Part.2
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ゲーセンで皆が楽しそうに遊ぶ中、瑶だけは楽しめずこのままでは場の空気を悪くしてしまう…心配をかけてしまう…と思い、瑶は友人達に嘘をつきゲーセンを先に出ていた。
一人で家に向かっている途中、ふと、友達が先程言った言葉『幽霊関連の仕事を請け負う店がある』という事を思い出し、瑶はスマホでその事を調べ出す。しかし、ネットにそんな情報は全然出て来なかった。
『幽霊』『お店』『渋谷』で検索しても、ネットに出てくるものは心霊スポットや一度は行ってみたい居酒屋などばかり。
「……無いかぁ」
はぁ…と、瑶は溜息を吐き電車の壁にもたれる。
心身から来る疲労と電車の揺れで、瑶の目は次第に重くなってきていた。相当疲れているらしい。
「……祐希」
聞こえるか聞こえないかの声で一人の名前を呟くと、瑶は深い深い眠りの中へと潜って行った。
ふと目が覚め気がつくと、いつの間にか乗っている電車は最寄り駅に着いていた。
瑶は慌てて電車を飛び降りる。
「あっぶねぇ。あ、そうか」
少し眠って頭も冴えたのか、瑶はある事を思いついた。それは、誰もが最初にやるだろう行動だった。
瑶はこの思いつきに、今までの自分が馬鹿に思え思わず苦笑する。
「あー。俺、本当に馬鹿だなぁ。最初からあいつに聞けばよかったのに。……色々、焦ってたのかな」
今日はもう帰路についている。だから、行動は明日だ。これで何も収穫が無ければ諦めよう――そう思い、瑶は改札を出て家路へと向かったのだった。
――翌日
瑶は、昨日その店について話しをしていた友達に詳細を聞く為、隣のクラスへと立ち寄っていた。
「あ、いた。おい、斉木!」
「ん〜?」
椅子にもたれながら漫画を読んでいた斉木は呼ばれて振り返る。
「あ?瑶じゃん。どうしたんだ?」
瑶は教室の中に入り、斉木の前の席に座る――が、どうやって話題をふったらいいかわからず、言葉は口ごもるばかりだった。
「いや……その」
「なんだよ?」
「えっと……」
あの事を詳しく聞きたい奴なんて早々いない。いたとしたら、珍しいものが好きな変わり者だ。
しかし、瑶には願いがあった。それは、どうしても叶えたい願いだった。だから、この場で引かれてもいいと思い、瑶は斉木に聞くことに決心した。
「あ、あのさ!幽霊関連の仕事を請け負うっていうの?ほら、昨日、話してたじゃん?それについて詳しく教えてほしいんだ!」
「は?お前、まさか信じるの?」
「幽霊自体はあまり信じていないけど……」
「ふーん。でも、聞きたいんだろ?」
「あ、あぁ…」
先程までの勢いはどこに行ったのやら。瑶は顔を伏せ、重い表情をしている。
流石の斉木も瑶の暗い表情に驚き内心慌てている様子だった。
「お、おい。そんな暗い顔するなよ。わかった。教えるよ、教えるから顔を上げろ!らしくないぞ、お前」
「斉木……」
「…ったく。まぁ、何か事情があるんだろ?お前がそんな浮かない顔をするってことはさ。めちゃくちゃ内容が気になるけど……詳しくは聞かねぇ。お前が話してくれるのを待つよ。で、あの話な。俺も詳しくは知らないぞ?たまたま見つけただけだし」
「あ、あぁ!わかってる!」
「あ〜……確か、幽霊で困ったや相談があることは何でも受け付ける喫茶店があるとか…だったかな?」
「喫茶店?」
「そ。場所は、昨日も言ったけど渋谷な。詳しい場所までは載ってなかったと思う」
「渋谷……」
"渋谷"というだけで詳しい場所までわからないとなると、探す範囲は尋常じゃなく広い。
ネット検索にも引っかからないとなると、人気店ではないのは確かだろう。人気店なら、今頃はネットで評価されているからだ。
結局、収穫はほぼ0。瑶はその場でガクリと項垂れてしまった。
そんな瑶を励ますように、斉木は瑶の肩を叩く。
「まぁ、まぁ。そう気を落とすなって。な?喫茶店の名前ぐらいは覚えてるからさ!確か……幽霊喫茶探偵事務所、だったと思う」
「幽霊喫茶探偵事務所?」
「そそっ!」
「え?それって喫茶店、だよな…?いや、探偵事務所なのか…?」
「さぁ?俺もそこまでは知らないけど、両方じゃね?」
「ふーん」
「変な店の名前だよなぁ」
スピーカーからチャイムの鐘の音が鳴り出し、瑶は椅子から立ち上がる。
「斉木、ありがとな」
「うい〜」
瑶が教室を出ようとすると後ろから斉木に呼び止められ、瑶は振り返る。
「おい、瑶。言いたくなったら、いつでも言えよ。一人で無理するな」
「……斉木。あぁ、ありがとう」
斉木は瑶の背中を見送ると机の中から再び漫画を取り出し読み始める。そして、瑶は今度こそ教室を出て自分の教室へ早足で向かったのだった。




