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マトリョーシカ  作者: 撥条の鼠
皮の着ぐるみ
4/5

trois libération


「さて、私は渡瀬 陸という。君の取り調べを行う者だ。よろしく」


50代ぐらいの男だった。やはり、年老いた故の品格があり、ベテランと思う。


「牢屋に入ってて驚いたろう。決して逮捕ではない。ちょっとした状況を聞きたいんだ」


そして、にこやか。

安心した。よかった。


「あのね、死体発見した状況を教えて欲しいんだ」

「はい。あのですね―――」


それから10分ほどだろうか。しっかり話した。細部まで、きっちりと。


「―――で気絶したんです」

「ありがとう。よくわかったよ。それで、後一つ質問をしていいかね?」

「はい」

「君が気絶している間にこの国は独裁国家となった」

「え?」

「いや、実際には政党が全て合併した」

「は?」

「名前はナル・セハツ」

「え……」

「成瀬初くん、君の名だよ。……君はうい君だがね」

「……」

「まぁ上の方はまだ君のことをあまり気にしてない。上は合併で大忙しだからね。まだ君は参考人、行きなさい。もう会わないことを祈るよ」

「あ……ありがとうございます」


なんていい人なんだ。こんな人もいるんだ。自分もしっかり生きよう。うん、自殺はしないし、人を傷つけない。改めて誓った。



その後、成瀬初は釈放された。


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