家中、大騒ぎ!
僕はみさきと別れた後で、すぐに再び電車に乗り件の神社へ向かい霊水とある物を貰って来た。家に付いたのは十一時過ぎだった。
翌朝、家は大騒ぎだった。僕が女の子を家に連れて来ることははじめてだったからだ。
「何時頃に来るの? 美容院の予約は間に合うかしら? 」
母がとんちんかんなことを言ってはしゃいでいる。
「俺も見たいなあ。何時頃までいるんだい? 今日は残業せずに帰ってくるから、それまでいてもらいなさい 」
父までがこんな調子だ。
『龍はよっぽどもてないんだな。家中で大騒ぎじゃないか 』
勇次郎も半ば呆れている。
《分かってないわね、勇次郎は。龍君はもてないのじゃないのよ。がっついてないのっ。隠れ龍君ファンは多いのよ 》
礼子は僕の知らない情報をしらっと言っている。
「さつきのお姉ちゃんは可愛いもんねっ。いつの間に仲良くなったのよ~ 」
「ば、ばかっ。由美! そんなんじゃないって言っているだろう。ちょっと一緒に勉強するだけだってば! 父さんも母さんも、そう言う事だから普通にしてくれればいいからね! というか普通にしててよ! 」
どうして僕の家族は、みんな天然なのだろうか。今更ながら、みさきを家に呼ぶことを後悔したのだった。でも、また邪な霊に憑依されたみさきを放ってはおけない。家族の喧騒から逃れるように僕は学校へ登校したのだった。
学校でも、鈴木充にまつわる動向を探るどころではなかった。
「今日ね、龍君のお家で勉強するの 」
とみさきがうわさ好きな女生徒達に言っていたからだ。女生徒達は「みさき、チャンスじゃん! 」などと煽っている。
「ほう。龍のタイプがみさきのような娘だったとはな 」
悪友の実がからかう。まったく由美といい、みさきといい、女と言うのはどうしてみんなに触れまわるのだろう。やましいことなど僕にはないけれど、からかわれたり目立つのは苦手だ。
みさきは仲の良い女生徒達とこちらをちらちら見ながら、何やら小声で話している。どうせろくな事は話していないと思う。
放課後は、それぞれ空手部と図書委員に向かい、校門で待ち合わせして、僕の家に向かった。明日は明日で今日これからのことを根掘り葉掘り聞かれるのだろうなと思うと僕の足取りは重かったんだ。
「ただいま~っ。さあ、みさきさん、入ってよ 」
そう言って僕はみさきを招き入れた。
「いらっしゃい 」
そう言った母を見て僕は「はぁ」と大きなため息が出た。母はやはり美容院に行ったらしく、見た事もない「くるんくるん」の髪型に変身していた。所々にオレンジ色のメッシュが入っている。服装も普段は着た事の無い淡いピンクのワンピースなんか着ている。
「と、とにかく、僕達は勉強するから邪魔はしないでよねっ! 」
そう母に言って、二階の僕の部屋に逃げるように入ったのだった。
これからは百合子と相談しながら上手く除霊してあげなくてはならない。家族の邪魔が入らないように願う僕だった。




