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女子はラブレター書くならピンクの封筒にしなさい!良い子だから!!



なんて爽やかな寝起きなんだ。こんな爽やかな寝起きは初めてだ。


オレは昼休みから二時間ぶっ続けで惰眠を貪り、結果、爽やかな目覚めにありついたのだった!!爽やかな過ぎるぜ、オレ!!!


「勇二ぃ〜!かえろぉぜぃ!!」


純也は、さっきのシリアスからは想像も付かないほどすっかり元道りだった。なんだよ!ちょっと心配しちゃったのが馬鹿みたいじゃねぇか!!!


……まぁいいか。


「おう!!」


今日はいつも待ってる友達が今から他校に共同練習行くとかで一緒に帰れねぇって言うから、純也と二人きりだ。


バカな話をしながら下駄箱に向かう。


「最強はやっぱピカチュウだろ!!」


「何でだよ!!ここはピッピでOKだろうが!!」


……我ながらだが、本当に意味不明だ。


がこん、と下駄箱を開けた。


「あり?」


手紙である。


手紙……


手紙だ。


「ちょっ!!!コレ!!!純也ぁああぁああ!!!!見ろよコレ!!!!」


「………手紙…?」


なんだよテメェ、人がせっかく手紙貰ったってのに、テンションひっくぅ。


「し・か・も!!色が水色だ!!パステルだパステルだ!!!」


これは……もしかしてもしかして人生初の………


{ラヴ・リィター}


っつー奴なんじゃないんですかね!!?


「まぁ、開けてみろよ。きっと果し状だぜ。」


「お前、なんて夢のねぇこと言うんだよ!!!あ、そうか、さては俺がラブレター貰ったからって、嫉妬してんだろ!!」


「……ああ…そうかもな……。」


俺は一瞬ギクッとした。純也が泣きそうな顔をしているように見えたからだ。


ンナ訳ねぇっての。


「畜生ッ!!羨ましいぜ!!!半分破って俺にもくれ!!!」


やっぱそうじゃねぇかよ!!悔し過ぎて半泣きたぁ、いい気味だぜ!!!




「は?やるわけねーだろ!!待ってろって、今開けるから……。」


慎重に、慎重に封筒ののりをはがしていく。


中から、一枚だけ紙が出てきた。


「………ゴクッ……。」


二人して、息を飲んだ。




仙台勇二様。


話したい事があるので、今日の放課後、体育館裏に来て下さい。待っています。




「キタァアアァアアァアァァアアァッ!!!!」


ラブレターキタァァアァアアァッ!!!!



「告白だ!!告白だ!!!ちょっちょっ!人生初!!!」


「ちょ、勇二!!コレ……」


「HA-HA-HA!!跪け愚民共ぉおぉおお!!!っつーワケで今から体育館裏だ!!純也、ちょっと待っててくれ!!!」


後ろから純也の呼び止めるような声が聞こえたような気がしたが、今の俺は止められねぇぜ!!!ヒャホーー!!!


個人的には、小柄で可愛らしい娘がいい。タイプだ。


オレは走りながら校舎の角を曲がる。あ、上靴はいたままだった。オレとした事が。期待してる事丸分かりじゃねぇか!!まあ期待してるんだけどな!!!


ドンッ!!


「うぎゃ!!?」


「お?」


出合い頭に誰かとぶつかってしまった!!畜生、鼻がいてぇ!!


「あ、仙台勇二君やないか〜!こないなところで奇遇やなぁ。」


桃時じゃねぇか!!!


「どいてくれ、今オレは人生のクライマックスを迎えようとしているんだ!!!」


「つれないなぁ。それにクライマックスはまだ早いわ。まだ、オレの事よお分かって貰わんかったらあかんし。」


は?


何言ってんだコイツ?


「豆腐の角にでも頭ぶつけたのか?良い病院紹介してやるぜ!!」


近所のヤブ医者だがな!!!




「そない焦らんかてええやん。」


焦るわ!!今からオレは告白されに行くんだ!!早く通してくれ!!!相手帰っちまったらどうしてくれんだ!!!


「ま、そない期待せん方がええで。」


……?


何でコイツオレが呼び出しされた事知ってんだ?


「じゃあ、また明日なぁ。お別れに……。」


肩と、唇に感触。


肩は……桃時の手だ。


じゃあ唇は…………?つーか顔が近いぞ、桃時。オレは女の子と顔を近付ける行為がしたい。


まあキスだが。


あれ?


キス?


「んぎゃあああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」


「ばいばい、ハニー(はぁと」


ちょっ!!


ちょっ!!!!!





男にキスされたああああああああああああああああああああっ!!!


「オレ……もうお婿に行けない……。」


初めてだったのに……。


「な、泣いていいのか……?」




いや、ここは一つ泣いちまおう。


……あれ?畜生、こんな時に限って驚きで涙出ねぇ。


「勇二ぃ〜〜!!」


後ろから呼び声がした。純也だ。


「純也ぁあぁあああぁああ!!!」


オレは純也に抱き付いた。


「ど、どーした、勇二ぃ!」


「お、おどごにキスされたぁ〜!!!」


純也は驚いたような顔をしてから、苦々しいような表現を浮かべた。


「……やっぱな……。そうじゃねぇかと思ったんだ…。あの手紙の字、ちょっと男っぽかっただろ……?まあ、とにかく今は靴履けよ。持って来てやったから。」


「オレまだ体育館裏には行ってね……って!!オレは今こんな事をしている場合じゃないんだ!!!純也、靴貸せ!!」


オレは急いで靴を履き替えた。


「懲りねぇなぁ……男かも知れんって言ってるのに……っつーか相手は誰だったんだ?」


水色の封筒に手紙を入れる子が、男な訳ねぇ!!!


「んなもん思い出したくもねぇ!!………んじゃ、行って来る!!相手の娘とラブラブになって、今のをチャラにしてやるぜ!!!」


オレはまた走り出した。




もうすぐ体育館だ!


待ってろよ、もうすぐ行くからな!!!


「おっと。」


危うく、段ボールに大量の書類を抱えている人にぶつかりそうになった。セェーフ!!これぶつかってら大変だったぜ!!!


「おや?仙台君ではありませんか。」


ん?この敬語………。木野じゃないか。


「ああ、あんたか……。」


出来れば会いたく無かったな……。さっき山下ファミリーの桃時にキスされたばっかだし……。


「もし、時間があればこれ運ぶの手伝っていただけませんかね?」


「時間なんてねぇよ!!!オレは急いでんだ!!!!」


見て分からねぇか!!?


「………ラブレター貰って、呼び出されているからですか?」


だから何で知ってるんだよ、お前等!!エスパーか!!?エスパーなのか!!!?



「そ、そうだよ!!だから引き止めてくれるなよ!!」


オレは早く相手の娘を見てみたいんだよ!!


「手伝って頂けたら、手を出さないつもりだったんですが……。」


「え?」


がたっ


段ボール箱が落ちる。書類は思いの他キッチリ入っていたのか、散らばらなかった。


そして、オレはまた………。


CHU☆


「いぎゃああああああああああああああああああああああああっ!!!」




「余り大きな声を出さないで下さいよ……でも、そんなあなたでも好きですよ?……では、失礼します、ダーリン(はぁと。」


木野はにこやかに笑いながら去って行った。


…………………。


何が何が何なんだ!!!オレ今日唇奪われ過ぎだ!!!しかも二回とも男相手だ……ダメだ。何かオレ人間としてやっていく自信が無くなって来た。


「……ははははははは。」


オレはいつの間にか笑っていた。なのに心はカッサカサだ。


「ははは、はは、ははははは…。」


あれー?目から汗が出てるよしょっぱいなー。


「勇二……?何やってんだお前……?」


「純也ぁあぁあああ!!」


オレは純也に抱き付いた。……ってアレ?これ二回目じゃん。


あん時、オレはどうやって立ち直ったんだっけ?


…………そうだ!!


オレには待ってくれてる人がいるんだ!!!


「勇二……お前まさかまた………よし分かった。」


「ん?どーした純也?オレはキスなんかじゃ沈まねぇ!!強い男になったんだよおおぅううわああああああん!!!」


でも、涙が出ちゃう。だって男の子なんだもん!!!


「……泣くなよぉ。……………………オレが、消毒してやっから。」


「へ?」


ちう。


きみとちう。


きみはしん〜ゆう〜(んでもって男


「あばああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


「何だよぉ。嫌だったのかぁ?オレ、勇二の事ずっと好きで我慢してたのに、ろくに知りもしない奴に取られんのが嫌で……。それに勇二立ち直り早くてもしかして男でも大丈夫なのかなって………。」


すいません。ぜんっぜん大丈夫じゃないです。


「……こ、こんなオレだけど明日からもよろしくな!!」


ちゅっ、ともう一度音を立ててオレにキスをした純也は、「やっちゃったぁあぁ!」とか言いながら走り去って行った。


 

 

 

 

やっちゃわないで欲しかった。

 

 



「お、オレ……オレの最後の望み………。」


手に持っていた水色の封筒を握り締める。


あ。


そりゃこんなラブレター丸出しの手紙握ってりゃエスパーじゃなくても状況理解出来るわな。


「まってろ………今行くぜ………!!」


しかし……なんか嫌な予感がする。フラグがビンビンになってる気がする。


でも……!


オレは諦めない………!!この学園は男子校じゃない!!!れっきとした共学なんだあぁああぁあぁあ!!!


「すまん!!待ったか!!?」


オレは勢い良く体育館裏へ飛び出した!!


「い、いや……全然。っつーか来てくれると思ってなかった………………ヤッベェ、オレ超嬉しいわ……。」


体育館裏で待っていたのはオレ好みの小さくて可愛い女子ではなく、


金髪で、


ピアスで、


背高くて、


イケメンの、


 

 

 

 

…………山下だった。





「ん、んで………何の用だ………?」


好きとは書いてなかった!!!お話ししたいって書いてあっただけだった!!!


「お、オレを………。」


「オレを………?」


物凄く嫌な予感がする。この瞬間のために今まで頑張って走って来たのかと思うと、物凄く泣きたくなってきた。


「オレを、お、オレを…。」


早く言えよイライラするな。最早何と言われようがびっくりしねぇよ………。っつーか今までのやつ全部が何かの罰ゲームであって欲しい。


 

 

 

「オレを、ご主人様のペットにしてやって下さい!!!」

 

 

 

 

 

…………オレは今、一つの嘘を付いてしまっていた。………最早何と言われようがびっくりしねぇと………


嘘でした。


「はぁあぁあああ!!?」


超びっくりです。


「意味不明なのは重々承知の上です!!図々しいとお思いになられますでしょうが、この思い、入学式で貴方様をお見掛けした時からずっと、ずっと心の奥にしまいこんで参りました……!!しかし、昨日と今日……ご主人様とお話ししたり触れていただく機会があり………もう隠し通せはしないと思いました……!!ですから、ですから…………!!!」


……一生しまいこんだままでいて欲しかった。


「ご、ご主人様………?」


「………ひ、一つ聞いていいか………?」


オレが聞くと、山下はパッ、と顔をほころばせた。……喜ぶ所じゃねぇぞ……?


「なしてご主人様………?」


「……あの、そのぉ……気持ち悪いかも知れませんが……オレ………苛められると興奮するっていうか……つまり………世間一帯で言う、Mってヤツなんです。」


ご主人様のためならどんなことでも致します。ですから、可愛がってやって下さい。そう言われたオレは、最早魂の抜け殻状態だった。


「い、」


「い?」


「いぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」


「ご、ご主人様!!?」


走りだっそう、NO MORE CRY!!!


視界がぼやけて何にも見えないぜ!!!!




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