出会いの森編 赤(エイベル)と青(ラムリス)
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
ユニーが限界に近付いているようです。
どうなることやら。。
回復魔法により眠らなくて済むので作業を開始する。
使える生活魔法で、森から拾ってきた木切れの加工ができる、生活魔法と言っても、切ったり、削ったり表面加工したりと、いろいろな「出来ること」を総動員すると結構DIYが可能になる。
今回は、ムーシカの時間のために「シンセサイザー」を作る。
ご心配なく電子楽器でなくともできます、だって、音はもともと空気の振動ですから、振動を魔法で制御すればいいのです。
というわけで前の世界の楽器のなんでもMIMICになる、シンセサイザーを作り始める。
1.まず当たり前ですが鍵盤が必要です、最低限の数にしますが、鍵盤操作の強弱により風魔法で音階発生と音の強弱をコントロールするオシレーターを作成(とりあえず、和音が欲しいのでオシレータは3VOICE分作る)。
2.次に、エンベロープ・ジェネレーター (アタックタイム、デッケイタイム、リリースタイム)これは時間制御と包括振幅制御を各パラメータでスライドできる木片によりそれの位置を魔法で感知し制御します。
3.忘れてならない機能は、フィルタ制御(フィルタを使えばいろいろな音の細工ができる、例えばホワイトノイズから口笛を再現できる)
4.振動に変調を加えるための機能(周波数変調器、振幅変調器)
これはビブラート、トレモロと、マンダリン効果とかが付加可能
5.音階以外の音源も追加
風魔法によるノイズ発生器
ピンクとかホワイトノイズの発生、パーカッションやドラム音発生器
というような機能部品を魔法術式を組み合わせ構成する。
最後に魔法駆動用に魔力を蓄積した小さい魔石を組み入れる。
そして鍵盤を並べた本体の上に、必要なエンベロープや設定を、12個までレジストレーションできるようにしたボタンを並べた細長いブロックを配置する。
見た目はポータブルキーボードに見えるが、通常の机上で利用する以外に、このネックブロックをネックとしてエレキギターのようにして立って奏でることも可能である。
早速、ジャズ系を弾いてみる、大丈夫だ、音は外れないし、思い通りの音が出る。
明日の夜「ムーシカの時間」は私が元の世界のクラッシックを演奏することにしようと思う。
お嬢様は、私の元の世界の音楽は初めてだろうから、無難なクラッシックでと考えたのだ。
もう、明日ではなく日が昇ってきたから今日の夜だね。
やはりすごい、眠らなくても朝から快適に仕事が出来そうだ。
(少なくとも、この時はそう思っていた、今思えば最低だが……)
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私の一日は、お嬢様のお世話と魔法の訓練、明日の準備、少しの空き時間に趣味の時間ということで1日のリズムが決まりつつある。
(最近、食糧確保という仕事を入れなければならないと考えてはいます。)
実は、侍女になってから約1週間ほど時間が経った。
襲われることもなく同じような平穏な日々が続き、無難(?)に侍女職を続けた。
一日目から、上司にいろいろ指導されながら、仕事をこなしてきた。
しかし既に亡くなっている上司が私を支援できる時間は限りがあるはず。
いつまで支援してもらえるのだろうか?
最近、上司の声があまり聞こえてこないのが少し心配であった。
しかし、なんと「チューターシステム」へのアクセス方法が少し分かった。
私への教育の一環としてのFAQ的な質疑応答を準備してあったのだろう。
「マリアス、教えて」と言うと次に「何を?」と聞いてくる。
そうです、完全にチャットボットの拡張機能である。
お陰で、いろいろなことを教えてもらえる。
本当は、マリアスの声を聴いていると安心する。
しかし困ったことも発生している、一番は「中身は男」ということは、実はストレスになったりする。
例えば、お風呂(水浴び・湯浴み)である。
当たり前であるが、お嬢様は、洗浄魔法以外に川や湖で水浴びをご所望される。
もちろん洗浄魔法とは違い、水は体や肌には良いだけでなく、気持ちがよいことも事実ではある。
しかし侍女として、お嬢様の体を洗ったり、拭いたりとそういう行為は(意識していなくても)中身、男としては複雑である。(というか顔が赤くなって。。。、いやそれは何でもない。。)
この1週間、本当に眠れない最大の原因は、1週間経っても攻撃魔法に進展がないことである。
今襲われれば、マリアスを倒すほどの敵である、ひとたまりもない。
よって攻撃魔法の訓練は殆ど体を酷使するものであるが、進展は芳しくない本当に不安である。
進展があったものは
・魔力量:
例えば訓練の結果として、魔力蓄積量は増大する。
簡単に言えば、食べ物は沢山食べると胃が拡張するのと同じである。
魔力量は使用量の多さに合わせ、限界はあるが増加するようだ。
相当無茶をしているので、マリアスの蓄積量の4倍程度に増えているようである。
・防御能力:
魔力量の増加により、防御魔法のみは強化出来ている。
・身体強化
身体強化の魔法は当初からうまくできている。
スピードや破壊力は高くなっていると思うが、武道を習ったことがないので、戦闘力が増大したとは言えない。
この辺りに、すごい武道の先生が修行でもしていないだろうか……
・治癒能力
襲われること前提なので、訓練は相当無茶をしている。
よって、ケガなど訓練の時には茶飯事であるし、骨折や腱が切れることなどもある。
回復薬や回復(治癒)魔法等は相当活用した。
要は魔法と言っても「万能」ではない。
回復薬も治癒魔法も原因をイメージし適材適所で使わなければ、役に立たないことが分かった。
回復の主な力は、体(生体)の生命エネルギーなのだ。
前の世界の保健体育や生物の授業程度の知識だが、体の知識等役に立っている。
襲われる恐怖に対して、今の私にとって唯一の気晴らしになっているのが、作ったシンセである。
暇な時間を見つけては、前の世界の曲を演奏する。
ジャズ・ポピュラー、ロック、ひどく落ち込むときはデスメタル調の曲なんかを演奏したりもした。
たぶん曲が珍しいのか、お嬢様も聞いていることが多い。
でも、デスメタルもお嬢様も聞き入っていたりするのだが?
この年齢の少女に聞かせてもよいのだろうかと疑問になることがある。
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話は戻るが、恐怖というストレスは、実際には眠いはずが怖くて眠れないのだ。
そこで私は、回復魔法を使って眠気や体のだるさをなくす。
しかし微熱をいつも感じ、眠気はないが変な高揚感はある。
本来、人の体は、眠ることにより、いろいろなリズムを保っている。
体の回復や病気への対抗のみではなく、情報の整理や精神の安定を図るために必要なことをしている。
それを無視して回復魔法を使って、体のみを回復し続けると、体は微熱を持ち続け、精神は限界に達し耐えられなくなる。
私の眠らない理由が精神的な不安から来ているのだから、精神的な崩壊をもたらすまではさほど時間が掛からなかった。
それは平穏な日々の中で、突然最悪の結果となって表れた。
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その日、黒い影が「そこ、ここ」に隠れているような気がした。
そのうえ、あちこちから、笑い声のような声が聞こえてくる。
怖くなって叫び声をあげ、走り回っていた。
お嬢様のことも気に掛かるが、そちらにも黒い影がたくさん見える。
「お嬢様お逃げください」、「早く私の後ろに隠れて」とか叫けぶ。
そう、幻覚が見え、幻聴が聞こえる始める。
私は叫び声をあげながら走り回り、うずくまる、その後、また怖くなり叫び声をあげ走り回る。
とても不安で、黒い影があちこちに見え、笑い声が頭の中に響き渡る。
その上、景色はゆがみ、足はもつれる、その恐怖から、私の叫び声は、より大きくなったようだ。
叫び疲れ、口の中が乾き、声がかすれるが、それでも叫び続ける。
その時だ、お嬢様が私を抱きとめる。
なぜか、お嬢様が大人のように思える、これも幻覚なのか?
お嬢様の髪の毛が、青いストレートのロングになっている?ような気がした。
その時、お嬢様の少し大人びた「ユニー、ゆっくりお休み」という声が聞こえると、なにかに安心したのか眠気が襲ってきた。
それでもひとこと「眠るのが怖い」と呟いて、私はその後深い眠りについた。
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夢を見た、いや誰かの記憶を見たのだろう。
最初はマリアスの記憶だと思った、しかし、マリアス本人が途中から出てこなくなる。
たぶん、この体が記録した記憶だと思う。
それは最後に襲われた時の記憶らしい。
マリアスが呟く「今日はどうしたというのだろうか、とんでもなく大所帯で襲撃してきましたね」
人数は60名くらいであり、ものすごく攻撃は激しい。
しかし、マリアスは魔法の天才なのか、防御魔法でうまく防いでいる。
身体強化をした体で、お嬢様を庇い、自分たちを防御をしながら相手を攻撃する。
その上、何という器用なんだろうか、攻撃魔法のみではなく捕獲魔法やトラップ(罠)魔法を駆使し相手の人数を減らしていく。
しかし、3名が正面から攻撃を仕掛けてきたと思ったが、実はそのさらに正面に隠れていた3名が即時攻撃を仕掛け、その間も、後ろから2名が攻撃してきた。
さすがに周りを何重にも囲んで攻撃されると防御魔法にも限界があり、防ぐことが出来なくなってマリアスは大きく攻撃を受けてしまうのだった。
それでも、「お嬢様大丈夫ですか」とお嬢様に気を遣う。
この体は深手を負い、歩くことすらできず、それでも攻撃魔法で、相手を威圧しつつ、お嬢様を守ろうとしている。
しかし次の瞬間、敵の剣がマリアスの胸を貫き、マリアスは倒れ、マリアスの声や意識がうすれ、マリアスの「お嬢様…」という言葉を最後に、体から反応がなくなる。
不思議なことに、肩につけているクロス=アクリスも一緒に失われたような感じがする。
その後は、倒れたマリアスの体が感じる、音と目に映る光景のみが記憶されていく。
お嬢様は、敵に捕まったようだ、「捕まえたぞ、覚醒の予言に間に合う」という声が聞こえ、「マリアス!!」というお嬢様の叫び声が聞こえる。
それは助けを呼ぶ声というより、マリアスを心配する声であるように思えた。
次の瞬間赤い光に満たされた、敵らしき者達から「「「神おろし」」」という言葉が発せられたが、それ以降は敵の声、いや敵の動く音すら聞こえなくなった。
少しすると、なぜか、お嬢様がこの体を抱き起す、お嬢様は大人びたような、少し違和感がある印象であり、先ほど同じような感じを受けたような気がする。
そう、目立つ特徴としては、髪の毛はショートで赤く、軽くカールしている。
お嬢様らしき方?は、「アクリスの導きに委ねたのね。」と言うと、涙が頬に落ちてきた。
声もやはり、お嬢様とは少し違う感じがした。
そして、だんだんとお嬢様の雰囲気が変わっていく、髪がストレート・ロングになって、青くなる、そういえば、眠りに落ちる前に感じたお嬢様の雰囲気に似ている。
青い光がマリアスの体を包み、傷口が塞がり体を癒していく。
マリアスの体が癒えていくが、マリアスの存在は戻ってこないし感じることもなかった。
光が消えると、いつものお嬢様を感じる。
あれ、この感じは知っている。
そうだ、周りの状況といい、私がこの世界で最初に目覚めた状況。
つまり、この後(どのくらい経ったかは分からないが)私が、この体を借り受けたのだろう。
その後夢の中で、何かに安心したのか意識が薄れ深い眠りについていく。
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夢(記憶)を見ながら、どのくらいの時が流れたのか、私は目覚めた。
お嬢様のベッドの上で、眠っていたようだが、そばで心配そうに、いつものお嬢様が座っていた。
お嬢様は、私が目覚めたことに気がつくと「ユニー、お腹すいたよ」と呟いた。
「申し訳ありません、お食事の準備をしますね」と答えて起き上がる。
何をしているのだろう、お嬢様を守るべき私が、あるまじき状態になってしまった。
どうやらお嬢様に助けられたのは、一度ではないようだった。
いつもの侍女の仕事を始めるのだった。
今回の件を反省し、今後は少しでも時間を作って眠ることにした。
回復魔法は決して、睡眠の代わりにはならないのだ。
まだまだ、侍女の修行が足りんな。。
赤と青、
結構重要な登場人物ですが、名乗っていないので分からないですね。
正体はだんだんと判明するという段取りです。