trois libération
「さて、私は渡瀬 陸という。君の取り調べを行う者だ。よろしく」
50代ぐらいの男だった。やはり、年老いた故の品格があり、ベテランと思う。
「牢屋に入ってて驚いたろう。決して逮捕ではない。ちょっとした状況を聞きたいんだ」
そして、にこやか。
安心した。よかった。
「あのね、死体発見した状況を教えて欲しいんだ」
「はい。あのですね―――」
それから10分ほどだろうか。しっかり話した。細部まで、きっちりと。
「―――で気絶したんです」
「ありがとう。よくわかったよ。それで、後一つ質問をしていいかね?」
「はい」
「君が気絶している間にこの国は独裁国家となった」
「え?」
「いや、実際には政党が全て合併した」
「は?」
「名前はナル・セハツ」
「え……」
「成瀬初くん、君の名だよ。……君はうい君だがね」
「……」
「まぁ上の方はまだ君のことをあまり気にしてない。上は合併で大忙しだからね。まだ君は参考人、行きなさい。もう会わないことを祈るよ」
「あ……ありがとうございます」
なんていい人なんだ。こんな人もいるんだ。自分もしっかり生きよう。うん、自殺はしないし、人を傷つけない。改めて誓った。
その後、成瀬初は釈放された。