう、シェリルのリハビリは旅をしながら継続だね。(必要ないかも........)
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さて、もう一つ課題に取り掛かるか……、
それは不思議存在となったクーが近くにいたので、「貴方は誰ですか」とズバリ聞いてみる。
「誰じゃと、クーに決まっておる」
「精霊力と簡易な会話ボットであるクーは自発的な意思のある会話はできませんよ、本当に誰なんですか?」
「じゃから、クーだと言っておるのだ」
なにやら平行線だな。。。
その時お嬢様が「クーは精霊王だよ」とびっくりすることを言い出した。
そんなばかな、そんなものは召喚していない。
「だいたい精霊王って、そんな存在が私の作った鳥の人形に入っていていいのか........」と呟くとクーが一言。
「懐かしいマリアスと思って来たのじゃが、若いボインちゃんだったので、つい憑依したのじゃ」
「ボインちゃんって、昭和だな……」
「ところで、オマエさん精霊との契約がまだじゃろ。」
「マリアスが精霊王と友達だったので、精霊力は使えますし、今更契約しなくても良いのでは?」
「いやいや、ユニーさんは契約してないだろう。」
「それは、おかしいな「契約」ではなく、「友達」になれば良いはずですよ?」というと、
「ではわしと友達になってくれるか?」というので「良いわよ」と答える。
「契約完了じゃ」と言った。
「友達」と「契約」の違いは、何だったんだろう。
なんか嬉しそうに、そわそわするクーであった。
残念ながら精霊王では調整も何も出来ないので、このままクーは放っておく。
明日からの旅に備えて準備に掛る。
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6人の山賊らしき男たちが、ユニー達のテントに近付いてくる。
「ここだぜ、見ろよ大きなテントだな、それと外で食事の準備をしている女、上物だぜ」とユニーを胸の辺りをみて言っている。
「テントの中にも女が居るようだし、あの大きさのテントであれば相当金目のものもあるぞ!!」
「俺たちは付いているな」
「貴族とかだと腕が立つか侍女かもしれないから、いつもの様に4方向から狙うぞ!!」
ユニーもこのことには気が付いていた「アクリスが騒いているな……、でも、そんなに強そうな感じもしないから前に襲ってきた奴らではないか。」
山賊らしき2名が「お嬢さん一緒に遊ばない」とか言ってきた、
「間に合ってます」と言い「お帰りください」と言い放っておく。
「そうは行かないんだよ」と言って2人が正面からユニーに襲い掛かる。
「アクリス、私を支援をして」と呟くと体が勝手に動き出す。
正面からくる左手の男のミゾオチを攻撃する(この時は弱めてあるが手には雷を纏わせてある)、一撃で男は気を失う。
左の男にはそのまま回転しながらヒジウチをくらわせる(こちらも雷をまとわせてある)。
一瞬で2人が倒れる。
その後左右の2方向から男が来るが、回転をしながら攻撃しいく。
シェリルがテントの入り口から顔を出して何事かと様子を見ていた。
最後の2人も走って追いかけて倒してしまった。
とりあえず簡単に6人を倒した、男たちはしばらくすると気が付いて逃げて行った。
捕まえても処理に困るから良いかなとか思っていたが、これはダメだったらしい。
「ユニーは強いの~」とシェリルが言ってきた。
「わしも槍さえあれば、あんな奴ら簡単にやっつけるのだが....」と呟いていた。
「槍ですか、私たちと別れてからのこともあるので、護身用に槍を準備しましょうか?」
「出来るのか、普通の槍でもありがたいのだ」と嬉しそうなシェリル。
「シェリルの槍って、普通の槍じゃないの?」
「持っていたのは、大聖女の作った『国宝の槍』だった、やつらに連れ去られるときに無くしたのだ」
「私たちの責任だね、同じものになるかどうか分からないけど作ってみましょう」
「どんな形だった....」とインタビューを始める。
左腕に聖気光が集まり槍の形になる、シェリルはトンデモナイものを見るように驚いて声も出ないようだ。
「こんな感じかな?」とかいうと「うんうん」という驚いて言葉少ないシェリル。
「それでは一旦この形で止め術式を槍に埋め込んで見るのでチェックしてみて」
止め術式を埋め込むことで、聖気光は「槍の形」で固定化する。
シェリルは槍を持ち「えい」と気合を入れると槍はシェリルの思っている大きさ、形に変わる。
どうやら聖女のための武器らしく、聖女の聖気光により聖女の体の一部となるようだ。
そのあたりにある岩をジャガイモでも切るかのように裁断するシェリル。
「恐ろしいほどの切れ味だ、前の槍など比べ物にならない」と言うと戦神楽を舞い始めた。
舞いながらの槍の攻撃は鋭く、敵の攻撃もしなやかに流し避けていくのが分かる。
「強くなるために戦神楽を舞う」という意味が分かるような気がする
しかし本当に何度見ても美しい舞いである。
そして驚くべきことにシェリルは、本人は意識していないようだが、左に聖痕の力を使った。
槍は、穂の無い、ただの棒になり、中心から2本に分かれ2本の棒になった。
「何時もはこうしてベルトに刺しておるのだ。」
「しかし、本当に『国宝の槍』と同じものを作るとは、ユニーは大聖女か?」
「何度も言いますけど、侍女です」と否定しておく。
「ちなみに、この能力はシェリルの能力のコピーなのでシェリルにも出来るんですよ」と一言追加する。
それを聞いた、シェリルは物凄く近づいてきて「本当か?本当なら、教えてくれ」と迫ってきた。
また今度ねと説得して、今の最重要課題である、出発準備に掛る。
予想外に時間を取ってしまった、明日の出発は夕方くらいだな。
シェリルはつまらなそうな顔をしたが、最後に「そうじゃ、悪人を捕まえたなら、『ユーラザリン』の居る『公安組織JUST』へ送れば良かったのじゃ」と話してくれた。
「『ユーラザリン』って誰?『公安組織JUST』って何?」この世界のことはまだまだ、知らないことが多いようだ。
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逃げ帰った山賊たち「いや~あの女、強いな」「それより見たか、ソルア王国の紋章を付けた女がいたぞ、たぶん王女だ」
「ソルア王国の王女は『国宝の槍』を持っているらしい、これが手に入れば、俺たちが一生遊んでいられるくらいのお宝だぞ」
「近くで腕の立つ奴を10パーティほど雇ってこい、十分元が取れるから」
などと悪だくみを始める。
次回、120人 対 2人+1羽 …… ご期待ください。