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和解の意味と、そのために必要な事


「話せばわかる」ってのは絵空事だと言う奴がいるが、ちょっと違う。

もちろん人同士なのだから、言語や文化に目をつぶれば会話は成り立つのだ。

しかしそれは双方に会話する意思があればの話。

話し合いで解決しようとしても、相手方が剣を振り回したり、銃口を突きつけてくれば会話は発生しない。

また、双方が自分の意見を主張するだけでも同じように、解決には向かわない。

要は「折り合い」が大切なのだ。

今のような状況であれば、尚のことこの話を説く第三者的人物が欲しいところだった。




「銃を下ろせ。」

「お前が先だ!」


怒号が飛び交う。

冷静さを若干失ってるのが風見雄梧。


「お前達、こっちに来なさい。」


俺の周りにいた子供たちに語りかける。

子供たちは足がすくんで動けないらしい。

しばらく状況は平行線を辿る。

「いっせーのーせっ!」で、一緒に下ろそう?で解決すればそれに越したことはない。

しかしこのご時世、仲良しこよしでは自分が先に死んでしまうのだ。


「これは、お前達がやったのか?」

「捕虜の拷問だ。何か問題でも?」

「ほとんど死んでるじゃないか!そもそもとっくに戦争は人類の負けで終わっただろっ!」

「ッッ・・・・・・!!」


どうも地雷を踏んだようで。


「まだ負けてなどいないッ!!我々が戦い続ける限り、諦めない限り・・・・・・人類に敗北などありはしないのだ!!」


こういう奴に会うのは初めてじゃない。

でも以前会った奴は、結局錯乱した挙句に恋人と無理心中を謀った。

正直生理的に合わないから関わりたくはなかった。

こうなってはちょっと汚いが、子供を人質にしてでも・・・・・・と思った矢先だった。


「この兄ちゃんは僕らを助けてくれたんだ!」

「こいつがエイリアン狩りをしようって言い出して、そしたらロボットに襲われちゃって・・・・・・」

「あっ!僕のせいにすんなよ!」

「もういい!お前達の説教は後だ。」


男は深いため息をついて、銃を下ろした。


「彼を客人として迎える。」

「ッ・・・・・・!?」


他の大人達がざわついた。


「まだ話は終わってないぞ?」

「それについても弁明しよう。この子達を助けてくれたなら話は別だ。ついてきたまえ。」

「待った、彼女の手当を。まだ息がある。」

「・・・・・・」


「いいだろう。」


彼女を預け、警戒しながらも俺達は居住区と思われる空間に通された。

居住区と言ってもせいぜい30~40人程度の小さいコミュニティだった。

しばらくして客間に通された。


「遅くなったが、私は陸上自衛隊、大和俊典やまととしのり一佐だ。」

「風見雄悟、流浪人だ。」

「なぜこの街に?上はとっくに陥落して連中が跋扈してるはずだが。」

「別に、食料をあさって流れ着いただけだ。そしたらガキどもが襲われてた。」

「聞いたところによると、そこの敵兵はその子供たちを殺そうとしたパイロットらしいが?」


敵兵、という言い方に違和感をおぼえた。

しかし話し合いの姿勢がある以上、感情論で語るのは得策ではない。


「そうだ。戦いを修めるため、行動不能にして機体から降ろした。元々戦う意思はない。」

「そうかな?もしかしたら、今にも我々を殺しここから脱出して、仲間に生き残りの情報を渡すかもしれないぞ?」

「戦争はとっくに終わってる。これ以上の殺戮に意味は無い。お互いのためにもな。」

「終わってなどいないッ!私が生きている限り、いつか勝機はある!」

「何をもって勝利とするんだ?奴らを殺し尽くすまでか?」

「その通りだ。お前はなぜ奴らの味方をする?まさかスパイじゃあるまいな?」

「だーかーらー!とっくに負けてんのに味方もクソもねぇんだわ!」


またちょっと流れが悪くなってきたなぁ。

話し合いのコツはさっきも言ったが、感情的にならないこと。

冷静さを失い、また妥協点も見失う。

そもそも今回のこれには、明確な着地点はない。

せっかく生き残りに出会えたわけだし、少し近況でも話そうよ。くらいのことである。

ついでに言うと、ヒューイと捕虜であった彼女を生きて帰して欲しいなーくらいの話。

そしてこの後、またしても話は平行線。

20分くらい似たよーなやり取りが続くので割愛。



そしてついには、俊典一佐が彼女・・の始末をすると言い出したので、渋々俺は手持ちのカードを切った。


「ここから数十キロのとこにあるスーパーに、非常食がまだ残ってる。昨日俺が着いた段階では、バックヤードは手がつけられてなかった。水も多少ある。」


その言葉にさすがの一佐も眉を動かした。


「俺が案内する代わりに、彼女の治療を続行して欲しい。そして、無事食料を持ち帰れれば俺たち3人を解放してもらいたい。」

「待て、生かすのはいいが解放は容認できん。そいつらにここをバラされたらたまったもんじゃない。」

「それは絶対にないと約束しよう。」

「もし何かあったとして、誰が責任を取るのだ。」

「俺がとる。そもそもこのご時世にそんな維持を張ってる余裕もないんじゃないか?」


戦争が終わって半年、既に生き残った人間達によって食料の奪い合いが起こり、各地の量販店は狩りつくされていた。

その中で偶然見つけたオアシス。

問題をいくつかあげれば・・・・・・

その1 彼らがよく徘徊している。

その2 若干距離がある。

その3 入口が塞がれていて、瓦礫だらけ。口頭では場所が分かりにくい。

しかしリスクを背負っても行かねば、勝手に戦争を続けることも出来ないだろう。

一佐の決断は早かった。





「わかった。その条件でいい。案内してくれ。」


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