出会いの森編 目的
『目的』それは始まり、全てが始まりすべてを飲み込んで突き進む。
西方面部隊が全滅した報告がアルメシア指令の元に上がってきた。
もちろん、西方面部隊が全滅したため、記録球に記録された西方面部隊の襲撃記録からの報告であり、何も収穫がないことを報告してきた。
この報告を、アルメシアは予言者クラミンに報告する、
「西方面部隊は全滅した模様です。
また、アクリスと思われる神剣が顕現しました。
侍女が持っていたと思われるアクセサリーが、侍女の手により神剣化したようです。
アクリスはショートソードになった模様です。」
予言者クラミンは報告を聞き終え、次の行動を考える。
「まずは神剣『アクリス』が覚醒し一安心だが長かったな。」
「まだショートソードということであれば、まだまだ完全覚醒とは言えないな。」
「もうすこし刺激が必要かもしれないな。」
「しかし奇妙な取り合わせだ、『侍女』か……、『操者』も一緒に現れるとは、探す手間が省けたな。」
アルメシア指令は「次なる襲撃でアクリスは必ずや確保いたします」と約束しようとしたが、クラミンが拒否する。
「襲撃の必要はない、なぜならアクリスと操者が一緒なのだから、あとは完全覚醒に向けて、神剣アクリスへ刺激を与えてやらねばならん。」
「そしてアクリスが完全覚醒すれば、操者の意識はこちらに向くだろうから、こちらに迎えればよいのだ」
クラミンは説明後「しかし『巫女』の傍に『操者』が現れるとは、これも因縁か……」と呟く。
アルメシア指令は報告があったもう一つの話をクラミンに報告する。
「それと龍具のひとつが目覚めたようです」
その報告を聞いてクラミンは
「そろそろとは思っていたが600年ぶりに龍具が目覚めたか?
その割には龍王3名の反応には違和感があるが……
丁度良い、そのままにしておけば、やがてアクリスへの刺激となるだろう!!
好きに国盗り物語を始めさせるが良いわ!!」
最後にクラミンは
「『覚醒の時』が来るまで、ゆっくり高みの見物を決め込むとするか。」
というと、眠りについた。
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今回アクリスの能力には助けられた。
しかし毎回、狂戦士になるわけにもいかない。
だってそうだろう、関係の無い人が沢山いる所での戦闘になった場合犠牲者が多数出てしまう。
よって、訓練場で訓練を開始するが、アクリスに任せて戦闘訓練をすると追従するのが精いっぱいである。
それでも身体強化や回復魔法を駆使しながら訓練を続けていけば、筋肉もついてくるし強化魔法自体が向上するので、だんだんと追従できるはずだと考え相当無茶な訓練をしている。
少し休んで、あの女子が使った光の技を考えてみる「聖気光」という力だそうだ。
「マリアス、『聖気光』とはなんですか?」と問いかけると、マリアス(チューターシステム)が答えてくれる。
「自然界の光は、例えば水にも『ただの水』と『聖水』があるように力を持つ『聖なる光』があります。」
「この自然界にあふれている光の中から聖なる光のみ集めて集約することで魔力並み、もしくはそれ以上の力を出すことが出来ます」
「光はどこにでもあり、集めるというイメージだけで、集めることはできますが、普通の人が集めようとしても周りの余分な光を巻き込んで純度が下がるし、光の圧縮が出来ないので密度を上げることもできないのです」
なるほど光を集め、その中から少し異なる光を集約するのか、早速、私もやってみる。
やってみると特別な光は集まるのだが、密度が上がらず、純度は通常の空間での光の純度から変わらない。
そこで、集めることを魔法で制御しようとしたが魔力と相殺する力であり魔法では制御できなかった。
結局、あの時の女子のように一瞬で集めて使うということは不可能である、さすが聖女様の能力はマネできない。
しかし、集めて放つだけであれだけの攻撃力なのだ、あきらめきれない。。。
次に、集約度と純度を高める意味で魔力のように溜めることを考える。
ただし、魔力と同じところに溜めると相殺して魔力は減り、聖気光は無くなるので意味がない。
これは制御不可能だと諦めかけるが、ふと、マリアスが使っていた魔力領域があることを思い出す。
現在はたぶん魔力は空であると思われる、それと、記憶の時のように魔力領域の入り口からなら、私から魔力領域へ流し込めるはずと考えて、やってみる。
思惑通り「聖気光」を溜め始めることが出来たが、たぶん溜まるまで少し時間があるので、戦闘訓練を再開した。
訓練後に確認すると相当溜まっていたが、溜まった聖気光は純度や密度が高いのだが、魔力と同じように使おうとすると、体から出た瞬間に体に火傷が出来るほどの熱と刺激があり危険なものだった。
「苦労したのに使えないのかな、というか溜まっているのに使えないとは、溜めたものはどうするんだよ……」
訓練を終えたのち、訓練場から出て、少し女子の様子を見に行く。
女子は、「穀物を柔らかくした『おかゆもどき』」を作って持っていくと、すぐに食べてしまうほどお腹がすいていたようだ、もちろんお替りを要求してきた。
また、先ほどと違い元気に話をするようになっていた。
そして「シェリル」という名前を教えてくれた。
「やっぱり効くのね『最上級回復薬』」とか軽い話題にするために話をする。
「『最上級回復薬』……それを、どうやって手に入れた!!」とシェリルが驚いたように聞いてきた。
「これは、収納の中にあったの」と簡単に答えると……
「私は、これが正教会本殿の保管庫に大切に保管されているもので、この世に1本しかないと思っていた」
「『最上級回復薬』大聖女のみが作成でき大聖女が生前、正教会に保管を依頼した貴重なもので、その効果は絶大であると云われているものだぞ........」
「そうなんだ、もう1/3くらい使ったかな……」とまた軽く答える。
シェリルは思いつめた顔になって……
「信じられない、あの時……これが欲しくて正教会へ分けてもらいに行った」
「私たち3人の友情に蟠りのひびが入ったあの時、サリアとクリシュの悲しい顔を見ていられなかった……本当に欲しかったんだ。」
「だが……、最上級回復薬は『使う人』『使う時』『使う相手』を薬自体が知っているらしく、それ以外の者では持ち出したり使うことは全く出来ないものだった。」と涙をこらえながら話をした。
簡単に使えた私としては、軽い話題程度の話だったが、この薬の「罰があたる」という注意書きを思い出した。
前から聖女の能力で薬を作るとは、実際には能力自体が薬に複写されているのではと考えていたが、どうやら、それ以上に聖女の願い・思いなんかも薬の中に入っているようだ。
聖気光で作成されている回復薬……、聖気光というのは指令や思いを仕込める1つ1つが光子レベルの小さな精密機械みたいなものだろうか?
シェリルは、「一度お嬢様に謝りたい」というので、明日にでも会ってもらうことにした。
今日は休んだほうが良いと言って、眠ってもらうことにした。
そういえば「おかゆもどき」ではあるが一度にお替りするほど食べて良いのだろうかと心配になったが、「本人が欲する」のだから大丈夫だろうと気持ちを切り替える自分の仕事に戻る。
さて今日の自由時間である。
実はクーの微調整をするつもりだったが、襲撃があるといけないので急ぎ、次の襲撃に向けて準備をするための時間となる。
まずは記憶を頼りに「あれ」を作り始める。
少し伸縮性と柔軟性のある布や肌触りの柔らかい布を使って試作品を作成。
試作品を胸に付けてみると収まりは良かったし、それに背筋も伸びてなんか気持ちが引き締まるのであった。
次は戦闘服なのだが、元の世界ではそんなものはなかった、迷彩服でも作ればよいのだろうか?
その時、そうだと思いシェリルの着ていた服を参考にする。
ちなみに、今はマリアスの着替えの中から寝間着に近いものを着せている。
彼女の服は回収したときのままで、破損が大きく相当ひどい状態であったが、分かる範囲で修復するために、分解し細かく分析しているのだ。
女の子の服を分析とか、別に変な趣味でやっている訳ではありませんし、今は私も女の子ですからね。
この服を参考にいくつかの案を作成し、先ほど作成したブラと下に着るシャツ、胸当てや腰当(短いスカートに見えるかも)と半ズボン?、靴下……とかいろいろ準備した。
収納魔法用のポケットは戦闘時にポケットが開けっ放しというのも機能的にどうかと思った。
よって魔法陣の書かれた12センチほどの楕円形のプレートをベルト右に付けた。
イメージして、ひと叩きすると物が出て来たり収容できたりである。
それと、プレートの周りに魔石6個を付けてあり、魔力切れの時にこの魔石から魔力を回収するのだ。
アクリスはショートソードになっているので左側に鞘を装着した。
最後に、この世界の靴はなんか、底とか側面が薄く走ったりするのに向いていない。
そこで前の世界ので使っていた靴を出来る限り再現してみた。
一度すべてを着用してみる。
う~ん。、上のボタンが2つほど締まりにくい、ここまで大きな胸……、ゴホッゴホッ。
さて着用してみると、全体的にまとまった感じで戦いやすそうだった。
一度訓練場に入り、訓練として精霊戦闘人形と模擬戦闘をしてみる。
柔軟性や強度のチェックをしてみたが、これで良さそうだ。
最後に魔法で「フォームチェンジ」という言葉でいつもの侍女服から変身できるようにする。
もちろん侍女服に戻るのも「フォームチェンジ」で瞬間で戻るのだ。
さて、眠ることの重要性は知っている、そろそろ寝ようかと思った。
その時、久しぶりにマリアスの声が聞こえてくる。
「長きにわたって、よく頑張りましたね年齢的にも成長したようですね、準備が整いましたので重要なお仕事をしていただきます。」
あくまでも準備されたものらしい、数年たっているという話しぶりですが、実際には数日しか経っていない。
話の内容からすると、なにやら重要なお仕事の要請のようです。
「これから旅費を稼ぎながら、お嬢様を連れてある目的地まで旅をしなければなりません。」
いきなり旅をする……と言われて驚く。
なるほど、今まで、森から出る話が出なかったのは見かけが幼い少女だったからだ。
どうやら、これから旅をする条件として、ある程度の(大人な)年齢に見えることが条件だったようだ。
この世界では、15歳で成人ということもあるが、やはりそれなり年齢に見えないと交渉事ができない。
たぶん、子供2人に見られて世の中では暮らしてはいけないのだろう。
「それでは、旅の教育を始めます」といって教育が再度開始される。
その後も次々と教育メニューが実行される
「旅の常識を教育いたします……」
「お金の知識、お金の稼ぎ方、薬草や収穫した動物の売り方……」
最後に、やっと、どこに行くか目的地が説明される。
「行くところは、お嬢様の『お約束の場所』だそうです。」
「名前は『幻の深淵』と呼ばれる、星が奇麗に見える地図には載っていない場所だそうです。」
「お嬢様がご指示なさる場所へ向かうことで、やがて着くということですが、私も何十年という長い期間探してきましたが、辿り着けていません。」
「目的地まで、お嬢様を無事お連れしてください」
内容は了解したが……
なんか話がおかしくないか?
お嬢様の年齢を考えれば期間の表現が大げさではないか・・・
それとも、お嬢様はエルフか何かで長寿命なのだろうか?
ここは異世界だ元の世界とは違う、そういうことがあっても不思議ではない。
当初からの疑問であるが、「一体全体お嬢様はどういう存在」なのだろう?
教えてお嬢様……