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第15話 ~悪魔の存在

昨日、雷が凄かった。

精霊が見えると言った瞬間、この場の時が止まった。本来であれば見ることが出来ない存在だからな、…精霊を見ることが出来る人間が今世で二人となったわけだ。この短期間で俺の価値がはね上がっている、とどまる気配が無いッス。…とにかく皆を元の状態に戻さねばならない、話が進まないからね。


俺は手を叩いて皆の意識を元に戻し、騒がしくなる前に経緯を説明する。説明しながら自身のステータスを確認、《聖魔の瞳》を発動させて今回入手したスキルと称号を確認しておく。《聖魔の瞳》自体の説明は見れたんだから、他のも見ることが出来るよな?


《侵食》自身の力 (属性・スキル等)を周囲に行使し、有利に事を進めることが出来る悪魔族の秘技スキル


《補食》自身よりも弱い存在を食らい力に変える闇精霊の秘技スキル


《吸収》相手の魔力を自身に取り込むことにより、相手の力(ステータス・スキル等)を自身のモノにする闇精霊の秘技スキル


《破邪》自身の行動の全てが悪魔族に対する特攻 (弱点)となる光精霊の秘技スキル


…悪魔族、闇精霊、光精霊のスキルね。これを見て明らかになったのは、スキルというモノは精霊が絡んでいるってこと。自身の成長に合わせてなのか、それとも精霊が成長したからなのかは分からない。言えることは精霊の活性化が重要ってことだな、うん。


詳しくは俺にも分からないが、この屋敷に悪魔がいた。その悪魔を俺の属性、光精霊と闇精霊が人知れずその悪魔を討伐。それによりスキルと称号を入手、ステータスも上がった。同時に精霊の活性化という謎現象が発生、それの沈静化に伴って魔眼を授かり今に至ると説明した。あくまで自身のステータスを見た上での仮説、断言出来ないってことも付け足した。


俺の説明を聞いていた皆、最初に声を出したのは母上だった。


「精霊が見えるってことに驚いたけれど、悪魔? …ミュゼちゃんは今、…悪魔って言ったわよね? 悪魔は物語上の存在よ? 現実に存在するなんてことは……。」


やや青い顔で母上がそう言ってきて、それを聞いた父上以外の皆も青い顔で震えだす。…まぁ震えるのも分かる、悪魔っていうのは伝説上の魔物って認識だからな。いや…伝説上というよりは空想の存在、…物語上の存在であると人々は思っている筈なのだから。







悪魔という存在はフェルミナ王国、いや…世界中の人々なら誰もが知っている。伝説の英雄ボッチ・ヤーバンの物語に登場し、強力で凶悪な力にて世界を恐怖に陥れた悪夢の存在。数十万人の人間を殺し、数十の国を滅ぼした史上最強の魔物の総称。ボッチ・ヤーバンと死闘を繰り広げ、最後にその存在を消したとされている。


最強の魔物とされている悪魔、奴等の悪行は物語内のこととされているが人々の恐怖の対象。数匹の悪魔が幼子を殺してその生首で戯れた。人間の皮を生きたままで剥ぎ取り楽しんだ。人間の女を辱しめた後に八つ裂きとして食らった。街に住まう全ての人間を串刺しにして野へ晒した。…等々、挙げたらキリがない程である。


…だが悲しいことに、この国も世界も過去に比べたらかなり平和になった。そんな平和な世になった為、英雄のことも悪魔のことも空想の物語上の存在としたのだ。要は現実に起きた過去の戦いを忘れてしまったということ、伝説の英雄ボッチ・ヤーバンも、最強の魔物である悪魔も、全ては物語の中のこと。この世に存在しない、…人々の間ではそうなっている。


…そんな空想の存在がこの世に存在していてこの屋敷にいた、討伐されたとしても存在していた。それが事実かどうかは断言出来ないけど、悪魔の存在を俺が口にした。空想上とはいえ悪魔という存在を知っている、そのことに皆は恐怖している。


因みに俺は、悪魔って存在が実在しているってーのに納得している。現に魔物っていう存在がこの世にいるわけだし、最強の魔物とされている悪魔がいたって可笑しくないじゃん。そもそも悪魔って魔物の括りになるのか? …俺的には別物と考えるが、…まぁ俺の考えはどうでもいいわな。







とにかく悪魔が実在している可能性に皆ビビっている、…討伐されているとしても。


「…討伐されたみたいですけれどいたみたいですね、現に悪魔関連のスキルと称号を入手していますし。…それに私は伝説のスキルとされている 《ステータスオープン》があります、…ということは空想の物語ではなく現実にあった出来事。故に悪魔の存在があっても不思議ではない、そういうことになりますよね?」


俺がそう言えば、確かにその通りだと考え込む母上達。その顔は白く震えも大きくなっている、…物語を思い出しているんだろうな。悪魔の悪行の数々、それが現実に起きる可能性。考えればそりゃ恐いわな、あの出来事が現実にってことだから。


そんな中で父上だけは普段通りである、内心は分からんけども。…父上は悪魔の存在を受け入れているんだろうな、昨日の母上のこともあるし。そもそも父上はボッチ・ヤーバンの物語を空想と思っていない、最初から現実にあったものだと語っていた。俺が 《ステータスオープン》を発動させた時も、ボッチ・ヤーバンは歴史上の人物と言い切っていた。世界を救ったと伝えられているとも言っていた、…父上は何かを知っているんだろうか?







ボッチ・ヤーバンの物語が現実にあったことで、悪魔存在の可能性が高いってことに俺と父上以外が騒がしくなる。特に騒がしいのは母上、他国に名を馳せる精霊術士なのにだ。ゴブリンキングの生首をパーティーに持っていく程の女傑がこれ程までに、…悪魔とはそれほどの存在なのだろう。その様子を見ていた俺に父上は、


「…ルセリナの様子が変だった理由が悪魔のせいであったのなら、…ルセリナに憑いていた悪魔が精霊に滅せられたのなら。そう考えれば元に戻った理由として申し分ないし、あそこまで騒ぐことも分かる。…ルセリナは悪魔の被害者になるのだから、…ルセリナ自身もそのことが分かっているんじゃないか?」


そんなことを言った。確かにその通りかもしれない、母上に悪魔が憑いていたとしたら一連のこと全てが繋がる。そして母上が人一倍騒いでいる理由が、自分自身に悪魔が憑いていたと知っていたからだとしたら? 元に戻った母上は悪夢を見ていたと言っていた、その悪夢が悪魔だったのでは? 父上の推理を聞いて俺も色々と考えてしまう。


俺と父上は、母上が落ち着いたのを確認してから聞いてみた。すると…、


「…私は悪魔をこの目で見たわ、…物語の挿し絵で見たままだった。その悪魔はレイチェル嬢と共にいた、…気付いた時にはもう遅くて私にも。…意識が遠退いて、代わりにナニカが私を動かしたの。遠くから私は見ていて、…その間にも悪夢を見せられて。」


ポツポツと話し出した。…やはり母上は悪魔を見て憑かれてしまっていたようだ、…原因は俺の婚約者っぽい。


「でもね? この屋敷に戻ってきてから自室へと籠った時、何だかポカポカしてきたの。そして気付いたら朝になっていて、私の身体が私に戻っていて。…目覚める前に聞いた悲鳴があるんだけれど、…それが悪魔の滅せられた時のことかもしれないわね。」


…で屋敷ウチに戻ってきて、気付いたら悪魔は討伐されて元に戻っていた…と。


「悪魔は滅したけれど、私に憑いていたのは事実。それを否定しようにも事実であり、…否定してはいけないことなのにね? …ごめんなさいあなた、ミュゼちゃん、…そして皆。」


俺達に頭を下げて謝罪する母上。当然のことながら誰も母上を責めはしない、…だって被害者なんだもの。恐いと思うのは当たり前、否定したくもなるさ。







まぁとりあえず、我が家の危機は人知れず乗り切ったってことになる。解決してくれた精霊、光と闇の精霊にはきちんと礼を言わなければ。今は休眠中とのことだけど、俺の中で眠っているんだよね? なら聞こえている筈だから礼を言わせて貰うよ、…ありがとう。母上を救ってくれて、…我が家の危機を未然に防いでくれて。休眠から目覚めたら、改めて礼を言わせて貰うからね?


心の中で礼を言ったら、何だか身体の内側がポカポカしてきた。…聞こえていたんかね? お礼。

仕事のストレスが書き物に影響しなけりゃいいけど……。

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