Prologue
【登場人物】
◇深海アリサ(24)・・・外見年齢16歳に見えるハーフの女の子。甘いものが大好きで感情が高ぶると関西弁が出る。幽霊と会話が出来、他にも不思議な力がある。幽霊喫茶探偵事務所の副オーナー。
◇神崎透(25)…小動物LOVEな刑事課の警察官。無意識に幽霊を引き寄せる体質で、アリサには幽霊ホイホイと言われている。
◇紅葉♂…幽霊喫茶探偵事務所の看板黒兎。
◇祖父…喫茶店のオーナーで、アリサの祖父。しかし、既に他界して幽霊になっている。色々と謎な人物。
◇斎藤真琴…幽霊喫茶探偵事務所に依頼をする高校生。
◇立花祐希・・・真琴の彼女だが…?
人口が今も尚増え続ける街――東京
その中でも若者の街と評される場所がある。それが渋谷。
色々な学生や社会人、そして、若い主婦などがスクランブル交差点を歩いている。周りには自然が無く、見えるのは建物ばかり。
まるで、建物で出来た山のよう。
数々と建っている建物の中の一つに、地下に続く小汚いビルがあった。ビルと言っても四階までしかない、本当に小さな鉄筋ビル。
きっと、多くの人がこのビルには近づかないし、もとより気づかないだろう。
それぐらい存在感が薄い建物だった。
そのビルの入り口には、小さな赤い看板がポツンと立っていた。
看板には『幽霊喫茶探偵事務所』と書いている。
たまたま看板に気づいた者は、妙な名前で訳がわからない店だと疑問に思うだろう。
喫茶店なのか?
探偵事務所なのか?
何故『幽霊』という文字が付くんだ?
今は面白い喫茶店も居酒屋も存在する。
ドラキュラ風だったり監獄をイメージされた居酒屋だったり、シンデレラをイメージされたカフェや不思議の国のアリスのカフェだったり。
恐らく、この店もその類だろう――――と、看板に気づいた者は思い、大抵は店に入ること無くスルーされる。
行き交う人々は知らない。気づかない。
この店が、幽霊を専門とした喫茶店であり探偵事務所であることを。
この店に入る客は二人。
――幽霊に悩ませる"人間"
――死んでも尚、何らかの理由でこの世をさ迷う"幽霊"
この店の店主は、そんな人達に心のゆとりを与えたくて、今日も訪れる客に煎りたての珈琲をおもてなしするのだった。