☆プロローグ☆ 勇次郎のライバルが!?
スピリッツガイド第二シリーズ。空手少年と四人の守護霊が帰って来た!
「ねえ。勇次郎! これを見てよ! 」
僕は格闘雑誌のある記事を見て勇次郎に呼びかけた。
『なんだ? どうかしたか? 』
そう言って勇次郎が僕の手元を覗き込む気配がする。
”勇次郎”は僕・嵯峨龍の守護霊のうちの一人だ。生前は僕も良く知る全日本空手道のチャンピオンだった男だ。僕には勇次郎の他にも合わせて四人の守護霊がいる。一人の人間に四人もの守護霊がついているのは珍しい事なんだそうだ。
僕が勇次郎に見せたかったのは【結城克典、引退か!? 】という見出しの記事だ。勇次郎のライバルだった結城克典が現役引退の危機にあるという。記事によるとライバルであった勇次郎が死んで、生活が荒れたらしい。非社会的団体との交際も書かれていて、用心棒の様な事をしているようだ。
『あの克典さんが? 信じられん! 』
勇次郎が驚きの声を上げた。そのまま勇次郎は黙り込んでしまった。やるせないのであろうと僕は思った。
《だめよ。勇次郎も龍君も。》
やはり僕の守護霊の一人”礼子”が出て来て言った。
僕も勇次郎のライバルだった結城克典の事が気になって、彼が師範代を務める空手道場に行ってみようかと思っていたのだった。たぶん勇次郎も同じ思いだと思う。
「どうしてさ? なんかありそうなの? 」
僕は礼子に聞いた。礼子は身近な危険を察知できるんだ。事故にあうとか、怪我をするとか事前に教えてくれる。そのお陰で僕はその災難を幾度も逃れている。その礼子が僕の行動を止める。
《とにかく今日はやめといた方がいいわ。龍君の体の自由が効かない事態になるわ。
でも貴方達は聞かないかな? 龍君は勇次郎の悪い所が似て来ているものねぇ。》
礼子はため息交じりに言った。
『悪いな。礼子。でも行かなくてはならない気がするんだ。龍の身に危険が及ぶのかもしれないが、全力で俺も守る。』
勇次郎が礼子に言う。とても珍しいことだ。普段の勇次郎と礼子は喧嘩ばかりしていて、お互いの意見を聞くことなんてないんだ。でもお互いに認めているのは僕は知っていたけれどね。
礼子はそれ以上は僕達に何も言わなかった。
結城克典の所属する空手道場は電車で三時間もの所にある。幸い夏休みで僕には時間的余裕がある。僕は空手着一つだけを鞄に入れて家を出た。
結城克典…… カウンターの得意な選手だ。相手の攻撃を捌く技量は日本一だろうと僕は思う。勇次郎との全日本での三度にわたる対戦を収めたVTRは僕の大事なコレクションの一つだ。人格的にも優れていると聞いていたのに、何故なんだ。何が彼の身に起きたのだろう。
僕はそんな事を考えながら電車に揺られていた。