Part.8
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「実は、この学校に変質者が現れたんです」
「変質者?」
「はい。最初に気づいたのは、私の部活の後輩です。更衣室にカメラが置いてあることに気づいて、その子、先生に相談したんですけど.....。.....結局、その件はうやむやになって。先生も犯人を探しているのか探していないのかよくわからないし。だから、私が変質者を突き止めようと.....。それで、皆に内緒で色々と調べている内に.....その.....変質者が学校の先生ってわかりました.....」
「なるほどな」
「放課後。たまたま全部活が休みで.....。私、更衣室に忘れた物があったのを思い出して、更衣室に向かったんです。そしたら人影が外から見えて.....。中の様子を見ると、先生が新しいカメラを設置していました.....。それで、証拠になると思い写真を撮ったんです。でも、鞄が壁に当たり物音をたててしまって.....。
私は.....先生に見つかりました.....。助けを呼んでも遅い時間だったし.....学校には部活生もいないし.....。
無我夢中で階段を登っていると先生に腕を掴まれ、私は暴れて.....。
そしたら私、体を押されて.....。
そこからの記憶は.....ありません」
祐希の瞳は段々虚ろになる。
神崎は眉を寄せ苦い顔をしていた。
「階段から落ちて頭を強く打ち死亡した、か.....。確かに、体と頭部には打撲の跡があった。となれば.....」
(あれは、死後に付けられた傷か)
神崎はチッと小さく舌打ちし祐希にもアリサにも消えないほど小さな声で
「胸糞悪いな.....」
と、呟いた。
しかし、アリサには神崎の思っていることが多少わかっていた。
なにせ、神崎との付き合いもそこそこ長いからだ。
横目で神崎を見るアリサは、気づかれない程度にギュッと手を軽く握る。
「それで、その先生の名は?」
「桂木先生です。数学教師で生徒指導の先生でもあります」
「わかった。礼を言う。後はこちらで調べよう。アリサ、後は頼むぞ」
「わかりました」
そう言うと、神崎は握っていたアリサの手を離し、そのまま学校を出たのだった。
祐希とアリサは、神崎の背を見送る。
神崎が完全に消えると、祐希はアリサの方を向きおずおずとした様子で口を開いた。
「あの.....は、瑶は.....」
「瑶さんは最初、立花さんが亡くなったということを認めたくなかったそうです」
「そう、ですか.....」
「ですが、それはいつか認めなければいけません。それと、瑶さんは最後に伝えたい事があると仰っていましたよ」
「伝えたい事?」
祐希が首を傾げる。
アリサはニコリと微笑み
「その事については、本人から直接聞いてください」
と言った。
そして、鞄の中から携帯を取り出すとポチポチと操作し再び鞄の中にしまう。
ふぅ、と息を吐くとアリサは祐希に微笑みかけた。
「さて、行きましょうか。瑶さんがいる場所へ」




