援軍
龍が次藤の元へ向かうため、電車に揺られているのを見ている者がいた。
「龍君じゃないか。何か思い詰めた顔をしているな。」
その者はそうつぶやいたが、龍はそれに気づくだけの余裕はなかった。
龍が次藤明の神社の最寄駅に着いた時は、もう辺りは暗くなっていた。
【みんな、待っていてよ!きっと、僕が助けるから!】
駅に着き、僕は次藤さんの神社を目指した。彼らのいない不安と、早く救わなければという焦りで、自然と歩く速度は早くなった。気がつけば僕は走っていた。
「おや? 龍君!どうしたんだい? 」
明さんは、勢いよく走り込んで境内に入った僕を見て、驚いたように言ったのだった。
「何か大変な事が起きたんだね。まぁ、中に入って、話を聞こう。」
明さんは落ち着いていて、一つうなづいた。
気持ちばかり焦っていた僕は、少し安心して落ち着いたのだった。
「さあ、君も中に入りなさい。」
明さんが僕の背後に向かって言う。僕は不思議に思って振り向く、とても驚いた。
「ま、舞さんっ⁉︎ ど、どうしてここに⁉︎」
「いや、君が思いつめた顔をしていたのでな。もし私が力になれるようならと…」
舞さん•••日向 舞•••僕が時々通う柔術の道場の師範だ。女子高校生でありながら、とても強い。僕だけではなく、僕の体を借りた勇次郎ですら一度も勝っていない。
舞さんは僕の様子がおかしいと心配して、ついてきてくれたのだ。
僕らは、明さんに導かれるまま、社務所へ入る。僕は、慌ててきたものの、事態をどの様に説明すればいいのか分からなかった。それに舞さんは僕の守護霊の話など全く知らない訳で、説明したところで信じてもらえるか分からない。
僕が逡巡していると…。
「龍くん、彼女は大丈夫のようだよ。彼女の纏っている気はとても清くて、力強い」
そう、明さんが言った。僕は早く勇次郎達を救ってあげたくて焦りを感じていたんだ。
「分かりました。舞さん、詳しいことは、後で説明します。明さん、助けて下さい」
僕は守護霊達が急にいなくなってしまったいきさつを説明した。途中で僕には百合子以外にも、あと三人、合わせて四人の守護霊がいると言った時は明さんも驚いていた。
「なるほど。それでどうしてここに?」
「あの、彼らが消えるというか、連絡が取れなくなる直前に『百合子』が、結界って言ったんです。僕にはそういうことに詳しくないから明さんなら何か分かるかもしれないと思って…」
「ふむ、百合子さんがね。あの百合子さんが防げなかったほど強い結界なのか。それとも特殊な結界なのか…。迂闊には答えられないな」
明さんは申し訳なさそうに言った。すると、今まで黙って話を聞いていた舞さんが口を開いた。
「君には、その百合子さん以外にも守護霊がいるのだろう? その人達は無反応だつたのか?」
そう言われて僕は、よく思い出してみた。
あの時、百合子は確かに「結界って言ったんだ。、それから…。礼子がやばいって言って…勇次郎もどうなっている? なんて言ってたな。そうだ! 教授が何か言ってた! えっと、磁力とか言っていた気がする。うん、間違いない!
僕は教授の言葉を二人に告げた…。




