表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
侍女の事情もお察しください  作者: 魔茶来
出会いの章
2/24

出会いの森編 お嬢様とマリアス

いろいろあり、私が就職した職業は侍女職。


当たり前だが、私は侍女職は未経験者である。

侍女というと前の世界で考えれば、お仕えするのは王族や貴族だよね。

つまりお嬢様は王族か貴族ということになる。

しかし私はそのような高貴な方への付き合いはなかったし、付き合いができるとも思わない。


う~~ん、たぶん侍女なんて勤まるわけがないよな。

たぶん早期に首になるだろうと考えるが、そうなると実は浮遊霊か地縛霊、最悪はこの世から消えてなくなるのである。


ここは、誠心誠意お嬢様に尽くしていくしかない。


ちなみに、最初に光の中であった初老の上司が、マリアスだと思われる、声も着ていた服も同じだ。

さきほど、上司マリアスから侍女としての最初の仕事が指示される。


なぜか、安全を確保するために指示する場所に向かうへとのことである、なにか「安全でない何か」があるようだ。

指示に従いお嬢様を連れてあるき続け、森の奥へ、奥へと入っていく、暗くて寂しいところだ、熊とか狼とか、異世界というなら魔物でも出るかもと不安になる。


背の高さより背の高い草の茂みがあり、ここならと言われ、お嬢様に岩に座って休んでもらうように言う。

マリアスから「茂みに隠すように、テントを張ります」と指示される。


テント……、持ち物はほとんどなくテントはどこにある?とか考えていると、マリアスの声が頭の中で説明してくれる。

「収納魔法で格納庫に収納されているテントを出します。」


うん、やはり「異世界」だよ……「魔法……」、魔法が使えるらしい!!

しかし前の世界では魔法などない、つまり私は使ったことがない。

よって、どうやって魔法を使うのか想像もつかない。

現状では私には使い方すら分からないということだけは確かだ。


「ただし、私が収納したものは、私でなければ収納したものを格納庫からは出せません。しかしあなたには、私の体を貸与してありますので、私が収納したものでも、あなたは格納庫から出すことができます。」


なるほど人が勝手に出せると困るからね、というか「貸与」……やはり、この体を私が間借りしている状況であることは事実のようだ、首になると浮遊霊というのは本当に実行出来そうだな。。。


マリアスの説明が続く……


「私の体の状態ですが、魔法レベルと魔力量はそのままですので、今まで通り魔法は利用可能です。」

「ただし、あなたが利用するには、私が経験し学習してきた魔法を使うというスキルが必要です。このスキルは、同じ体ですが、私がアクセスできる記憶域にあり、あなたからアクセスは、できません。」


話を要約すると、一人の体に2つの心と、2つのメモリーがあるのかな?

体の半分が、私の管理外にあり、別の意識が管理しているとは信じがたい。


そして、魔法に関しては教育が必要であり、それが出来なければ、テントを張ることすらできないということらしいが、教育時間はどのくらいの時間が掛かるやら……


その後の、マリアスの説明では「同じ体なので、あなたの記憶域の入り口に、私の記憶メモリーを流し込めば、転写できるはずです、でも現在の私の力では限界がありますので、必要最小限の魔法力をコピー引き継ぎます、後は私が教育して差し上げます。」ということであり、初等教育はちょっと反則かもしれないが、一瞬で終わるらしい。


しばらくすると、流し込みが始まりマリアスの記憶域にある記憶メモリーが私の記憶域に入ってくる。


ちなみに、記憶メモリーと言っているが、そのまま記憶として留まるものと、記憶から知識に変わるもの、記憶から知識そして運動能力まで影響するスキルに変わるものがある。

結果的に、それほど多くはないが、なにか出来るようになったような不思議な感覚となる。


今の状況は実際に使わないと、使えるという実感や自覚と使える自信がない。


ということで、マリアスの指示に従い「魔法を使う」という実践をこなしながらの教育が始まった。


初期目的である、テントを張って行く。

収納魔法はすごい、私のメイド服のお腹の部分にある大きなポケットが、格納庫から物を出し入れをする口になっている。

ただし「携帯テント」とか名称を叫ぶ必要もないし、効果音もでません。


収納魔法の取り出し口よりも大きなテントを張るらしいが、実際にはポケットから出てくるものは大きくはない。

ワンタッチテントのように、丸い小さなフリスビー状のものを投げれば、広がってテントになる。

実に簡単に完成する。


しかし出来上がってみると、私のテントに対するイメージが変わるほどのものである。

大きなテントであり、内部は区分けされ数部屋になっている、ちょっとしたマンションみたいだ。

収納魔法の格納庫からお嬢様のベッドとかテーブル椅子等のインテリアを出し、リビングやベッドルームのセッティングをする。


「しかし、このテント大きすぎて茂みに隠しきれていないような気もするが、いいのかな?」などと考えていると、


「このテントは結界に守られていますので安全です、簡単に説明すると、魔力を蓄積した魔石により、広く結界魔法が働きますので、あなたが眠っても結界は維持され、内部の音や光、振動は外には漏れません。

居住性を高めるため、雪の中でも、砂漠の真ん中であろうと、暑さや寒さは遮断(断熱)することで結界内部は適温に調節されます。

もちろん外部からの簡単な攻撃であれば防ぐことができます、例えば、夜に野獣の襲撃にあっても大丈夫です。」


なるほど便利だ、でも魔石に魔力を蓄積してあるということは、補充する必要があるということであるが、逆に言えば魔力は魔石という電池みたいなものに蓄積できるらしい。


居住できる環境になったので、お嬢様を迎えに行く。

「お嬢様、お待たせいたしました、中でお寛ぎください」


お嬢様にテントの中で、寛いでもらっている間に食事の準備にかかる。

料理をする前に、自分の体をきれいにする、これは洗浄魔法で可能だ。

水や風呂が沸かせなくても、体だけでなく着るものまで「きれい」になる。


ちなみに食材は、収納魔法により格納されているが格納庫がいくつかの機能別に区分されて、多くの種類の食材が完全保管(時間保留保管らしい)にて収納されている。

その中から食材を保管できるエリアにある肉(肉というより動物の姿をしてます)、野菜や果物を取り出し調理にかかる。


献立を作るためのレシピと、過去に作った献立の履歴は、先ほど転送してもらったも記憶にあり、今日何を作るのかは何とかなりそうだが。。。


ただし、ひとつ問題が発生……


それは、学生時代に一人暮らしをしていたので、私だって少しは料理はできるのだが、スーパーの食材とは違い、肉といっても、まだ動物の姿をしているのだ。

この動物自体を捕まえたときに血抜きはしてあるが、一から皮をはぎ、解体するとか、処理をしなければならない。


要するに、解体作業は私の知識では処理が出来るわけがなかったが、先ほどの記憶メモリーの引き継ぎにより記憶から知識になって「出来るようなっている」らしい…


しかし、現状の一次処理がしてある状況でも、すぐに料理を出来るのかというと、「出来ることと、実際にやる」のとは違う。

情けない話だが、目を背け、たまにチラチラ見ながら、腰の引けた状態で処理をしていく。

もちろん調理といっても無駄にしないように皮や骨、内臓なども処理をしていく。


ちなみに、知識を探ると、獲物の生息場所や狩りの知識、捕獲方法、各獲物の仕留め方、血抜き等の処置方法が次々と知識が出てくる……


料理を進め、いつも見慣れた食材の肉になると、スムーズに進むようになる、先ほどのマリアスから頂いたメモリーから知識に変わった情報に基づいて調理をし、おいしそうな食事が完成するのである。


料理が終わって考える。

これからは毎日、元の姿を見ながら料理することになる。

命が食肉に変わることを思うと、今までの自分が命に対しての感謝が足りなかったことを反省する。


早速テントの中に運び入れ料理を並べる。

ちなみに、フランス料理のように順番に料理が出すわけではない。

それと、今日は初日だから簡単なものにさせていただいた。


食べる前にお嬢様も手を洗う。。。というより洗浄魔法で体や着るものまで「きれい」にする。

これは、野宿とかお風呂に入れないときに便利な魔法だ。


うん?、お風呂?、湯浴み?何となく怪しい予感もするが、今日は洗浄魔法できれいにする。


出来た料理を、同じテーブルに配膳している時、「あなたの食事は、お嬢様がお食事を終え、お嬢様のその後の用事が終わって一段落してから、あなたは別の場所で食べるのです。」と冷ややかな指示がでる。


そうか侍女(仕事)だから別だね、うん分かってます。

私もお腹すいているとかは良いのです、指示に従い自分の食事を別の場所に移し始めた。。。


私の分を片づけていると、お嬢様が「ユニーはここで食べないの?」と質問される。

もちろん侍女の答えとして「私はあとから頂きます」と答えた。

お嬢様は俯きながら、小さな声で「今日は、一緒に食べてほしい」と言われた。


そうだね一人だけで食べるなんて寂しいじゃないか、一緒に食べたほうがおいしいに決まっている。


もっとも、お嬢様の寂しさの原因は、マリアスがいなくなったという衝撃の事実だろう。

それと、頼りない侍女が付いたというのもあるとは思うが。。。


お嬢様の意見により一緒に食事をすることにしたが、話題も何も、今日知り合ったばかりの二人なので、二人とも無言で食事をする。

私が「おいしいですね」というと「おいしい」と声が返ってくる、その後も会話が何となく続いた、お互いに顔を見ながらの食事をしていると、やっと落ち着いたという気持ちでいっぱいになった。

しかし、自分で作っておいしいとか、よっぽどの自信家だなと反省する。


お嬢様といえば、先ほども考えたが、前の世界の小説とかでは王族や貴族のお嬢様ということだと思うが?


もしそういう身分があるのであれば、お嬢様というくらいだから、貴族、王族、大きな商家の娘?

なぜ、今はひとりぼっちなのか?

現状の特殊すぎる状況を見ると、実は王族で隠し子なんて言う存在なのかな?


こんな小さい女の子に、なにがあったのか察することもできない。

そして、お嬢様は今日はいろいろあったのだろう…


離れて、お嬢様を見ていると妹のことを思い出し「どうしているのかな、もう会えないのかな」と思って、目が潤んでいた。


食事後の片づけをしていると、マリアスが「ムーシカの時間です」と指示を出してくる。

聞くと、お嬢さまと一緒に楽器を奏でたり歌を歌ったりする時間らしい。

元の世界と違いテレビもないからね………


テントの周りの結界が張ってあるので、音が漏れないから、楽器も演奏出る。

ちなみに、私は「某音楽スクール」に行ってたので、音感はあるしエレクトーンも引けるのだ。


収納魔法で前ポケットから楽器を取り出す。今まで見たこともな楽器であった。

お嬢様は白い金属のフルートのような横笛(高価そうな素材で、高価な音色がでそうな楽器)、私の楽器は、変な形の、強いて言えばハープに共鳴用のホーンが付いたような楽器だった。


先ほどのメモリーから派生したスキルにあったので、安心して演奏してみる。

残念ながら、見事に私の演奏は音が外れる。。。


どうも、この世界の音階や音楽の表現方法が、少し元の世界のそれと違うようだ。

結果的に私の音楽スクールのころの経験が仇となり、マリアスから貰ったスキルの間に小さな齟齬が発生しうまく楽器を演奏できないようだ。


参った…、楽器の演奏できない侍女では首かも、まだ、浮遊霊にはなりたくないよ…


とはいえ、初日だから、お嬢様のソロ演奏を聴きながら今日の演奏会は許してもらった。

その後、お嬢様は少し寛いでベッドに入って休まれた。


奏でられる楽器を自作するしかなさそうだな……と密かに心に誓うのであった



お嬢様はお休みになり、大体の片付けも終わり一息ついた。


やっと、怒涛のような一日が終わるのだと思った瞬間だ。


遠くに一線の光が立ち上がり空の上で四方八方に拡散し広がり、やがて消えて行くのが見えた。

さすが「異世界」不思議なことが起こる、あまりに奇麗だったので見とれていた。


ユニーの日常編は続きますが、3話からは並行してアクションシーン多い目で進んでいきます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ