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侍女の事情もお察しください  作者: 魔茶来
出会いの章
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出会いの森編 ユニー

俺は、・・・っと、そうだった、「今日からは社会人だから、一人称は『俺』じゃなくて、『私』と言わないといけませんよ!!」と家を出る前に妹に言われたばかりだった。


私は 新宮 勇二、多くの難関を突破し誰もが羨む一流と呼ばれる企業に入社することになった22才男子である。。


本日は出社初日、社会生活という人生の荒波に乗り出す「門出の日」である。

こういう門出の日に強運な私は天候にも恵まれる。


そう太陽の眩しい、よく晴れた日だった。

人生の良き日に、これからを想像し浮かれながら横断歩道を渡っていた、その時だった、突然、周りのすべての人の携帯電話が鳴りだし空が眩しく光った。

周りにいた人の姿は薄くなり、やがて消えていく。

世界は色がなくなり、眩しいくらいの光に包まれ、見えるものはすべて真っ白になった。


光っているのは小さな何かの粒子だ、それがものすごい数集まっている。

眩しい白い世界の中で時間だけが過ぎていく。


どのくらい時間がたったのか、上も下も右も左も分からない、私はひとり眩しいくらいの白い光の中にたっていた。


不思議なことに、光の中から、質素なメイド服を着た老婦人が歩いてくるのが見えた。。


彼女は、こちらを見て、私に向かって「縁むすばれしもの、お嬢様を頼みました」と言葉を掛けてきた。

そして近づくと、宝石のようなものがちりばめられた十字架のようなアクセサリを私に渡した。

受け取った、そんな気がした。


たぶん、そんな夢を見たというか、しばらく気を失っていたようだが、「マリアス…、マリアス…」という誰かの名前を叫ぶ声で目が覚めた。

目を開けると赤い髪の10歳くらいの、少女の顔が目の前にあった。

自分で考えてもおかしい構図だと思うが、大人の男である私を、少女が抱きかかえている。


なぜか、少女は泣きながら、「マリアス……、マリアス……」という名前らしき言葉を何度も繰り返し呼んでいた。


私の目が開いたことに気づくと同時に、凝視された。


いきなり怖いものでも見たように、急いで私から離れ、少女は驚いたような顔をして「あなた誰。。。」と言うと、なぜかは分からないが、少女は驚いて声も出せないようだった。


私は、体がひどく痛み、痺れるような感覚に苛まれながら、声もかすれて出せない状況であったが、それでも、なんとか「こ、ここ、ここは、、、?」と声を絞り出すが答えはない。

それと、やっと出した声がいつもの聞きなれた私の声のトーンではなく、女性の声のように高いような気がする。


とりあえず、驚いて声も出ない少女を傍目に起き上がろうと動いてみるが、体が痺れていて、思うように動かない。


何度か、頭や腕を少し動かしていて気が付いたが、着ているものが朝着ていた新調したスーツではない、何となく、さっき夢で見た侍女が着ていたような洋服、質素なメイド服のようであり、それも下半身は、ズボンではなくスカートのようなものを履いているように感じるのだ。


最初は目の錯覚かと思ったが、先ほどから目に入る、私の手や足はか細くなっており、髪は長くなって色は薄い紫色になっている!?


「なんだ、これは。。。」、何とか状況を確認したく、周りを見回し、目についた川まで、ふらふら立ち上がって近寄る。

川に写る自分の全身を見て、目が点になる。。。。。


「見知らぬ、15・6才くらいの質素なメイド服を着た少女が写っている!?」


私が手を振ると水面に写る髪は薄い紫、青い瞳の少女の手が振られる。

本当に私らしい。。。


そして、周りを見渡すと、ここはどこかの山にある森のようだが、かすかに麓に見える街並みは日本の町には見えないし、日本ではないのだろう。


あえて言えば麓に小さく見える風景は、なんか中世風ヨーロッパ的な感じがするし、先ほどから泣いている少女の服装や髪形や持ち物も同じく中世ヨーロッパ風だった、なにより少女の髪は茶色で瞳は深い緑なのである、さっき写った少女(私か?)といい、まるでアニメの中に出てくる女の子だった。


混乱する意識の中で、不意にゲームでよくある設定の「異世界」という言葉が浮かんだ。

そういえばよく「ラノベ」にある「転生」とかいう現象かもしれない。

では、さっきまでの私は死んだということなのか?

それでは、私が学生時代から苦労してつかみ取った一流企業も、社会人としての第一歩を進まずしてすべてが終わったということなのだろうか…

私の強運尽きる……そういうことなのか…


しばらくして、気を取り直したのか、先ほどの場所にいた、少女が今にも消えそうな声で「マリアスはどこ?」と話しかけてきた。


残念ながら、私は、マリアスはおろか、この世界のことなど、何も分からない。

口から出たのは、「私は、マリアス、、、ではありません、名前は、、、新宮 勇二」と答えていた。


日本語はこの世界では馴染みがないのだろう、少女は呼びにくいのか「シン、シンゴウ、。。。マリアス。。。。」と、口をもごもごしながら言っていた。


少し分かりやすく説明しようと、「妹からは、勇兄ゆ・う・に・いと呼ばれていたので、そう呼んでも良いよ」と追加する。


少女は「ユニー、、、」と言えた?ようだが、次の瞬間には「マリアス・・・・」と呟くと少女は悲しい目をして俯いたままになった。


いや、私が聞きたいよ、「女の子になった私は誰ですかって?」

再び、フリーズした少女に、なすすべもなく、起こるすべてが突然の混乱につぐ混乱であり、私の頭は”混乱のるつぼ”となり思考力は失われていく。


混乱が進み、眩暈がしてきた。

そうだ、もう一度目を瞑り、目を開ければ、「元の世界」なんだ・・

そう勝手な考えをまとめると、祈りるように目を瞑る、でも怖くて目が開けられなくなっていた。


その時、「お嬢。。。、お嬢様を・・・、お願いします、助けてください!!」と声が聞こえた、、いや、そんな気がした。

聞こえたというより、外から聞こえるのではなく脳内に響くように聞こえるのだ。


そのうち、はっきりと脳内に「まずは、お嬢様を落ち着かせるために、お手伝いください」と響いてくる。


いきなり、他に誰もいない状況の中、少女以外の言葉に、ますます混乱は大きくなり、「誰を?」と声を出してしまう、もう頭がどうにかなってしまったのだろうか・・・


「私はマリアス、混乱していると思いますが、状況を落ち着かせるためにお手伝いください、後で事情をご説明します、最優先は、お嬢様を落ち着かせることです。」


「いや、最優先は、まったく状況の解らない、可哀そうな私だろう」とか考えていると、次の言葉が聞こえてくる。


「申し訳ありませんが、あなたは、今現在、まだ霊体であり、私の体に仮の憑依状態なのです。お手伝い願えない場合は、強制排除させていただきます。そうなりますと、あなたは、この辺りの浮遊霊か地縛霊になるか、この世から消え去るでしょう」


「混乱している上に、なんか脅しが入っているようだった。もはや、拒否権はないようです。ここは、もうどうにでもしてくれ状況で、お手伝いとやらをするしかないようです。」


まず最初にお嬢様に伝えなければならない言葉があるという。。。


その言葉をお嬢様に伝える。

「マリアスは、遠くへ参らねばならず、これからは、このユニーがお嬢様の侍女としてお傍にお仕えさせていただきます」


お伝えしました、私の意図することではないのですが、「お仕えしたい」という要望です。

とはいえ、面接試験と一緒で結果を問うわけですので心配はしていません。

少なくとも、「マリアスさん本人がいない」上に、「見ず知らずの私」が言うことを、お嬢様が信じるはずはないと思うので、不合格になると思います。


「わかりました、我が宝物のクロス=アクリスを所持している「ユニー」、あなたを、侍女として認めます。」


何ということでしょうか、案外簡単に信じて頂けたうえに、お仕えするお許しが出てしまいました。

ははは、今回の面接試験も一発合格だったようです。(こういう場面でも私は強運だな。)


思えばあの時渡されたクロス=アクリスというアクセサリが侍女の印らしい。

そういえば、左肩にあの時渡されたアクリスが付いていた。

うん?、さらっとスルーしたが、お嬢様は今、なんか大人びた言葉使いをされたような気がした。


やはりここは面接合格なので、採用者に感謝の言葉を言わせていただきましょう。

「ありがとうございます。これよりお嬢様にお仕えさせていただきます、何なりと御用を申し付けください。」


一体何かは分かりませんが、なにかに導かれるように私の運命は動き出し、今日から無事社会人にはなれました、でもお仕事は「お嬢様の侍女」としてお仕えすることでした。


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