第3話 ~俺の素質
奇跡的に三日連続。
父上と母上は何やら仕事があるらしく、俺の最初の見せ場である素質調べを共に出来ないと嘆いていた。
『あの糞餓鬼共めぇ~…!!』
と父上が言っていたけれど、仕事と関係があるのかな? …まぁそんなわけで、王都の神殿へのお供はメイドの二人。メイドだけれどその武力は騎士級、何故にメイドをしているのか? 不思議で仕方ない。過去に何があったんだか…、まぁいいけど。
王都の神殿じゃなくても近場の教会で構わないんじゃないの? と疑問に思ったが、近場の教会での素質調べは庶民がするものであるらしい。貴族は王都の神殿でするもの、これが慣例であるらしい。…面倒くさいったらありゃしない、そんな慣例止めちまえっての。王都へ行くのは大変なんだぜ? 片道三日の旅をせにゃならんし金も掛かる。その旅路は窮屈で仕方なし、唯一の救いはメイドの二人が美人ってことかね。仲の良いメイドだからなおのこと良し、とりあえずここぞとばかりに話し込むとしますかね。
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王都への旅路は窮屈だった、三日間馬車の旅だったからね。馬車の乗り心地は良くなかった、…気が向いたら改良するしかないでしょ。窮屈ではあったけど、馬車から望む景色は飽きなかったし、メイドと仲良く話し込んだから退屈ではなかった。総じて良い経験になったし、楽しかったと言っておこう。…帰りも同じ旅路ってのはアレだけど、素質調べの結果次第で気にならなくなると思う。
…で、辿り着きましたフェルミナ王国の王都リトルエーデンへ。当然のことだけど、我が男爵領よりも発展していますな。石畳の道に統一された街並、行き交う人々に馬車。流石は王都、活気が溢れて善き哉善き哉。二人のメイドは王都に詳しく、神殿へ着くまでに色々と教えてくれました。帰りにはオススメのお菓子屋へ寄りたい、話を聞くだけで涎が……。
…馬車を駐車場みたいな所へ止め、メイドに続いて降りる。そして正面を向けば…、白く輝く荘厳な神殿が目に映った。今の俺は間抜け面になっていることだろう、…神殿の美しさに口を半開きにして呆けているのだから。ボーッと見ること暫し、我に返った俺はメイドを伴い中へ歩みを進めた。何ていうか、導かれるがままにってヤツ? 何処へ向かえばいいのか、不思議と分かっちゃうんだよね。迷いなく進む俺にメイドの二人も驚いているみたい、…俺自身も驚いているよ。
導かれるがままに進んだ先、礼拝堂のような場所へと出た。そこにいた数人の神官が俺の登場に驚き、如何したのか聞かれたので…、
「私にもよく分かりません、ただ…導かれるがままここへと来た。そうとしか申し上げられません。」
素直にそう言えば神官達はざわめき、続いて名前を聞かれたのでミュゼ・ロゼッタと名乗った。神官達は口々に、
『おぉ、本日の儀式予定者であるミュゼ様でございましたか。』
『あの黒炎で名を馳せたクルゼイ様の……。』
『導かれるがままとはいやはや、聞く噂通りのお方のようだ。』
…そんな感じのことを言っていた。父上って黒炎と呼ばれていたのか、それと噂って何さ?
神官達に暫し待つよう言われ、その時…背後で控えるメイドから俺についての噂を教えてもらった。…俺独自の魔力修行って、他人から見たら奇人と映るのか。ちょいとショックですが、メイドの二人はそんなミュゼ様が好ましいとフォローしてくれたので直ぐ様立ち直った。…にしても、この場所って何か居心地がいいなぁ~。素質調べの準備が終わるまで、気分良く待つことが出来た。
…で、めちゃくちゃ偉そうな神官が登場。メイドの二人がめっちゃ驚いていたが、その偉そうな神官はそれほどに凄い人? 疑問に思ったんだけど、…神殿長らしいです。ど偉い人やんけ、そんな凄い人がたかが男爵家長男を受け持ってもいいんですかね? 普通にそう思う。まぁあちらさんがそれでいいんならいいんだけど、…気にはなるよ。
荘厳な雰囲気の中で始まった儀式、神殿長が何かを言えば他の神官達が追随する。俺は声が掛けられるまで片膝を付いて頭を下げている、…正直眠くて仕方ない。しかし欠伸等をするわけにはいかず、マジで辛い時を過ごした。そして遂に、眠気と戦う俺に声が掛かる。顔を上げてゆっくりと立ち上がり、傍に控えていた神官の案内で神殿長の下へ。言われたままに宝珠へ手をやり、目を閉じて集中すれば…、
『『『『『おぉ……っ!!』』』』』
神殿長以下神官達の歓喜に満ちた声が耳に入ってきた。…俺は目を閉じているが故、何が起きているかは分からない。分からないが悪いことではないな、…雰囲気的に。
暫くしてから声が掛かり、目を開いてみれば…、
「………っ!?」
周囲を飛び回る色とりどりの光、それはさながら…俺自身を祝福するように、出会えたことを喜ぶように飛び回っている。…本日二回目の間抜け面、いやさ…この美しさの前に何人も俺のようになることは確実。何せ、俺の他に数人の神官も未だに惚けているみたいだし、お供のメイドも…うっとりしとる。
俺自身も周囲も落ち着いたところで神殿長の言われた通りに両手を掲げれば、周囲を飛び回っていた色とりどりの光が俺に飛び込んできた。一つの光が飛び込んでくる度に、内から何やら力が溢れてくる。俺の中に属性魔力が宿っていく、精霊達が俺と共にいてくれる。奇妙な安心感に包まれていくような、…そんな感じが続いた。
全ての光が俺の内に入ったことで、この素質調べの儀式は終了となった。神殿長曰く、このようなことは初めてのことであり、俺は精霊に愛された存在ではなかろうかとのこと。…で神殿長に聞かれた為に、俺の中にいる精霊の種類を伝える。自身に問えば教えてくれるんだよね、精霊達が……。
そして判明したのが俺の規格外的な属性魔力の数。火・水・風・土・光・闇の基本的な六属性の他に、氷・雷・月・森・刻・霊の貴重な六属性。俺一人で十二属性、それを聞いた神殿長以下神官達が俺を拝み出してきました。俺は精霊に愛されているのは勿論のこと、精霊の申し子であるということらしい。
いつまで続くのやら…。
属性は適当。