表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
侍女の事情もお察しください  作者: 魔茶来
出会いの章
8/24

出会いの森編 聖魔女ユニー

昨晩は教育のお陰で寝不足だ。

回復魔法は使わない、これはこれで良い、そう寝不足を認識することも大事だから。


昨晩ついでにシェリルのために前の世界に存在した「車いす」を作成した。

木で工作したのでクッション性は低いのが難点だ。


早速シェリルには座ってもらいました。

「これが車輪を回すハンドルでしょ、それとこれはブレーキ、例えば片輪だけを回せば右や左に回れます、それと停止時に使う車輪止めです。」といった感じに簡単に操作方法を説明する。

「なるほど椅子ごと移動するのか、ユニーは頭が良いな」とか言われるが、私の発明でもないので照れ笑いしておく。


簡単な操作が出来るようになったところで、お嬢様のところへシェリルを連れて行く。


「お嬢様、襲撃の件、大変申し訳ございませんでした。」

「操られたとはいえ襲撃者の一味として襲撃に加わってしまったこと申し開きもありません、またそのようなことをしてしまったにも関わらず、命を救っていただき感謝いたします。」

「どうお詫びとお礼をすれば良いのか分かりませんが、出来る限りのことはしたく思います」

「また、これからは生きて恥を晒してでも、無くなったな仲間や家族たちに対して責任を出来る限り果たしていこうと思います」と丁寧に感謝とお詫びを言葉にしていった。


お嬢様は「お詫びもお礼も必要はありませんよ。」と答えると、

「どうしてもと言うのであれば『ユニー』の友達になってください。」と軽く返していた。


しかし、私には大問題がある「旅に出なければならない」ので準備中であるが、シェリルをこのままにはしておけない。


森の中、道のりは険しいし送っていくにしてもシェリルの家までの距離も分からない上に、私たちはいつ襲撃されるかも分からない身の上だ。


「治すしかない」……それが、ユニーの結論である。


『欠損部位を治す』それはこの世界では不可能なことの一つであるらしい。

その上、今の私に分かる知識レベルでは未分化細胞を作り出し細胞を増殖させれば何とかなる程度の知識しかない。


考えてみれはIPS細胞や未分化細部を使うのは良いとして育てるというフェーズが必要である。

「赤ちゃんの手」が出来ても、今の体に合わないだろうし、現状の体に合うサイズのするのに数十年も掛るのであれば本末転倒である、最初からシェリルを抱えてでも旅に連れ出した方が良いのではないだろうか?


魔法と回復薬のみに頼る、現状のままでの解決は難しそうだ。


「『聖気光か』……『癒しの力らしい』、回復魔法との併用ができないだろうか?」と呟いて、その晩の自由時間に再度思索していく。


「そのまま、掌に出すのでは危険すぎて取り出せない。溜めたものを危険のない程度の濃度で広範囲から取り出す、その取り出し物を減少させることなく掌に集める、この時術式を通すというアイデアならどうだろう……」

「しかし魔法の術式が聖気光にちゃんと作用するかどうかは分からないし、そんなことが出来るのか、……そうだ、……いやいや、……そうか、……いやいや、……その手があるかも」


と思いついたら吉日である、早速、裁縫に掛る。


「材料はローブに使われる聖気光に対して絶縁体になる生地と反対に導体になる生地が保管庫にあった」

「この生地で長手袋オペラグローブを作り、導体生地を糸状にして、まるで模様であるかのように掌に誘導路を作る。」


早速着込んで聖気光を腕全体から発散させてみる、発散された聖気光は導体である糸状の繊維を通して掌に集まる。

「これなら、ほんのり温かい程度で済むようだが純度と集約度は高くなっている。」


次に聖気光に回復魔術と同等の術式にて通してみた、回復魔術と同じような効果があるがそれ以上に細胞に活気を与えることが出来、細胞分裂や成長を促進する様だ。


シェリルの左腕にある「聖痕」と呼ばれる術式が記号化したものが聖気光を制御しているものらしい。

術式だろうと記号を何度も見たが回復系とは思えなかった。

とりあえず真似して模様を左手の長手袋オペラグローブの手の甲に刺繍しておく。


この状態で、残った時間を利用して自分の髪の毛から細胞を取り出しいろいろやってみる。

魔法が使えるのでIPSや未分化細胞の作製や分析は楽にできた。


そして治療方針が決まった。


名付けて「薄膜成長法」である。


手法的には簡単である、CTスキャナのように薄膜の輪切りを作り並べていく手法を採用する。

ベースになる薄膜を溶けてしまう材質で作成し、その上に中心から数ミクロンという間隔でスパイラル状に溝を作成する。この溝に同じく数ミクロンおきに、未分化細胞を修復する遺伝子をセットして定着させる。


この薄膜を中心に穴をあけ溶ける糸を通し、これらの薄膜を繋ぎ並べていく。

全体が繋がると、薄膜の間に隙間はあるが修復する元の手のイメージが見て取れる。


細胞は自信の細胞の複製と隣の薄膜との間を補うように成長していくことになる。


最初は、薄膜自体も最初は透明であるが、だんだん薄膜全体に細胞が広がる。

そして、薄膜は薄切りハムのように少しずつあった、隙間が時間と共に、だんだんと無くなって1つの腕や足になるような感じだ。


腕の端から指の端まで、輪切り状態なので大きさは小さ過ぎず大き過ぎず、適切な大きさに成長するのだ、少なくとも端っこだけ「赤ちゃんの指」とかいう不具合はない。


血液や栄養は血管が使えないので、全体を魔法で包み、中に培養液に漬けてある

この方が細胞全てに栄養や酸素がいきわたる。


もちろん、未分化細胞の作成には聖気光と、細かい作業の大半はすべて魔法で行う。

それは、細か過ぎて手作業では出来ないからですが、右腕と両足に対して、結構な枚数を準備するため時間が掛かるところが難題だ。


翌日のお昼にシェリルに治療を受けるか聞いてみた。

「シェリル、腕と足の治療をしたいのですが、100%の自信がないのです。」と本当のことを話した。


するとシェリルは簡単に

「私の命を助けたのはユニーだ。」

「この体はユニーの好きにしてもらって良い」


「ただし、私に生きて責任を取れと言ったのは『ユニー』だ。」

「だから、私を生かすことが条件だ」


と答え承諾した。


「責任重大ですが、精いっぱい頑張らせていただきます。」と答え、今晩手術に掛ることにした。


各部位の薄膜の作成には、その後すぐに取り掛かった。


ここで一つ過ちを犯していることに気づかず。。。。

そう、自分の能力がどの位かも考えず、腕のみとか、右足だけとか修復を段階的に行わず、全てを修復しようとしたのだ。


麻酔は無いので代わりの「眠り魔法」で眠りについてもらう。


事前準備した作成した薄膜は、すべて例の保管庫で保管してある。


準備した薄膜を丹念に数ミクロン毎に並べていく、この作業(つまり成長をさせるまでの処理)は魔法で、元の体との拒絶反応がないように成長させるために聖気光で処置していく。


細胞は分裂と成長をしていく、成長することで最初は薄膜内の細胞が薄膜上に接合し、その後薄膜同士が接合していく。

次第に透明だった薄膜や各部位は不透明となり白く見え始め、やがて1つの部位へと育っていく。


3つ部位の細胞の成長を促すとなると、聖気光が相当量必要となっており、腕が焼けるように熱い。

対応策として魔法で外部から冷やすが、どうも追いつかないで火傷の状態になっているようだった。


「熱い……痛っ……」とても辛い状況だが、今やめるわけには行かない……

多分、腕の火傷はだんだん酷くなっていくだろうが、まだまだ時間は掛る。

最悪、終わるころには腕は真っ黒こげになっているかもしれない。


実はその時シェリルの眠りは少し浅くなっていた、薄目を開けるシェリル、目の前には「熱い、痛い」と囁きながら、腕には血がにじんだオペラグローブに、その上に湯気なのか煙なのか出ている状況である。

まさに『ユニーが修羅のごとく治療をしていた』「そこまでして……」と思いながら再度夢の中に落ちて行った。


継続しての痛みの中、ユニーは悩んでいた、「もし腕の火傷がこのまま酷くなった場合、聖気光は出せなくなる。」

「そうなれば治療はそこまでしかできないことになり、失敗することになる。」

「とりあえず右手が再生した段階でいったん止めるか?、しかしそうすると不完全な足は再度切断だな。」

なぜ腕のみとか段階的に治療をしなかったのか後悔したが遅かった。


そう思いながらも、右腕の修復が終盤になり薄膜状態の血管のすべてが繋がる。

そして、血管へと血液が流れ込み、シェリルの右腕に血の気が戻る。


やはり「もう限界かも……」とユニーが思い、あきらめようとして時だった。


シェリル右腕の小さなホクロ(のようなもの)が大きくなって聖痕になった。

そして光に包まれる修復中のシェリルの右腕と両足。

シェリルの右腕の修復とまだ血管すら戻っていなかった両足の修復も一気に完了し始める。


そしてユニーの右腕のオペラグローブの甲に同じ聖痕模様が模様としてコピーされ、ユニーの両腕にも光がまとわりつき、そして火傷を癒していった。


どうやら、自分の浅はかな考えから、窮地に陥り「助けている相手」に「助けてもらった」らしい


その後シェリルの右腕の聖痕は、元の小さなホクロとなっていた。


一安心したが、実はまだ、やっておかなければならないことがある。


神経系統は、薄膜成長法なので、そのままのはずなので動かすことは問題なくできる。

でも、シェリルには悪いが、修復した腕と両足は筋肉や腱が、まだ十分に伸縮できる状況でないのだ。

リハビリなしで動かされると困るので動かせないように縛り上げておく。


「ごめんね、明日の朝、驚くだろうな。。。」


-----◇-----◇-----◇-----◇-----◇-----◇

翌朝、朝から素っ頓狂な声で目覚める。

喜びでいるような、泣いているような、縛られて困っているような?という不思議な声である。


すぐに傍に走って行って伝える。

「まだ動かしてはダメよ、腱や筋肉が伸びてしまったり切れたりするから、リハビリが必要ですから縛らせてもらいました」


縄をほどきながら「まずはゆっくり曲げたり、伸ばしたり、急に大きく伸ばしたり曲げないでください」と説明しておく。


シェリルは「本当に手が、足が……、あなたは女神なのか?」とか言うが、「そんな訳はない、侍女です」とあっさり否定しておく。


彼女シェリルも疲れていたのか、何時もより多く食事をとりながら、「ところで、リハビリとやらは、どのくらい掛るのだ?」と質問する。

「予測ですが、魔法で支援しながら、たぶん3週間はかかるかな」と適当に答えておいた。


リハビリをその日から開始し、腱や筋肉の状況を見ながら魔法も使って負荷調整をしながら進めていった。


その日、ムーシカの時間は、楽器演奏のような細かい動きをするのは良いと思ったのでシェリルも楽器を持って演奏してもらったが、シェリルも楽しそうだった。


今日は大失敗の日にならず良かった、そして本当に大変だった。

本日の自由時間と訓練時間は「聖気光」を研究する日になっている。


実はクーのことも忘れていない、「さっきもクーがなんか変だった、お嬢様と世間話している、ほぼ100%意思があると考えて差し支えないだろう、ということは微調整も何も出来ないだろう……」


ちなみに「聖気光」の研究成果であるが、攻撃魔法に匹敵する力を手に入れたと言っておこう。


まず訓練時間に聖気光を色々試してみた。

まずはシェリルがやっていた「そのまま飛ばす」(本人は投げていると言っていた)がこれが結構な威力がある。

問題はシェリルの用に連続利用はできない、それなりの圧縮した光を連続的に放出するには発熱が大きくなり長時間は無理である。

たぶん連続放出する場合20秒までだろう。


もっと有効なものが判明し、新しい攻撃手段を手に入れた。


解析中の術式図形である左手の聖痕に関してであるが、どうやら兵器、武器に関する創造の術式のようだ。

この術式は、単純に言えば聖気光を圧縮したり、イメージした形に変えたりすることが出来る。

例えば、聖気光を単純に圧縮して固めたものは超高密度の弾になる。

また、そのまま剣の形をイメージし圧縮すれば剣になる。

この剣も聖気光という光子なので、その剣の刃は原子レベルより薄くなる。

つまり、通常の原子で構成された物資は全て切ることが出来る。


この能力を私は2本目の剣と弓を基本的に利用することにした。


「セントアーチェリー」と言えば弓が出てくるように魔法効果と言葉を接続する。

そして矢は聖気光を固めた矢であり物凄く硬く、幾つでも聖気光がある限り作成できる。


それと魔法との混合攻撃も可能なことが分かった。

例えば聖気光でセントアーチェリーと叫び「マルチターゲット」と言えば一気に20発以上の弾(矢)を発射できる、それを魔法で目標コントロールすることも可能であった。


つまり複数目標を攻撃できる強力な武器を手に入れたのだ。

私も、それなりにチートな能力になっているようだ。


さてもう一つの謎である、右腕の長手袋オペラグローブにも聖痕刺繍出てきており、癒しの能力も向上している。


そういえば2つ聖痕があれば大聖女と言われるらしい。


では私は「大聖魔侍女」になったということだろうか……

---------------------------------------

翌日、招いてもない客が来た結果この世界の公安組織と、その利用方法を始めて知ることになった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ