援軍2
教授が言っていた「磁力」と言う言葉が、僕には何を意味するのか分からなかった。
「磁力…。百合子さんの言う結界と関係の無いような気もするが…。磁力と結界…」
明さんは腕を組んで考えはじめた。
しばらくして、舞さんがぽつりとつぶやいた。
「よく分からんが、邪の者を封じ込めるのに岩を使ったりする話を聞く。岩にも種類があるだろうが、そういう岩というのは磁力に関係ある物があるんじゃないか? 」
明さんが、舞さんの言葉を聞いて、何かを感じたのか、俯いていた顔を上げた。
「そうか。確かに”天岩戸”などと言われる岩は全国各地にあるね。いわば結界の一つには違いがないけれど…。待てよ、龍くん!最近学校で工事かなんかなかったかね?」
そう言われてみると、工事ではないけれど校庭の隅などを掘り返している者がいた。そうだ、その一人はクラスメートの磯貝だ。彼は鈴木充が顧問を務める物理部員なんだ。僕はその事を二人に話をした。
「なるほど。ところで、龍くんの学校から富士山は見えるかい?」
明さんがそんなことを聞いた。
「はい、良く見えます」
「うん、やはりね。ちょっと待っていてくれ」
明さんはそう言って、何処かに電話を掛けた。やがて電話を切ると僕に向き直り座って話をしてくれた。
「おそらく富士山の古い溶岩を使った結界ではないかと思う」
「ふむ、樹海か…」
「舞さんといったかな。その通りだと思う。しかし、貴女はなかなか鋭いね。何かそう言う家系か何かなのかな?」
「いいえ、そのようなことはありません」
変な方向に話が行きそうで僕は慌てて口を挟んだ。
「すいません。説明してください!」
僕は説明をしてくれるように頼んだ。とても不安だった。しかし、明さんは落ち着いていた。
「龍くん、焦らない事だよ。霊体となったからといって、あの百合子さんが霊力で負かされる事はそうそうないと思うよ。だが不安なのは分かる」
明さんは時計をちらりと見やると説明をしだした。
「まず、結界の事だが、舞さんの言う通りに樹海の溶岩を使用した結界ではないかと思う。富士山は霊峰と呼ばれているね?」
二人、僕と舞さんがうなづくのを確認して先の話を続ける。
「霊峰と云うのは、神のいる山でね。いわば魂を浄化してくれる。だが一方で不成仏な魂の溜まり場もできる。光が強ければ影が濃いというようにね。その影の部分だが、富士山では樹海なんだ。実際には樹海と言われている極一部の範囲らしいがね。そこの岩、ここでは溶岩なんだが、溶岩は陰の気を強めるんだ。おそらく、それを用いた結界ではないかと思うんだ」
「明さん、なんとなく分かりました。そうだとして、どうすれば良いのでしょうか?」
「うん。では私の思うやり方は………」
明さんの意見を聞いて、僕は動き出した。僕だけではない、舞さんも明さんも助けてくれる。
きっと、きっと、助けるからな!!!




