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ストーキングは犯罪よ!!勿論勝手な情報収集もな!!!


泣きながら走って帰って、飯も食わず風呂にも入らず布団に潜って寝た。


弟の智裕が心配したのか、いつもは反抗して来るくせに、今日に限って話しかけてきやがった。


「あ、兄貴……どうしたんだ……?女にでもフラれたのか……?」


女にフラれるどころか、四人もの男に告られたよ!!!


ああ、死んでしまいたいぜ!!!


「でてけ。智裕に分かる事じゃねーんだよ。」


他校に通っているいっこ下のハズだが、大分大人びている弟を、拒絶した。今は話すような気分じゃない。


オレは布団から手だけ出してシッシッと振った。


「兄貴。」


智裕はなにを血迷ったか、オレの手を掴んできた。


「いぎゃあああああああああああああああああああああああ!!!」


オレは智裕の手を振り払った。……オレ、男性恐怖症なったかも……。


「兄貴………?」


智裕は傷ついたような表情をしているだろうなと思う。しかし、いかんせん布団のなかだから分からない。


「ふっ。オレがモテるからって嫉妬してんのか?」


「なっ!!」


オレはガバッと起き上がった。


そう。オレの弟である智裕はやたらめったらモテるのだ。奴は顔がいいからな。否定はしない。オレはそんな小さい男じゃない!!!




智裕は女の子を入れ替わり立ち替わりとっかえひっかえしてる、一言で言って男の敵なのだ!!!


ありとあらゆる面から見てサイテーだな!!


「ま、兄貴の顔じゃ、どう考えたって友達どまりだろうしな!!」


………なんつうヤツだ!!人が気にしている事をズバズバと!!っつーか最近は女子には口すらきいてもらえませんから!!!


「黙れ黙れ黙れ!!!オレはフラれて悩んでんじゃねぇんだよ!!!」


「へぇ?じゃあ、告られたのか?」


「告られたよ……告られたんだけどさ……。」


い、言えねぇ……!!


相手が四人でしかも全員男だなんて死んでも言えねぇ!!!!


あ、相手が四人は言えるか。


「ぷっ!!見栄張らなくても良いから。あと、この前兄貴が可愛いって言ってた愛未ちゃん?あの子、オレに告ってきたぜ。じゃあな。」


バタン。


な、なんつーヤツだ!!!!


人類の敵だ!!!何であんなヤツがモテるんだ!!!世界は間違ってる!!!


「………はぁ。」


オレは溜め息を吐いた。


「心休まる場がねぇ………。」


っていうか、みんなホモだったんだ感が胸の中に一杯だ。


何かオレが間違ってる気がしてきた……


オレ………消えたい……。


明日学校休みたい……。アイツらに廊下とかで話しかけられたらどうするか……おれ今ただでさえ山下ファンから敵視されてんのに……。


それに、オレまでホモの疑いかけられたら?


「オレ……生きてけねぇ……。」


オレはまた布団の中に潜り込んだ。


「寝よ………。」


誰に言うでもなしに口にしてみる。


……到底眠れるとはおもえないが。




「ううう……朝だ……嫌だぁ……。」


……昨晩は案の定一睡も出来なかった。


「おい、兄貴起きてんのか?飯だから早く来いよ。」


「無理……ヤダ………ダメ……オレ今日学校休む……。」


ウチの母さんがそういうのき厳しいのは百も承知だからダメもとだ。


「兄貴……?本当昨日からどうしたんだ……?フラれて落ち込んでたんじゃねぇのか…?」


智裕が、がちゃりと部屋のドアを開けて中に入ってきた。


「来んな。オレと世のモテない男性陣の敵。」


「兄貴ィ?」


足音が近付いて来る。こっち来んなっつったのに。物分かりの悪い奴だな!!


「おきろよ兄貴。」


ゆさゆさと布団ごと揺さぶられる。……智裕に起こされるなんて、何年ぶりだろ。いつもは低血圧の智裕を、オレが起こしてたからな……。


「放っといてくれぇ……。」


弱々しい声が出た。………こんなのオレじゃない。


「兄貴…?」


どすっ。


上から体重をかけられた。いつも、起きないとぐずる智裕を起こす時に使う技だ。布団と人一人分の重さで、出なければ窒素しそうになる。考え付いたオレは偉いぜ!!!


しかし、今はオレがそれをかけられている。でもな。この技にはちゃんと攻略法があるのだ!!!


それは、体を丸めて顔の所に空間を作る事だ!!!オレ天才!!!


「……あれ?兄貴苦しくねぇの?っつーか起きろよ。学校遅れちまうぞ。」


「智裕ー!!勇二まだ起きないのー!?」


「ああ、母さん、兄貴学校行きたくないって言ってるー!」


「布団剥しちゃってー!!」


ちょっ!!何で行きたくないか位聞こうと思わんのか!!!?まあ聞かれた所で答えんがな!!!


「ほら、兄貴起きろよ。フラれたのは辛いと思うが……。」


だからフラれたんじゃねぇっての!!オレは、布団を引っ張って必死の抵抗をした。


「仕方ねぇな。」


……何だ…?




「おじゃましやーす。兄貴ーいい加減起きろ。オレと母さんがキレる前になー。」


「おじゃましやーすって……はぎゃ!!?来るな来るな!!オレな触らないでくれ!!!」


智裕の奴、布団に潜り込んできやがった!!!


「ちょ、マット超濡れてんじゃん!!どんだけ泣いてんだよ!!!」


オレは布団から飛び出した。弟といえど拒否反応がでる。こりゃ悲惨だ、オレ。


「……全く。よーやく出たか……ってどうしたんだ、その顔!!もしかして寝なかったのか!!?」


「……オレそんな酷い顔してるか………?」


ふいに、智裕が近付いてきた。反射的に一歩後ずさる。


「兄貴!!」


「な、何だよ。」


ぎゅっ。


ふいに抱き締められた。瞬間、体中から汗が噴出してきた。明らかなる拒否反応だ。


「や、やめ……。」


オレは止めろと言うに、智裕の野郎、更に腕の力を強めやがった。それから、ゆっくりと背中を撫ぜられる。


優しいその動きに、オレの緊張もほぐれてきた。ありがたい。


「兄貴………女にフラれた位でそんなに落ち込むなよ……。」


いや、だからフラれてねぇ。逆に告られた。女じゃねぇけどな。


「……もう大丈夫か?」


「……あ、ああ。ありがとな。」


ゆっくりと、智裕はオレから放れていった。


「顔洗って来いよ。先に飯食ってるから。」


オレはああ、と返事を返して洗面所へ向かった。智裕のお陰っていうのが若干シャクだが、ちょっとばかりは落ち着く事が出来た。




そこからはかなりバタバタした。起きるのが大分遅かったからだ。しょうがねえだろ!!こんな悩み抱えるとは昨日まで夢にも思わなかったんだよ!!!


無事飯を食い終わり、準備を済ませた頃には、いつも出発する時間の五分前だった。


ぴーんぽーん。


「あら、誰かしら。こんな早い時間に。」


「あー智裕トイレ籠ってるし、オレ見て来るわ。」


何の疑問も持たず、玄関を開けた。


「おはよ〜、ハニー。ええ天気やなぁ。」


バン!!


何でだ!!?何で桃時がここにいるんだ!!?純也なら何回か遊びにきた事あるからともかく、何で桃時が家の場所知ってんだよ!!!


「…?…兄貴どうした……?」


智裕だ。十分に渡る籠城を終えたらしい。


「つれないなぁ、ハニー。キスまでした仲やんか、一緒に学校行こうなぁ。」


無駄な事喋んな、バカ!!!


「…………兄貴……もしかして悩んでた理由ってソイツ………?」


オレは諦めた。もう全て言っちまおう。流石に一方的にキスされたくらいじゃ、智裕も引いたりしないだろう。


「これが後3人もいんだ……。」


「マジかよ……。」智裕は呟くと、青白い顔をしているであろうオレを脇にどけて、玄関を開けた。


「お引き取り下さい。今日は兄は学校休ませます。」


智裕ぉおおぉおお!!


何て良い弟なんだ!!!昨日散々心の中で悪口いって悪かったあああ!!!!


「弟さんかぁ?なんでぇな。ハニー制服着とったやないか。あ、それとも大好きな兄ちゃんの前でええ格好したいんか?」


は?


何言ってんだコイツ。お前の考えをウチに放り込むな!!




「……これ以上戯言ぬかすと目ン玉抉るぞ。」


「おー怖。ハニーもこんな怖い弟さんやったら苦労してはるんとちゃう?」


半分当たってるが、お前よりかは100倍ましじゃ!!!


オレはオレを庇うように立つ智裕の後ろから顔だけのぞかせてしかめっ面をした。


……そして見てしまった。


「げっ……。」


「ダーリン!!」


「ご主人さまぁ!!!」


「ゆーうじ!!」


バタン。


ガチャガチャ。


「ちょっ!!?何で閉めんねん!!学校いかなあかんやろ!!」


煩ええええええええええええ!!!


オレが昨日どんだけ悩んだと思ってんだ!!!


「兄貴。奥入ってろ。後母さんに学校休むって連絡してもらえ。」


智裕に背中をとんと押され、オレはリビングに向かって走っていった。


智裕今日何か超良いヤツなんだけど!!!……でもそういえば昔困った時とかは大体智裕に泣き付いてたなぁ……。文句言う割りには結局助けてくれてたし。


オレ、良い弟持ったな……多少っていうかかなり性格に問題があるが。


「母さん。」


「あら、勇二まだ学校行ってなかったの?遅れるわよ?」


「家の前に生物兵器が四体もいるから行けねぇ。」


母さんは振り返って「は?」という顔をした。ある意味当然だ。


「何ふざけた事言ってるの。早く行きなさい。」


いつものオレならここで諦めただろう。だけど今日のオレはひと味違うぜ!!!っつーか諦めたらオレの色々なモノを失ってしまう気がする!!!


「智裕がいま駆除してくれてんだって!!アイツの死を無駄にする気か!!?」


まさかの死別ネタだ!!!




「……オレ死んでねぇ……。っつーか帰ってもらったぞ、兄貴。」


「智裕ぉおぉおお!!!マジありがとおぉおお!!!!」


抱き付いてみた。感動の再開風に。マルコには負けないぜ!!!


実は母を訪ねて三千里見た事無いっつーのはスルーで、今は母説得に三時間、って感じだ。


「母さん、兄貴昨日からちょっとおかしかったろ。オレ聞いたんだけど、人に言える事じゃねぇし、これじゃ学校とかいけねぇわ。今日休ませてやってくれないか?」


「……そう…。智裕が言うならしょうがないわね。勇二、アンタ後でちゃんと聞かせなさいよ、ずっと一人で抱え込んでたの!!?」


ちょっ!!今差別発言しなかった!!?オレが言ってもダメなのに智裕が言ったらOKってどういう事じゃ!!?つーかなんでオレがキレられにゃならんのだ!!


「……あ、でも、お母さん今からパートで5時まで帰らないのよ。一人で大丈夫、勇二?」


馬鹿にすんな!!!オレそこまでガキじゃねぇぞ!!!


「あー、じゃあオレも休む。単位なら全然大丈夫だし。」


「そうなの?じゃあ二人で仲良くね。あ、学校にはちゃんと連絡するのよ!!」


バタバタと慌てて、母さんは家を出て行った。っつーか智裕特別待遇ハンパねぇな!!!




「ふぅ、ま、チョロいチョロい。学校休む口実出来てラッキー。」

なんつうヤツだ!!!!……でもまあ今日は助けられてばっかだったから、そこらへんは目をつぶろう。なんて寛大な心の持ち主なんだろう、オレ!!!




「まあ良いとするッ!!オレは部屋で落ち込んで来るからくんなよ!!!」


オレはリビングを出ようとした。


ぐいっ


「兄貴。暇だからマリカしよーぜ。」


君、オレの言った事聞いてた!!!?


「プレステどこいったっけ……?」


やる気満々ですか!!!?


「ほい、コントローラ。ま、兄貴はよぇえから始めから結果なんて分かってるけどな。」


「なッ!!!オレは弱くねぇ!!!」


結局、オレたちはマ○オカートをやりまくって、オレは一回も勝てなかった。


………畜生。オレゲームまで智裕に負けんのか。


こうしてオレの平和な一日は過ぎて行った。




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